ヒロシマ・ナガサキの原爆忌に、松井・田上市長が核兵器の非人道性についての政府の対応について、またそのことと関連して日本国憲法についてコメントしたにもかかわらず、安倍首相は、そのあいさつで、非人道性について賛同しなかったことと、憲法についてはいっさい触れませんでした。これが戦争被爆国の首相でしょうか?これが、最も憲法遵守・擁護の義務を負っている人間でしょうか?人間の道徳心の欠落した見本のようなものです。
しかし、このことについても、朝日はノーコメントでした。朝日の立ち居地が透けて見えてきます。どんなにヒバクシャのことを書いたとしても、こうした立ち居地では、本当の意味でヒバクシャのことを理解したとは言えないのではないでしょうか?ジャーナリズムとしての朝日新聞の社会的責務(朝日新聞綱領・朝日新聞社行動規範)は、どこへ行ってしまったのでしょうか?
それでは、ヒロシマ・ナガサキの「平和宣言」について、核兵器の非人道性について、日本政府の態度を批判したこと、その意味づけと抗議と要請したこと、さらに日本国憲法について、直接言及している部分を掲載しておきます。
同時に、安倍首相のあいさつは、この二つの平和宣言文と全く噛み合っていないあいさつになっていること、しかも日本国憲法について、いっさい言及していないのです。そこで、このことを具体的に紹介しておきます。
更に言えば、こうした事実について、朝日は、その社説で全く触れず、そればかりか、そのことについて、批判もせず、更には、自らの社説の文章の中で、憲法の「け」の字も書いて批判も、解説もしていないのです。何故でしょうか?驚くべき朝日の立ち居地です、このことが改めてハッキリしているのです。このことの意味については、別項で記事にします。
生後8か月で被爆し、差別や偏見に苦しめられた女性もいます…放射線の恐怖は、時に、人間の醜さや残忍さを引き出し、謂(いわ)れのない風評によって、結婚や就職、出産という人生の節目節目で、多くの被爆者を苦しめてきました。無差別に罪もない多くの市民の命を奪い、人々の人生をも一変させ、また、終生にわたり心身を苛(さいな)み続ける原爆は、非人道兵器の極みであり「絶対悪」です。原爆の地獄を知る被爆者は、その「絶対悪」に挑んできています。辛く厳しい境遇の中で、被爆者は、怒りや憎しみ、悲しみなど様々な感情と葛藤(かっとう)し続けてきました。後障害に苦しみ、「健康が欲しい。人並みの健康を下さい。」と何度も涙する中で、自らが悲惨な体験をしたからこそ、ほかの誰も「私のような残酷な目にあわせてはならない。」と考えるようになってきました。被爆当時14歳の男性は訴えます。「地球を愛し、人々を愛する気持ちを世界の人々が共有するならば戦争を避けることは決して夢ではない。」
世界の為政者の皆さん、いつまで、疑心暗鬼に陥っているのですか。威嚇によって国の安全を守り続けることができると思っているのですか。広島を訪れ、被爆者の思いに接し、過去にとらわれず人類の未来を見据えて、信頼と対話に基づく安全保障体制への転換を決断すべきではないですか。
ヒロシマは、日本国憲法が掲げる崇高な平和主義を体現する地であると同時に、人類の進むべき道を示す地でもあります。また、北東アジアの平和と安定を考えるとき、北朝鮮の非核化と北東アジアにおける非核兵器地帯の創設に向けた関係国の更なる努力が不可欠です。今、核兵器の非人道性を踏まえ、その廃絶を訴える国が着実に増加してきています。
…そうした中、日本政府が進めているインドとの原子力協定交渉は、良好な経済関係の構築に役立つとしても、核兵器を廃絶する上では障害となりかねません。ヒロシマは、日本政府が核兵器廃絶をめざす国々との連携を強化することを求めます。そして、来年春に広島で開催される「軍縮・不拡散イニシアティブ」外相会合においては、NPT体制の堅持・強化を先導する役割を果たしていただきたい。また、国内外の被爆者の高齢化は着実に進んでいます。被爆者や黒い雨体験者の実態に応じた支援策の充実や「黒い雨降雨地域」の拡大を引き続き要請します。(引用ここまで)
日本政府に、被爆国としての原点に返ることを求めます。 今年4月、ジュネーブで開催された核不拡散条約(NPT)再検討会議準備委員会で提出された核兵器の非人道性を訴える共同声明に、80か国が賛同しました。南アフリカなどの提案国は、わが国にも賛同の署名を求めました。 しかし、日本政府は署名せず、世界の期待を裏切りました。人類はいかなる状況においても核兵器を使うべきではない、という文言が受け入れられないとすれば、核兵器の使用を状況によっては認めるという姿勢を日本政府は示したことになります。これは二度と、世界の誰にも被爆の経験をさせないという、被爆国としての原点に反します。
インドとの原子力協定交渉の再開についても同じです。 NPTに加盟せず核保有したインドへの原子力協力は、核兵器保有国をこれ以上増やさないためのルールを定めたNPTを形骸化することになります。NPTを脱退して核保有をめざす北朝鮮などの動きを正当化する口実を与え、朝鮮半島の非核化の妨げにもなります。
日本政府には、被爆国としての原点に返ることを求めます。 非核三原則の法制化への取り組み、北東アジア非核兵器地帯検討の呼びかけなど、被爆国としてのリーダーシップを具体的な行動に移すことを求めます。 核兵器保有国には、NPTの中で核軍縮への誠実な努力義務が課されています。これは世界に対する約束です。核兵器のない世界の実現を、国のリーダーだけにまかせるのではなく、市民社会を構成する私たち一人ひとりにもできることがあります。
「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないやうにする」という日本国憲法前文には、平和を希求するという日本国民の固い決意がこめられています。かつて戦争が多くの人の命を奪い、心と体を深く傷つけた事実を、戦争がもたらした数々のむごい光景を、決して忘れない、決して繰り返さない、という平和希求の原点を忘れないためには、戦争体験、被爆体験を語り継ぐことが不可欠です。
…わが国では自治体の90%近くが非核宣言をしています。非核宣言は、核兵器の犠牲者になることを拒み、平和を求める市民の決意を示すものです。宣言をした自治体でつくる日本非核宣言自治体協議会は今月、設立30周年を迎えました。皆さんが宣言を行動に移そうとするときは、協議会も、被爆地も、仲間として力をお貸しします。(引用ここまで)
安倍首相の言葉はどうだったでしょうか?
広島市原爆死没者慰霊式並びに平和祈念式あいさつ
http://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/statement/2013/0806hiroshima_aisatsu.html
私たち日本人は、唯一の、戦争被爆国民であります。そのような者として、我々には、確実に、核兵器のない世界を実現していく責務があります。その非道を、後の世に、また世界に、伝え続ける務めがあります。昨年、我が国が国連総会に提出した核軍縮決議は、米国並びに英国を含む、史上最多の99カ国を共同提案国として巻き込み、圧倒的な賛成多数で採択されました。…核兵器の惨禍が再現されることのないよう、非核三原則を堅持しつつ、核兵器廃絶に、また、恒久平和の実現に、力を惜しまぬことをお誓いし、私のご挨拶といたします。(引用ここまで)
長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典あいさつ
http://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/statement/2013/0809nagasaki_aisatsu.html
私たち日本人は、唯一の、戦争被爆国民であります。そのような者として、我々には、確実に、「核兵器のない世界」を実現していく責務があります。その非道を、後の世に、また世界に、伝え続ける務めがあります。昨年、我が国が国連総会に提出した核軍縮決議は、米国並びに英国を含む、史上最多の99カ国を共同提案国として巻き込み、圧倒的な賛成多数で採択されました。…核兵器の惨禍が再現されることのないよう、非核三原則を堅持しつつ、核兵器廃絶に、また、世界恒久平和の実現に、力を惜しまぬことをお誓いし、私のご挨拶といたします。(引用ここまで)
そこで、朝日は、憲法の「憲」の文字も書かないまま、以下ののような文を記事にしました。呆れました!
1.安倍首相にはぜひ、核廃絶への決意を行動へとつなげてもらいたい。
2.安倍首相は、被爆地での誓いを政策で具体化していくうえで、このメッセージの重みを常にかみしめていてほしい。
3.安倍首相は非核三原則の堅持も誓った
4.被爆地の視点と日米同盟の利点を切り結ぶ指導力が、安倍首相に求められている
これこそ、ウソとデタラメ・スリカエ・ペテン、さらに安倍応戦メッセージの社説と言えます。そこで、このトンデモ社説を掲載しておきます。
特に強調した部分、朝日の自己矛盾の部分について、記しておきます。これについては、大喝を入れ、検証します。
朝日 広島・長崎と首相―「被爆国」の指導力とは 2013年 8月 10 日(土)付
http://www.asahi.com/paper/editorial.html?ref=com_top_pickup
被爆から68年の日に合わせ、安倍晋三首相が広島、長崎を訪れた。 数十万人の犠牲者を悼む式典で、両市長が平和宣言を読み上げた。目の前で聞いた首相は、「確実に、『核兵器のない世界』を実現していく責務がある」とあいさつした。 これまで被爆地は、歴代首相の言葉に期待しては落胆する年月を繰り返してきた。安倍首相にはぜひ、核廃絶への決意を行動へとつなげてもらいたい。
■原点とは何か
「日本政府に、被爆国としての原点に返ることを求めます」。田上富久・長崎市長は平和宣言で2度繰り返した。 原爆の破壊力、殺傷力はすさまじく、あまりにむごい。生き延びた人々も多くが放射線の後遺症に苦しんできた。 今年7月に亡くなった長崎の被爆者、山口仙二さんが82年、国連で「ノーモア・ウオー、ノーモア・ヒバクシャ」と訴えた。この訴えこそが、被爆国がよって立つべき原点である。 だが、破壊力の大きさゆえに、核兵器による威嚇で戦争を防ぐという核抑止論が幅をきかせてきた。冷戦期、米ソは核軍拡競争に走り、近年は既存の核保有国をまねるように、新たな核武装国が出てきている。 「威嚇によって国の安全を守り続けることができると思っているのですか」「人類の未来を見据えて、信頼と対話に基づく安全保障体制への転換を決断すべきではないですか」 松井一実・広島市長は平和宣言でこう問いかけた。日本を含め、今も抑止論に頼る国々へのメッセージである。 安倍首相は、被爆地での誓いを政策で具体化していくうえで、このメッセージの重みを常にかみしめていてほしい。
■脅しによる悪循環
米国の「核の傘」に頼ってきたのは自民党政権だけでなく、民主党政権でも同じだった。 核実験した北朝鮮、核の近代化を進める中国が位置する北東アジアで、どのように平和と安定を維持していくか。 リアルな外交・安全保障政策が必要であるが、同時に、脅しが脅しを呼ぶ悪循環からどう脱却していくかという、大きな文脈を見失ってはならない。 安倍首相の考えや方針の中には、悪循環の脱却にどうつなげていくつもりなのか、整合性が見えにくいものがある。 たとえば、ミサイル防衛システムの今後だ。安倍首相は、米国に飛ぶミサイルを、日本が憲法の制約で迎撃しなかったら、同盟が危うくなると指摘する。 だが、ミサイル防衛を前面に出せば、中国や北朝鮮が核弾頭を増やすなどの対抗手段に出て軍拡競争に火がつく恐れがある。対応を誤るとかえって米国のリスクになる可能性もある。 安倍政権は年末の新防衛大綱策定に向け、敵基地を攻撃する能力を自衛隊に持たせることも検討している。すでに米軍は能力を持っており、日本が加われば相手の警戒心は高まろう。攻撃する前にミサイルが発射されるリスクも高まりかねない。核能力の増強によって対抗されるかも知れない。 目の前の安全保障問題を平和的に解決していくには、自衛力を持ちつつも、軍縮を含めた果敢な外交を展開していくことが不可欠である。そのことを抜きに、核に頼らない安全保障体制への転換は進まない。 パウエル元米国務長官ら米欧の元政府高官が近年、核抑止論の限界を説いている。核問題のプロたちが盛んに鳴らす、核頼みの危うさへの警鐘を忘れてはならない。
■広島・長崎と対話を
夏に広島、長崎を訪れる首相は毎年、被爆者と対話してきた。貴重な機会となってきたが、安倍首相はもっと対話、意見交換の場を広げてはどうか。 広島、長崎の平和宣言には、その年々の被爆地の思いが凝縮されている。今年は両被爆地がともに北東アジアの非核地帯構想を掲げるなど、注目すべき提言も盛り込まれている。首相は両市長をはじめ、被爆地を代表する有識者らと公開で討論をしてはどうだろう。 安倍首相は非核三原則の堅持も誓った。広島で最初準備されたあいさつ文にはなかった言葉で、被爆地には朗報だった。 周辺の安全保障環境の変化を理由に、日本も核武装の可能性を探るべきだとの意見が一部にあるなか、安倍首相が広島、長崎で三原則の重みについて語り合うのも、世界に対する重要なメッセージとなる。 離任を控えた米国のルース駐日大使は、広島、長崎の式典に参加し、オバマ大統領が来日の際には、被爆地訪問に踏み切るだろうとの見方を示した。 大統領は6月の演説で、「核兵器が存在する限り、真に安全ではない」と強調している。 歴史的訪問の実現に向けて、被爆地の視点と日米同盟の利点を切り結ぶ指導力が、安倍首相に求められている。 (引用ここまで)
安倍自公政権と朝日も問題点などについては、以下の記事でまとめておきました。ご覧ください。
ヒロシマの声はアベノミクス戦略推進・憲法改悪の安倍首相に届いたか?結果は事実で判る! 2013-08-06 19:19:30
原爆忌全国紙は何を主張したか!非人道兵器である核兵器廃絶と政治の矛盾をどのように克服するか! 2013-08-07 08:39:32
朝日は松井市長の平和宣言と安倍首相のあいさつをどう伝えたか!試金石は憲法と廃絶と抑止力と戦争認識! 2013-08-07 10:53;31
沖縄・広島・長崎・福島の屈辱、大東亜戦争正当化論を押し付ける安倍不道徳自公政権は退場すべし! 2013-04-25 17:58:02
核兵器使用は国際法に違反している!戦争犯罪を繰り返さないためには加害の事実と向き合う道徳論を! 2013-04-26 20:21:13