長らくの懸案が思ひがけず、しかしやうやく一つの決着を見て、そのことを地元の古刹へ傅へに行く。佛の庭は煩悩を置いて来る場所と聞く。まだまだ予斷は許されぬが、結局は我が心をどれだけ鏡の如く磨けるか、である。一點の曇りもなければ、なァに恐れることはありゃしねェ。私にはここに、拠り所があることを知ってゐるのだ。まだまだ若かった親類の冩真を飾る冩真立ての、やうやく氣に入ったものが手に入る。冩真を入れたら、冩 . . . 本文を読む
昨晩は外の底冷えが、閉め切ってゐるはずの部屋にもそのまま持ち込まれ、暖房の風がよく當る場所へと我が身を捩らせる。今朝には道の一部が凍結してゐて、前を行く出勤を急いでゐる人がよろけてゐるのを見る。 他人(ひと)の姿は我が身の教訓、私の生活に急ぎはなし、凍結箇所は上から踏むやうにして──大昔に新潟在の遠縁からさう教はった記憶あり──、ゆっくり進む。私が“急ぐ”としたら、電車での移動くらゐだらうか。どう . . . 本文を読む