
たまに通ることがある、東京都目黒區五本木の「謠坂(うたひざか)」。
現在(いま)はありふれた住宅地のなだらかな坂道だが、もともとは鬱蒼とした古道の坂だったらしい。
「うたひざか」と呼ばれる坂道は日本各地にあるが、その由来はほとんどが不明で、この坂の場合も同様云々。
間違ひなく、謠曲とは関係がないやうだ。
おそらくは、地元の人々が自然發生的に呼んでゐた或る名稱があり、後にその独自な音に近い漢字を當てはめて表記したため、字面と由来が結びつかない結果になったのではないか。
内陸都市部の地名に“澤”がつく場合、大昔にそこは水辺であったことを示す如く、


古くからの名稱は、先人たちからの傅言でもある。
さて由来のわからない「謠坂」、

もとはどのやうな思ひがうたはれてゐたのか……?