神奈川県立歴史博物館の特別展「かながわの正月─よい年になりますように─」を観る。
元日から七日くらゐまでの“大正月”、十五日から二十日くらゐまでの“小正月”、さうした日本の正月行事を、神奈川縣内各地に傅承されてきた民俗的風習で通覧する。
木や竹、藁など、古くから身の回りにあるものを使って“トシガミ(歳神)”さまをお迎へする──
素朴にして真摯な、新しい年への願ひ──
ただカレンダーを一枚めくるだけといった現代人の感覺は、大いに反省されねばならない。
しかし、小正月の厄拂ひ行事として秦野市などに傳承されてきた「アクマッパライ」が、担ひ手である子どもたちの少子化により現在は中断してゐるなど、現今の正月事情は大きな曲り角にあることも、また事實。
それでも、トシガミ様をお迎へすると云ふ古くからの感覺だけは、せめて自分の心の中だけにでも、守り續けていきたいもの。
この特別展でもっとも興味深かったのが、あへて“厄神”をまつる地域もあるといふこと。
一夜の宿を借してお供え物し、“恩”を賣ることで家から出て行って貰ふ──といふ考へ方ださうだ。
いまの人災疫病の撃退法として、あんがい有効なのではないだらうか……?
帰り道、おりしも職人さんがトラックの荷台で門松づくりをしてゐる様子を見掛ける。
いよいよ新しい年が来るのだと、やはりそんな實感が湧ひてくる。
……今度の来る年ほど、不安と期待を等しく抱く年はないかもしれない。