
向かいの席に座ったその人は、わたしを見て、驚いたやうな瞳(め)をした。
わたしはてっきり、あの人がわたしの目に、再び見えてしまったのかと思った。
見たくないと願うわたしの心底を、嘲るかのやうに。
わたしはすぐに、その人はわたしを誰かと勘違いしていると思った。
そう、思うことにした。
ほら、瞳(め)が違うだらう。
宿に着いたわたしのもとに、二通の便りが届いていた。
一通は明日のわたし宛て。
もう一通は、半年も昔のわたし宛て。
こちらを差し出したのは、あの人だった。
わたしの心は波立つ。
迷いと。
怒りと。
あの人はもういない。
そうしなければならぬ。
わたしは引き裂いたそれを、
宙に散らす。
もう一通には
明日の宿への道しるべが記されている。
これを大事に懐に仕舞い、
また夢枕で、
懐かしくもない人々に、
逢ってやらう。
わたしはてっきり、あの人がわたしの目に、再び見えてしまったのかと思った。
見たくないと願うわたしの心底を、嘲るかのやうに。
わたしはすぐに、その人はわたしを誰かと勘違いしていると思った。
そう、思うことにした。
ほら、瞳(め)が違うだらう。
宿に着いたわたしのもとに、二通の便りが届いていた。
一通は明日のわたし宛て。
もう一通は、半年も昔のわたし宛て。
こちらを差し出したのは、あの人だった。
わたしの心は波立つ。
迷いと。
怒りと。
あの人はもういない。
そうしなければならぬ。
わたしは引き裂いたそれを、
宙に散らす。
もう一通には
明日の宿への道しるべが記されている。
これを大事に懐に仕舞い、
また夢枕で、
懐かしくもない人々に、
逢ってやらう。