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深川江戸資料館のホールで、桂春蝶の落語を二席聴く。
初めにいい加減なことばかりを宣ふご先祖サマが続出する、すばり「ご先祖様」で客席を沸かせ、トリに客電を落として、上方落語の大ネタ「たちきれ」を、臭いほどじっくりと聴かせる。
芸妓遊びが過ぎる若旦那を百日間蔵に閉じ込めた番頭が、若旦那宛ての芸妓からの手紙が八十日目で途切れたことで、「花街の恋は八十日で終わりか……」と苦笑ひするところに、なにか人間のイヤらしさを垣間見る面白さがある。
しかし芸妓のはうは若旦那に本気で、急にプツリと逢ひに来なくなって恋煩った挙げ句に絶命するといふ展開が、わたしにはいかにも虚構めいて聞こえてしまふ。
持ち時間が限られてゐる定席の寄席では、その噺家の実際の味(うで)を、充分に味はへないことがある。
その噺家の芸を本当に知りたくば、かうした会に出かけるのが、やはりよい。
つまらない芸人のために、時間を無駄にせずに済むによって。
初めにいい加減なことばかりを宣ふご先祖サマが続出する、すばり「ご先祖様」で客席を沸かせ、トリに客電を落として、上方落語の大ネタ「たちきれ」を、臭いほどじっくりと聴かせる。
芸妓遊びが過ぎる若旦那を百日間蔵に閉じ込めた番頭が、若旦那宛ての芸妓からの手紙が八十日目で途切れたことで、「花街の恋は八十日で終わりか……」と苦笑ひするところに、なにか人間のイヤらしさを垣間見る面白さがある。
しかし芸妓のはうは若旦那に本気で、急にプツリと逢ひに来なくなって恋煩った挙げ句に絶命するといふ展開が、わたしにはいかにも虚構めいて聞こえてしまふ。
持ち時間が限られてゐる定席の寄席では、その噺家の実際の味(うで)を、充分に味はへないことがある。
その噺家の芸を本当に知りたくば、かうした会に出かけるのが、やはりよい。
つまらない芸人のために、時間を無駄にせずに済むによって。