迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

黙して聞かん神の聲。

2017-09-23 23:26:44 | 浮世見聞記
東京都北区西ヶ原の七社神社の祭礼にて、松本源之助社中の神楽を見る。

この社中のお神楽は“可笑しみ”を旨とするさうで、「釣女」はまさに十八番(おはこ)といふところだらう。



醜女(しこめ)の、顔に似合わず至って淑やかな仕草が却って笑ひを誘ふが、つまるところ、



「性格ブスな美女をとるか、性格美人なブスをとるか」

といふ命題を突きつけられてゐるやうにも見へる──わたしならば、どちらもとらないが……。

しかし最後には、醜女が福々しく綺麗な女性に変身すると云ふ、思ひがけない独特の展開となって、めでたくおさまる。


もう一座は、天菩比神が大国主命との国土返還交渉に失敗する、「菩比の神使」。



今年だけでも、土師流里神楽で何度かと観てゐる演目だが、流派によって趣きがまったく異なるぶん、それがすなわち観に行く楽しみとなる。



松本源之助社中のそれは、品格ある身振りのなかに人間味あふれる可笑しみが織り込まれ、上質な笑ひを誘われる。




そして境内いっぱいの露店に大勢の人が群がる賑々しいなかで展開する黙劇に、

「なるほど、こんな状況で台詞を喋っても、聞こへんわな……」

と、神楽がそのやうに発展した理由(わけ)を、大いに納得した。
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