迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

えせさいぎゃう。

2012-04-09 18:33:22 | 浮世見聞記
梅香崎橋のたもとにて、

春のかほりに、

暫し足を留むる。


「見渡せば 柳桜をこきまぜて 都は春の 錦なりけり」


と西行が歌を口ずさみ、

春は桜ばかりにあらず、

緑の美しさにも目を向けるべしと、

教えらるる。



その時、

梅香崎橋の袂にて、

ひとり桜を愛でし法師、

しばらくと我を呼び止むる。

何事と振り向けば、

いま口ずさみし歌、西行に非ず。素性法師の詠みし歌なり

と笑わるる。


はづかしきを忍びて、

そなたはいかなる者やらんと問ひければ、

我こそが歌を詠みし者なり、

と言ひすてて

青める柳のもとに立ち

かき消すやうに失せにけり。

かき消すやうに失せにけり。
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