「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

      寒稽古 寒中水泳 ,寒参り

2008-01-08 07:19:12 | Weblog
小寒(1月6日)から大寒(1月21日)までは1年中で最も寒い「寒」である。
今年の首都圏は元旦から晴天が続き”冬”らしい寒い日が多かったが、
「寒」に入ったとたん皮肉なことに"春”を思わせる暖かさだ。これも地
球温暖化現象の現われなのだろうかー。

寒の入りで想い出すのは、子供のときの寒稽古だ。「乱取りの気合こ
めたる寒の入り」-素之。寒い寒い朝、手をかじかめ、学校の柔道場
へ通った。戦前は東京の区部でも霜柱があり、その上をサクサクと踏
むのが楽しかった。戦時中だったので家々の門前には防火用水があ
って、厚い氷が張っていた。

荒川放水路や月島などにまだあった水泳道場では、寒中水泳が催さ
れた。当時60歳代の亡父が黒い六尺褌をしめて、これに参加したのを
覚えている。先日、ロシアで氷点下の海で”寒中水泳”が行われている
のをテレビの画面でみた。洋の東西を問わず、同じような行事があるの
は面白い。

神仏に願をかけて寒中に詣でる「寒参り」の習慣もあった。白装束に身
をかため寒参りが、太鼓をたたいてやってくると、長女がおびえてな泣
き出したのを覚えている。東京の区部でも昭和30年代には、まだ寒参
りの習慣が残っていたのだ。

寒中でもチャルメラを吹いて屋台の支那ソバ屋がやってきた。かんすい
のきいた黄色の麺で、具はシナチクになると焼き豚だけ。素朴なものだ
ったが、寒空の下で食べる味は格別だった。今や、あの郷愁をさそる悲
しげなチャルメラの音も支那ソバの味も過去のもの。やがて「寒」自体が
地球上から消える日が来るかもしれない。