続 コーヒーカップの耳
22「ケータイ」
これ 家内が死ぬまで持ってたケータイやねん。自分のは処分して 今これ使こてるねん。ケータイに入ってる写真 家内の自撮りらしいんやけど ほれ 笑てるやろ。そやけど これ しんどいのん我慢して撮ったらしい。
これ メールがいっぱい入ってるねん。家内が自分に宛てたメールがいっぱい。それぼく 死んでから知ってん。死ぬ一年ぐらい前から こんなことしとったんや。それがみんな イタイイタイとか タスケテタスケテとか 辛い言葉ばっかり。そんなんして一人で我慢してたらしい。ぼくには言わんかったんや。ゆうても仕方ないと思てたんやろ。
ホンマは 前には ゆうててん。そやけど ぼくも一生懸命看病して 出来ることは 精一杯してるのに あんまり無理ゆうもんやから いっぺんだけ つい怒鳴ってしもた。そしたら それから一切言わんようになってしもた。
辛そうなんはわかるから なんか言葉をかけてやりたいんやけど ぼく ええ言葉が見つからんのや。なにゆうても ウソになるような気ィがして。結局 なんにも言葉がかけられんかった。死ぬまでちゃんと話されんかったんや。
あんなに呆気なく死ぬとは 自分でも思てなかったんやろ。前の日には 自分でトイレも行ってたし。死ぬ日の朝 えらい痛そうやったから 医師にちょっと強い薬を使こてもろた。そしたらすぐに昏睡状態になってしもて その日のうちに息引き取ってしまいよった。
最後のメールは 尻切れトンボみたいやった。ぼくへのメッセージもなかった。読みたくない言葉ばっかりが入ってるんやけど 家内が最後まで持ってたもんやから…。
22「ケータイ」
これ 家内が死ぬまで持ってたケータイやねん。自分のは処分して 今これ使こてるねん。ケータイに入ってる写真 家内の自撮りらしいんやけど ほれ 笑てるやろ。そやけど これ しんどいのん我慢して撮ったらしい。
これ メールがいっぱい入ってるねん。家内が自分に宛てたメールがいっぱい。それぼく 死んでから知ってん。死ぬ一年ぐらい前から こんなことしとったんや。それがみんな イタイイタイとか タスケテタスケテとか 辛い言葉ばっかり。そんなんして一人で我慢してたらしい。ぼくには言わんかったんや。ゆうても仕方ないと思てたんやろ。
ホンマは 前には ゆうててん。そやけど ぼくも一生懸命看病して 出来ることは 精一杯してるのに あんまり無理ゆうもんやから いっぺんだけ つい怒鳴ってしもた。そしたら それから一切言わんようになってしもた。
辛そうなんはわかるから なんか言葉をかけてやりたいんやけど ぼく ええ言葉が見つからんのや。なにゆうても ウソになるような気ィがして。結局 なんにも言葉がかけられんかった。死ぬまでちゃんと話されんかったんや。
あんなに呆気なく死ぬとは 自分でも思てなかったんやろ。前の日には 自分でトイレも行ってたし。死ぬ日の朝 えらい痛そうやったから 医師にちょっと強い薬を使こてもろた。そしたらすぐに昏睡状態になってしもて その日のうちに息引き取ってしまいよった。
最後のメールは 尻切れトンボみたいやった。ぼくへのメッセージもなかった。読みたくない言葉ばっかりが入ってるんやけど 家内が最後まで持ってたもんやから…。