短歌誌『六甲』10月号です。
素人の目ですが、目の端に留まった歌を上げます。
石原智秋さん 窓つたう雨の雫がゆっくりと部屋のぞきつつ落ちてゆきたり
吉本聆子さん 二十年前のお盆はご近所も健在なれば鐘の音も聞きし
中嶋輝美さん 桜田門外の井伊大老の話など祖母は歴史の教師の如く (今丁度「花の生涯」を読んでいるので)
西川愛子さん テレビにて高校野球見ておりぬ鳴尾の歌会思い出しつつ
中西浩さん 釣り針の注文待てど入らずに我が年齢も九十となる
田岡弘子さん お札にも人事異動ありて退任の福沢諭吉と野口英世にご挨拶
牧野秀子さん 旧き友なつかしきひと先立ちて置き去りにされ佇むわれは
高野由紀子さん みんみんの声を聞きつつ起きた夏聞こえぬ朝に秋を知る
B型と言えば必ず納得と笑う人あり何を知ってる
小西久代さん 素敵です日傘をさして颯爽と背筋を伸ばして歩く男性
鈴木裕子さん 半世紀前は九人暮してた今は空き家の舅の実家
佐竹京子さん 女学校の追悼記には被爆した生徒らの手記あり母もそのひとり
石飛俊郎さん 今朝もまた線香点し仏前に静座してをりいつもの通り
南操さん 弟の暮らせし家に他人の住む故郷の無く淋しさつのる
黒川明子さん 日めくりをゆっくりちぎり暮れ行くを点さずおればこころととのう
阿部明美さん 吾が里の墓詣でんと訪れし草一つなく引かれ感謝す
繁田和子さん 断捨離を始めんとすも出しきたる箱を開ければ思い出の虜
田中加奈子さん 幼き頃娘の着てた浴衣出し二歳の一華にサイズ直して
佃象子さん 疑いつつ固定電話の受話器取るなつかしき友と話題は尽きず
以上、わたしの勝手読みです。
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