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鬼のような仕事の波にわずかな隙を見つけた
とにかく何もかもから逃げたくて
どこかのイベントにでも出ようかと探したが
手頃なイベントが見つからず
白石真悟ちゃんに助けを求めた
突然の連絡だったが
受け入れてくれるというので
飛行機をとって萩石見空港へ向かった
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空港にはサイクルステーションという着替え部屋があり
空気入れなども借りられる
しかし
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輪行グッズの預け先は
この小さなコインロッカーのみ
今回はぎゅうぎゅうに詰め込んだが
輪行箱だったらアウトだった
輪行グッズを預かってくれるシステムがあったら
最強なのになあ
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さて
今回の楽しみは グラベルバイクで走ること
グラベルの何が面白いのか?
グラベルバイクはなぜこのような仕立てなのか?
体感しないと分からない
午前10時 空港を出発
真悟ちゃんも萩からこちらに向かってくれてるらしい
果たして無事に合流できるのか…
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のんびり走る
パワーメーターは付いていない
土手を走って行き止まり
脇道をそれて行き止まり
自販機すらも無い農道
初めて走る道というのは 心細くて良い
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37キロ地点
誰もいない道に 突然真悟ちゃんが現れた
とてつもない嬉しさだ
選ぶ道が少ないので
無事に合流できた
ここからは真悟ちゃんの着き位置で走らせてもらう(笑)
42キロ地点
「佐々木小次郎の墓」という看板が目にはいる
なぜここに佐々木小次郎の墓が?
矢印の方向を見ると
自転車では絶対走らないような山道だった
しかし 躊躇なくロードバイクで走っていく真悟(笑)
私はグラベルバイクでも2度コケそうになった
オフロード出身者のバイクコントロールは半端じゃない
見とれるほど美しく優雅に乗りこなす
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山道を300mほど上がると
その墓はあった
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巌流島で宮本武蔵に敗れた佐々木小次郎
この地に葬られたのは その遺髪だ
ここは隠れキリシタンが多く暮らした場所で
聖母を模した地蔵など 当時を忍ばせるものが多く遺っている
小次郎の妻もキリシタンで この地に流れ着き
小次郎の墓を建てたという
隠れキリシタンの歴史は 想像を絶する苦しみの歴史
このエリアをもう少し丹念に巡ってみたいと思い
墓を後にした
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すぐそばの湧き水は 柔らかい味で
とても美味しかった
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バイクを交換
真悟ちゃんと私のサイズは 完璧にピッタリで
全く違和感なく乗れるのだ
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コンポは話題の新型デュラエース
真悟ちゃんも開発に携わっていたらしい
感想は…
素晴らしすぎた
変速がびっくりするぐらい速い上に
音がとても静かだ
インプレによくある「踏みながら変速できる」というのは
さすがに違和感ナシというわけにはいかなかったが
とにかく意のままに変速した
ここには書かないが 様々な新技術を開発し
考え抜かれ テストし尽くされた結晶がここにある
これを作る日本人 シマノという会社は凄いと思った
そしてシマノのコンポで 初めて「楽しい」と思えた
あえて言うと シフトボタンのクリック感が
もっと「カチッ!」と行って欲しかったが
なぜこの「ポチ」というクリック感にしたかは聞き忘れた(笑)
ちなみに 私のグラベルバイクのコンポは
SRAM FORCE eTap
値段はそれほど変わらないのに
新型デュラの5倍ぐらい変速時間がかかる(笑)
真悟ちゃんは「これはオモチャですね」と笑っていた
悔しいが その通りだ…
SRAM社は よくこれで
上から2番目のグレードとして売り出したなあ…
ちなみにホイールも新型デュラの50mmハイト
これも良かった
ROVALがダメになったら BORA ULTRAでも買おうかと思っていたが
これなら半値で買えるデュラエースでいいな
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萩市 仏光寺
山門があまりに素敵で
写真を撮り忘れた
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本堂も風情があって
中には素晴らしい仁王像がある
作りからすると 江戸時代の作か
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左は毛利家の「一品」の家紋
右は毛利家のもう一つの家紋「沢瀉(おもだか)」に似てはいるが
ちょっと違う
毛利家の一門待遇の家のものだろうか
などなど歴史マニアの私は
興奮しまくりピンコ立ち
真悟ちゃんは 歴史には全然興味なく
興奮する私をニコニコ見ていた
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2時間に1本の山陰線の踏切に引っかかるという強運
75km 4時間の旅
気持ち良いペースで
のんびり秋の日差しを楽しんだ
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そして夢の時間がやってきた
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前から入ってみたかった
白石家にある ドラム缶風呂に入れてもらった
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ドラム缶から見えるのは
空一面に広がる木の葉たち
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いつのまにか来ていたギャラリーの面前で
素っ裸でドラム缶に出入りした(笑)
ちなみにドラム缶というのは意外に高価で
このステンレス製は5万円ぐらいするらしい
突然の来客に
自走で数十キロ迎えに来てくれて
相手が望む道を案内し
火を焚いてドラム缶の湯を沸かし
食事まで出してくれる
白石真悟という男は
なんと見上げた人間だろうか
私にだけ特別にしているのではなく
誰にでもこうして 世話を焼いてくれるのだ
勝負に貪欲で 一見自分のことばかり考えてそうなのに
これだけ他人のために世話を焼ける
これまで出会った人の中で 永六輔さんの印象に近いかな などと考えながら
長くドラム缶に浸かっていた
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夜は 2年ぶりのビールを飲んだ
速攻で酔っ払って 爆睡
つづく★