◇ザ・ワーズ 盗まれた人生(2012年 アメリカ 96分)
原題 The Words
監督・脚本 ブライアン・クラグマン、リー・スターンサール
◇平行して語られる三つの物語
全体の構成は嫌いじゃないし、どちらかといえば好みなんだけど、ちょっと物足らなさを感じちゃうのは、微妙に外された感があるかもしれない。まあ、なんというか、書こうとしても書けないのが原稿なんだっていうのはよくわかるんだけど、実際、原稿の盗作ってのはなかなかないような気もする。だって、人には文体ってのがあって、それがあってこその作家で、もしも盗作したとしても文章は全部書き直さないではいられないっておもうんだけどな。
ま、それはそれとして、この映画の中に三つある物語は、すべて、頭の中の多重構造になってるんだけど、それを辿っていくとなんともあっけなくデニス・クエイドで止まっちゃうのがなんだかね。デニス・クエイドの物語が実はブラッドレイ・クーパーの後の世界だとしたらそれもまた興醒めだし、やっぱり全体の鍵を握っているのはジェレミー・アイアンズであってほしいよね。だって、自分の過去の悲恋を原稿にしたのが、ブラッドレイ・クーパーに盗作されちゃうという悲劇を背負っているのはジェレミー・アイアンズだけなわけで、彼の過去の物語がベン・バーンズの物語になってるんだけど、つまり、老いてしまったジェレミー・アイアンズはこの映画の中では単なる繋ぎに終始してしまっているからだ。狂言回しといってもいいんだけど、そのあたりがなんだか物足りないんだな、きっと。
でも、この作品、なんだか雰囲気が好いんだよね。