☆飢餓海峡(1965年 日本 183分)
監督 内田吐夢
☆洞爺丸海難事故と岩内大火
モデルになったのは小題のふたつの事件なんだけど、これはどちらも昭和29年9月26日の洞爺丸台風(台風15号)の日に起こった。その偶然をもとに水上勉が書き上げたのが原作で、これを東映大泉撮影所が内田吐夢を招いて制作したものだ。企画から初日にいたるまでに東撮の所長が3人も入れ替わったりしたりして、ほんとにもう東撮どころか東映そのものが台風に見舞われたような凄まじさになった作品なんだけど、そのあたりの経緯についてはよく知られている話だし、この日本映画史上に燦然と輝いてる映画の内容ともども、いまさらなにか書いても仕方がない。ことに部外者のぼくが知ったかぶりして書いたところでまったく真実とは程遠いものになっちゃうしね。
だからまあなんとなく最初に観たときの印象をおもいだそうかなって。たぶん、大学一年生だったとおもうから、もう気の遠くなるほど昔の話だ。銀座の並木通に並木座っていう名画座があって、当時、この作品はそこでときどき上映されていた。ただまあなにぶん3時間を3分超える長尺物だし、モノクロだし、相当に古い作品だしで、観るときはいつもかなり気合を入れてから観たものだ。ところがあるとき、この映画は実は短縮版があって、封切りのときはほとんどの劇場ではその167分の短縮版が公開されたって話を聞いた。183分の作品は実は数館の直営館でしか公開されなかったと。なんだそれっておもってたんだけど、ほんとのところをいうと、この作品は192分1秒あったんだよね。もう観ることは不可能なんだろか?