☆ファーザー(The Father)
なるほど。養老院か老人ホームかはわからないけど、アンソニー・ホプキンスがフラットって呼んでるところの暗示だったわけね。痴呆っていう言い方はなくなってきたとかいうけど、老人ぼけって言葉はどうなってるんだろう。ま、それはさておき、ここまで幻覚ってひどくなるんだろうか?
過去と現在が同一線上におもえてきちゃうってのはなんとなくわからないでもないし、子供化しちゃうこともあるかもしれない。でも、完全な幻覚の世界に入り込んじゃうこととかあるんだろうか?
日本でも『恍惚の人』とか『花いちもんめ』とか『長いお別れ』とか『ぼけますから、よろしくお願いします』とかいった映画が撮られてるけど、いやもう、昭和の時代から痴呆症は世界的な病だね。でも、なんというのか、ぼけたからどうだっていうんだ?っていう主題ではないんだよね。ぼけに対して、ぼけてゆく人間あるいはぼけてしまっているかもしれない人間の考え方や行動をもう少し主観的な捉え方があってもいいんじゃないかって気はする。
たしかに、アンソニー・ホプキンスはうまい。みごとな演技で、エンジニアだった知的な父親が痴呆になっていったときの我が儘とか不安とか暴力的な言動とかまあいろいろあるし、それらを上手に出してくるし、身のこなしが実にうまい。パリに行っちゃう娘オリヴィア・コールマンや、幻覚の娘として最初に登場して観客を混乱させる看護人のオリヴィア・ウィリアムズや、婿だとおもったら実は医師だったマーク・ゲイティスも、ほんとは娘のはずが介護人として登場してくるイモージェン・プーツも、みんな上手なんだけど、でもまあ、アンソニー・ホプキンスは際立ってるね。