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ある天文学者の恋文

2022年06月01日 00時34分50秒 | 洋画2015年

 ☆ある天文学者の恋文(Correspondence)

 

 なんてまあ、男ってのは身勝手なんだろうね。いや、自己陶酔っていうか、とにかく、ジョゼッペ・トルナトーレって監督は、どうも映画は夢想なんだっておもってる感じがある。わかるんだけどさ。でも、天文学者がいて、それもジェレミー・アイアンズなんていうふしだらさを絵に描いた中年の星なんだから、死んだってまだまだ不倫は続けるっていう鞏固な意志の持ち主で、案の定、教え子に手を出してもう身も心も蕩かしちゃってる。それがオルガ・キュリレンコなんだから、こりゃもう世界中の男を敵に回したようなもんだ。で、死んでもなお、オルガ・キュリレンコはジェレミー・アイアンズの影だけを求めて、エンニオ・モリコーネのチョー甘ったるい音楽をまとわりつかせながら、湖畔の別荘に誘われていっちゃうって物語だ。もちろん、うまい。公園で甘えてくる犬にも、窓に貼り付く枯れ葉にも、列車の窓に寄ってくる鷹にも演技させてる。めっぽう、うまいさ。それに、いや、わかる。わかるよ。自分が死んだら星になって、それも超新星になって、大爆発したその光は星が無くなっちゃっても地球に注ぎ続けるんだよ、ほら、君のことをおもってる僕みたいだろ?っていう物語で、ジョゼッペ・トルナトーレはもうこの自己陶酔に嵌まり切って、背徳大好きの女の子だったらきっといつまでも自分のことだけをおもって思い出と涙の中で生涯をおくってくれるんだろうって、そういう期待と確信にあふれてこの映画を撮ったんだろうけど、いやいやいや、現実はもっと渇いてるんだよ。

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