デューク・アドリブ帖

超絶変態ジャズマニア『デューク・M』の独断と偏見と毒舌のアドリブ帖です。縦横無尽、天衣無縫、支離滅裂な展開です。

I Want To Live!

2006-03-12 10:49:25 | Weblog
 先週NHKBSで、スーザン・ヘイワード主演の、冤罪と死刑制度の矛盾を扱った社会派映画「私は死にたくない」が放映されていた。58年の作品で実話に基づいている。日本の冤罪事件の一つ「狭山事件」を、鎌田慧さんの著作で読んだことがあるが、アメリカも日本も冤罪の構図が同じなのに戦慄した。そこにあるのは差別と偏見だった。モノクロームの画面と、鎌田さんの著書に収められている白黒の写真から無実が故の“I Want To Live”という悲痛の叫びが聞こえてくる。

 以前、この映画は何度か観たことがあるが、冒頭のジャズクラブのシーンは見逃せない。バリトン・サックスを軽々と吹くジェリー・マリガンのソロが圧巻。少し気取ったアート・ファーマーに、フランク・ロソリーノ、ピート・ジョリー、レッド・ミッチェル、優等生の印象が強いシェリー・マンはタバコを銜えながらのラフな演奏なのだが、やはりドラミングは正確だ。それにバド・シャンクの姿も見える貴重なもので、映画のワンシーンとは、どうにも勿体ない。

 同名のサウンド・トラック盤もあるが、写真はマリガンが、映画出演時のメンバーで録音したもので意外に知られていない傑作。映画でも音楽を担当しているジョニー・マンデルの作編曲で構成されており、マンデルの垢抜けた曲作りには驚かされる。そういえばマンデルはアカデミー受賞曲「いそしぎ」を作った人だった。当時のウエスト・コーストの洗練されたジャズを聴ける一枚で、CD化が待たれる。

 短いジャズクラブのシーンで、マリガンの横でテクニカルなトロンボーンを吹くフランク・ロソリーノは、ビールを飲みながら、指を鳴らし楽しそうだ。この陽気なロソリーノからは、後にピストル自殺を図る事など考えられない。“I Want To Live”と、ロソリーノは思わなかったのだろうか。
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6 コメント

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西海岸の陽気 (duke)
2006-03-18 20:09:45
naruさん、こんばんは。

I Want To Live 気に入って頂けたようで安心しました。最初の曲はバド・シャンクのソロで始りますが、西海岸を代表するような明るさが良いですね。続くマリガンの乾いた音。思わずビール飲みたくなりますよ。ジョニー・マンデルのアレンジの妙と併せてお楽しみください。私が好きなのはA面3曲目ですね。自然と体が動いてしまいます。私の書斎だけ地震です。(笑)
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I Want To Live (naru)
2006-03-18 11:38:29
レコードが到着しました。しっかりと、オルトフォンのモノラルカートリッジで、針圧5gかけて!1回聴きました。やっぱりオリジナル盤はいいですね!かわいたジェリー・マリガンのバリトンサックスの音がたまらない!アートファーマーのトランペットもふっくらと上品な音です。バドシャンクのアルトの艶もいいなあ!今日も、帰宅したら聴きます。フランクロソリーノのトロンボーンとシェリー・マンのドラム、ジョニー・マンデルのアレンジも聴き込みたいです。さすがに、オリジナル盤、コーティングジャケットも嬉しいです。Dukeさん、良いレコードを教えて下さりありがとうございました。
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貴重なオリジナル盤 (duke)
2006-03-15 08:02:05
naruさん、こんにちは。

I Want ToLive!落札できたようですね。おめでとうございます。モノラル・レッド、Deep Grooveで、ジャケット、盤質とも状態が良さそうなので妥当な価格なのかもしれません。ウエスト・コーストの洗練されたエッセンスお楽しみください。私の推薦盤ですからnaruさんに気に入って頂けると思います。ペケだったら私のセンスが悪いのか、naruさんの耳が良すぎるのか、どちらかです。(笑)

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I Want ToLive! (naru)
2006-03-13 18:40:53
Dukeさん こんばんは。早速、ヤフーオークションを見ました.ちょっと高いけど、オリジナル盤の方に、入札いたしました。後1日です。落札できると良いのですが・・・・・

楽しみです!
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マリガンの洗練された音 (duke)
2006-03-12 19:16:10
naruさん、こんばんは。いつもコメントありがとうございます。

紹介している盤はヤフーにオリジナル盤、日本盤共に出品されております。映画で演奏している“Frisco Club”も収録されておりお薦めです。A面3曲目の“Night Watch”のマンデルの躍動感のあるアレンジとマリガンのソロは聴きものです。この盤ではシェリー・マンのブラッシュは聴けませんが、シンバルワークが凄い。トニー・ウィリアムスと違ってうるさくないのがマンの魅力でしょうか。

一方、サウンド・トラック盤はCDもあるようですが、こちらはメンバーが違っていてあまり面白くはないですね。レコードで持っておりますが、一度聴いただけで例によって棚の奥です。(笑)

尚、検索は「I Want ToLive!」と、「私は死にたくない」両方で試してください。出品者によりタイトルはまちまちです。
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I Want ToLive! (naru)
2006-03-12 12:09:31
DUKEさんこんにちは。ジェリー・マリガン大好きです。あの音色はたまらないですね!理知的な音楽も、黒人のブルースフィーリングとは、別の意味で魅力を感じます。フランク・ロソリーノもジョニー・マンデルも良く知らないので、このサウンド・トラック盤、そそられますね!シェリー・マンは、ブラッシュのプレイが特に凄いと思っていますが、この盤では、どうかな?

 映画も見てみたいです。再放送が有るかどうか、早速調べてみようと思います。為になる記事をいつもありがとうございます。
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