長年、探していた曲をようやくみつけました。チャ~チャ~ララン チャララン チャララン♪という出だしのメロディしか覚えていなくて、曲名がわかりませんでした。しかし、最初に聴いたときのことは、はっきり覚えています。我が家にステレオセットがやってきた日でした。
当時、ステレオセットを買うとLPレコードがおまけについてきたものです。そのなかの一曲でした。ステレオセットがやってきた日から1週間ほど、その映画音楽を特集したストリングスのLPレコードをくりかえし聴きました。我が家にはほかにレコードがなかったのです。レコードもなく、つまり音楽愛好趣味もないのに、タンスをどかさねば入らないほどデカいステレオセットを買うなんて、いまから思えば理解に苦しむ消費行動です。しかし、当時は誰しもそんなものだったのです。
レコードを買えばいいと思うでしょうが、LPレコードはとても高価でした。子どもの小遣いでは手が届きません。ほどなくシングル盤のEPレコードを買ったのですが、その一枚は何度も聴いたので覚えています。ナンシー・シナトラの「シュガータウンは恋の町」です。低俗です。ラジオで聴き知ったのでしょうが、恥ずかしながらジャケ買いです。しかし、くりかえすけれど、当時は誰しもそんなものだったのです。
隣の町工場のラジオや商店街のスピーカーからは、橋幸夫や舟木一夫や三田明や春日八郎や三橋美智也の歌が流れていました。大田区蒲田に住む少年にとって、音楽とは歌謡曲のことでした。ひきかえ、ステレオセットのおまけについてきた映画音楽のLPは、流麗なメロディを甘美な弦楽が奏でて魅惑的でした。
いまから思えば、ポール・モーリアとかマントバーニといったBGM専用の楽団によるものでしたが、とても上品で洗練された演奏に聴こえたのです。ワインといえば、正月には子どもにも許される赤玉ポートワインのことでした。ウィスキーといえば、いちばん高くて上等なのはジョニ赤でした。くりかえすけれど、当時は誰しもそんなものでした。物事はいまよりずっと単純でした。
さて、チャ~チャ~ララン チャララン チャララン♪ ですが、ときおり、Youtubeの映画音楽動画を検索しては行き当たりばったりに聴いて、ようやく昨夜ヒットしたのです。「さらばベルリンの灯 Wednesday's Child」でした。
Matt Monro
「さらばベルリンの灯」という映画は未見ですが、若きマックス・フォン・シドーが出演していて、わるくなさそうです。原題の Wednesday's Child がわからなかったが、レイ・コニフ・シンガーズの歌詞付きをみつけました。
Ray Conniff - Wednesday's Child (with lyrics)
かわいそうな子どもの歌なのだなと見当をつけて Google検索をしてみると、曜日を覚えるための数え歌が元になっているらしい。欧米では誰しも知っているポピュラーな歌のようです。
Monday's Child
Monday's child is fair of face,
Tuesday's child is full of grace,
Wednesday's child is full of woe,
Thursday's child has far to go,
Friday's child is loving and giving,
Saturday's child works hard for a living,
But the child who is born on the Sabbath Day
Is bonny and blithe and good and gay.
「さらばベルリンの灯」でも Wednesday's child is full of woe がそのまま使われています。woe は悲哀、Sabbath Day は Sunday のことです。作曲は2011年に亡くなった映画音楽の巨匠ジョン・バリー。「007」のテーマや「野生のエルザ」などで知られますが、ジョン・バリー屈指の名曲といえば、可憐なミア・ファーローが印象的だった「フォロー・ミー」でしょう。
John Barry - Follow Me! (AKA The Public Eye)
ちなみに、ヒゲの中年男はイスラエルの名優トポルです。ミュージカル『屋根の上のバイオリン弾き』の主人公、テヴィエが当たり役として有名でした。BSでは海外紀行番組が多いのですが、せめてこの「フォロー・ミー」の1/10も映像が物語ってくれればと思います。ミア・ファーローの1/100も、立ち姿や歩く姿が自然に美しければと思います。「おいひー」とか「ステキ!」や「おじさんは、ここで何してるんですか?」といった「レポート」はいりません。今時は誰しもそんなものです。何気ない仕草やちょっとした笑顔で表現できないものでしょうか。
(敬称略)
当時、ステレオセットを買うとLPレコードがおまけについてきたものです。そのなかの一曲でした。ステレオセットがやってきた日から1週間ほど、その映画音楽を特集したストリングスのLPレコードをくりかえし聴きました。我が家にはほかにレコードがなかったのです。レコードもなく、つまり音楽愛好趣味もないのに、タンスをどかさねば入らないほどデカいステレオセットを買うなんて、いまから思えば理解に苦しむ消費行動です。しかし、当時は誰しもそんなものだったのです。
レコードを買えばいいと思うでしょうが、LPレコードはとても高価でした。子どもの小遣いでは手が届きません。ほどなくシングル盤のEPレコードを買ったのですが、その一枚は何度も聴いたので覚えています。ナンシー・シナトラの「シュガータウンは恋の町」です。低俗です。ラジオで聴き知ったのでしょうが、恥ずかしながらジャケ買いです。しかし、くりかえすけれど、当時は誰しもそんなものだったのです。
隣の町工場のラジオや商店街のスピーカーからは、橋幸夫や舟木一夫や三田明や春日八郎や三橋美智也の歌が流れていました。大田区蒲田に住む少年にとって、音楽とは歌謡曲のことでした。ひきかえ、ステレオセットのおまけについてきた映画音楽のLPは、流麗なメロディを甘美な弦楽が奏でて魅惑的でした。
いまから思えば、ポール・モーリアとかマントバーニといったBGM専用の楽団によるものでしたが、とても上品で洗練された演奏に聴こえたのです。ワインといえば、正月には子どもにも許される赤玉ポートワインのことでした。ウィスキーといえば、いちばん高くて上等なのはジョニ赤でした。くりかえすけれど、当時は誰しもそんなものでした。物事はいまよりずっと単純でした。
さて、チャ~チャ~ララン チャララン チャララン♪ ですが、ときおり、Youtubeの映画音楽動画を検索しては行き当たりばったりに聴いて、ようやく昨夜ヒットしたのです。「さらばベルリンの灯 Wednesday's Child」でした。
Matt Monro
「さらばベルリンの灯」という映画は未見ですが、若きマックス・フォン・シドーが出演していて、わるくなさそうです。原題の Wednesday's Child がわからなかったが、レイ・コニフ・シンガーズの歌詞付きをみつけました。
Ray Conniff - Wednesday's Child (with lyrics)
かわいそうな子どもの歌なのだなと見当をつけて Google検索をしてみると、曜日を覚えるための数え歌が元になっているらしい。欧米では誰しも知っているポピュラーな歌のようです。
Monday's Child
Monday's child is fair of face,
Tuesday's child is full of grace,
Wednesday's child is full of woe,
Thursday's child has far to go,
Friday's child is loving and giving,
Saturday's child works hard for a living,
But the child who is born on the Sabbath Day
Is bonny and blithe and good and gay.
「さらばベルリンの灯」でも Wednesday's child is full of woe がそのまま使われています。woe は悲哀、Sabbath Day は Sunday のことです。作曲は2011年に亡くなった映画音楽の巨匠ジョン・バリー。「007」のテーマや「野生のエルザ」などで知られますが、ジョン・バリー屈指の名曲といえば、可憐なミア・ファーローが印象的だった「フォロー・ミー」でしょう。
John Barry - Follow Me! (AKA The Public Eye)
ちなみに、ヒゲの中年男はイスラエルの名優トポルです。ミュージカル『屋根の上のバイオリン弾き』の主人公、テヴィエが当たり役として有名でした。BSでは海外紀行番組が多いのですが、せめてこの「フォロー・ミー」の1/10も映像が物語ってくれればと思います。ミア・ファーローの1/100も、立ち姿や歩く姿が自然に美しければと思います。「おいひー」とか「ステキ!」や「おじさんは、ここで何してるんですか?」といった「レポート」はいりません。今時は誰しもそんなものです。何気ない仕草やちょっとした笑顔で表現できないものでしょうか。
(敬称略)