J・F・ケネディがテキサスで射殺されたときにも乗っていた、排気量8000ccフォード社の高級車「リンカーン」を事務所代わりにするヤクザな弁護士の話です。日本では、リンカーン・コンチネンタルはヤクザ御用達として有名でした。
「リンカーン」を観ました。映画がはじまる前に、監督のスティーブン・スピルバーグが述べます。
私の念願の作品「リンカーン」が遂に完成しました。
史上 ”最も愛されたリーダー”の知られざる物語です。
リンカーンの人生には、今の日本と世界中の人々に
知って欲しいメッセージが詰まっています。
国を二分する激しい争いの中で、
情熱的な理想と冷静な知略を持つリーダーが行った
世界の未来を変える決断とは
それでは「リンカーン」をご覧ください。
奴隷解放宣言をして南北戦争を戦い、史上初めて暗殺された大統領の伝記映画、ではありませんでした。あるいは、偉大な大統領の意外な一面を暴いて、正義と不義の間を揺れ動く複雑な人間像を追求した人間ドラマ、でもありません。
この映画のリンカーンは「聖者」です。窓があり、カーテンが揺れ、背の高い男が少年に語りかけている。午後の陽光にシルエットになったリンカーンは、後光が射しているようにみえます。「情熱的な理想と冷静な知略を持つリーダー」とは、人間以上の「聖者」なのです。
「聖者」に導かれたアメリカの歴史教科書的な映画だとすれば、冒頭の南北戦争の戦闘場面の驚くべき残虐さは、教科書的な叙述をはるかに逸脱しています。あるいは、「聖俗」を対置した、キリスト教原理主義国家アメリカらしい歴史叙述なのかもしれません。
それにしても、良識あるインテリ顔をしながら、スピルバーグはじつに残虐描写が巧いというか、血と殺しが好きです。スプラッタやゾンビ映画を撮ったら、さぞや凄い映画ができるでしょう。
日本の山田洋次監督も温和な笑顔が印象的ですが、じつは嘗め回すように女を撮るのが好きです。とくに腰に猥褻視線が向かいます。だが、巧いといえるほど、官能シーンをつくりません。山田洋次がスピルバーグに遙かに及ばないところです。
歴史教科書的な映画というのは、事件や人物の描き方ではなく、そのテーマにあります。この映画の主人公は、リンカーンではありません。主人公をタイトルにするならば、「アメリカ合衆国憲法修正第13条」となります。テーマは、「憲法改正」なのです。
アメリカ合衆国憲法修正第13条
第1節 奴隷制もしくは自発的でない隷属は、アメリカ合衆国内およびその法が及ぶ如何なる場所でも、存在してはならない。
リンカーン大統領が「奴隷解放宣言」をしただけでは、黒人奴隷は解放されません。共和党の合衆国憲法改正案を議会で可決させねばならず、それには、憲法改正に反対する「保守的」な民主党議員を切り崩さなくてはなりません。
民主と共和のリベラルと保守が今日とは逆ですが、共和党の「冷静な知略を持つリーダー」であるリンカーンは、民主党議員に役職を約束して一本釣りをしたり、次の選挙で強力な対抗馬を立てるぞと脅したり、買収こそしませんが、「知略」を尽くして多数派工作します。
「知略」というより「謀略」に近いのは、敗色が濃い南軍政府が、講和の特使を向かわせているのを議会に隠していることです。62万人も戦死している悲惨な戦争を一日も早く終わらせることには、誰もが賛成です。しかし、そのためには、奴隷解放に反対する南部の講和条件に妥協せねばなりません。
日本でなら、とりあえず、憲法改正の議決を延期するでしょう。あるいは、自民党が憲法改正草案をつくりながら、時期尚早と安倍首相が集団的自衛権解釈に傾いているように、漸進的な修正案をまとめるでしょう。
南軍の講和特使が向かっていると議会に知れたら、民主党はもちろん、身内の共和党議員も少なからず、議決の延期に傾くはずです。タイミングを失えば、憲法改正は無期延期となりかねません。そうはさせじと強引に議決に持ち込み、可決してしまうのがリンカーンの企てでした。
合衆国憲法修正第13条を可決するまでのリンカーンと議会との攻防23日を描いたのが、映画「リンカーン」です。その舞台となった大統領執務室や議会の外では、毎日、国民が殺されています。国民の血と命がどんどん失われている傍らで、憲法改正という政治手続きが進められている。
そこでは、「悲惨な戦争を止めるのが先だ」という声は出てきません。政治目的と戦争という手段を転倒させることはありません。「聖俗」どころの話ではありません。
換言すれば、憲法を改正するために、国民の血と命が求められた、捧げられたともいえます。憲法を改正することは、それくらい重大な結果を生じさせることだということです。教科書なら、合衆国憲法が改正された結果、奴隷制が禁止されたとなりますが、それに先立つ南北戦争62万人の死が、すでにして結果なのです。
理想を実現するために、多くの犠牲が伴ったのだともいえません。合衆国憲法修正第13条の可決によって奴隷制は禁止されても、1964年の公民権法可決まで、黒人に対する人種差別制度や政策は続きました。
教科書的映画といえば、小学校や中学校の教科書を思い浮かべますが、「リンカーン」は大学の歴史教科書ではないかと思えます。日本はまだ憲法を変えたことがないので、大学教科書レベルの「憲法改正映画」を観せられても、じつはよくわからないところがあります。安倍自民党の「憲法改正」に反対しているのは、じつは野党ではなく、アメリカという事情もありますからね。
そのアメリカは、シリア空爆を止めたように、血で血を洗う現代の「南北戦争」から手を引こうとしています。そして、オバマケアという、「情熱的な理想」のために、「国を二分」した結果、政府機能を一部停止させても、「冷静な知略」を駆使して戦うリーダーがいます。
自民党も民主党も、「ねじれ国会」による立ち往生から、政権を投げ出す結果となりました。オバマ大統領は、行政機能の一部停止に及ぶ下院共和党の「ねじれ議会」を乗り越え、任期を続けそうです。
オバマがリンカーンを意識していることはよく知られています。リンカーンは南北戦争を終わらせ、オバマはシリア空爆を止めました。オバマケアをめぐる共和党との攻防も、オバマ大統領が勝利を手中にしそうですが、そうなると、リンカーンとの符号が合いすぎる気がしてきます。オバマ大統領の美しい娘が、近々赴任する新駐日米大使と同じく、「悲劇の娘」としてグラビアを飾る姿など見たくないものです。
I Will Follow Him 映画「天使にラブ・ソングを」より
修道女が歌う ”Sister Act (原題) ”ですから”him ”はキリストか神です。したがって、”I will follow him ”は、「彼(あなた)に従います」でしょうか。
I will follow him
Follow him wherever he may go
And near him I always will be
For nothing can keep me away
He is my destiny
I will follow him
Ever since he touched
my heart I knew
There isn't an ocean too deep
A mountain so high it can keep
keep me away
Away from his love
I love him
I love him
I love him
And where he goes
I'll follow
I'll follow
I'll follow
I will follow him.
Follow him where ever he may go
There isn't an ocean too deep
A mountain so high it can keep
keep me away
You did it
You did it
I will follow him
(Follow him)
Follow him where ever he may go
There isn't an ocean too deep
A mountain so high it can keep
keep us away
Away from his love
I love him
I'll follow
True love
(He'll always be my true love)
Forever
(From now until forever)
I love him
I love him
I love him
And where he goes
I'll follow
I'll follow
I'll follow
He'll always be
my true love
my true love
my true love
from now until
forever
forever
forever
There isn't an ocean too deep
A mountain so high it can keep
keep me away
Away from his love ・・・
リッキー・ネルソンも”I Will Follow you ”を歌っていますが、”Sister Act ”の元歌は、ペギー・マーチのラブソングです。こちらのほうが、歌詞としても歌としても、私は好きです。しかし、彼女はなぜ、バスの運転手がするような白手袋をはめて歌っているのでしょうか?
Little peggy march (1963 original Live) - I will follow him
おまけです。
Andre Rieu - I Will Follow Him
(敬称略)
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