<金曜は本の紹介>
「珍獣病院 ちっぽけだけど同じ命」の購入はコチラ
「珍獣病院 ちっぽけだけど同じ命(田向 健一)」という本は、田園調布動物病院院長の筆者が、その動物病院での動物の治療・手術の奮闘ぶり、幼少からの動物好きな様子、獣医学部への入学、アマゾン探検などの話等について書かれています。
動物病院というのは、基本的には犬・ネコの治療をし、その他の動物は治療できないそうですが、この田園調布動物病院では、犬・ネコだけでなくウサギ、カメ、カエル、金魚、ウーパールーパー、ワラビー、プレーリードッグ、ヤモリ、フェレット、ハムスター、シマリス、イグアナ等を治療するようです。
治療の半数が犬・ネコで、残りの半数がそれ以外の珍獣と言われる動物のようです。
特にカエルが好きなようで、2.8gのカエルの開腹手術もするとはスゴイと思いましたね。
また、この本ではペットを飼う時の食べ物の注意事項や病気の症例がたくさんあり、ペットをお持ちの方にはとても参考になると思います。
たとえば、金魚鉢は洗いすぎてはいけない、小型犬はピーナッツや梅干の種などが危ない、犬はチョコレート中毒になる(但しホワイトチョコレートは大丈夫)など。
また、この本の全体を通して、筆者の動物に対する愛情がとても感じられ、とてもオススメな本です!
とても楽しくこの本を読めました!
なお、この本の漢字には平仮名が併記されていますので、小学生でも読めると思いますので、オススメです!
以下はこの本のポイントなどです。
・午前9時。動物病院が開けると、さまざまなペットを連れた飼い主さんがやってくる。ペットが多種多様なら、病気も千差万別。一日の来院患者数は40~50件が平均的なところだが、犬や猫が占めるのは、そのうちのほぼ半数。残りは犬猫以外のエキゾチックペット。いわゆる”珍獣”と呼ばれる類だ。うちの病院には、僕のほかに3人の獣医、3人の看護師がいる。
・午前9時から午後1時、午後4時から8時・・・・これが僕の病院の外来受け付け時間。休診日は木曜日。昼間のなか休みが3時間もあって、長いと思う人もいるかもしれない。だけど、この時間は休み時間ではない。あくまで外来患者を受け付けないということ。1時から2時まではランチタイムだけれど、だいたい午前の診療が長引いて1時半過ぎまでかかる。2時からは手術時間だ。手術が短時間ですんだときや、珍しく手術がないときは、メールチェックしたり、原稿を書いたり、症例を検討したり。決して昼寝をしているわけではないのだ。昼に終わりそうもない大がかりな手術は、受付が終わった夜8時以降におこなう。1日12時間労働は当たり前、ときには15時間労働やそれ以上になることもある。
・預かっている動物を世話するために、スタッフは朝8時から出勤だ。犬をたくさん預かっているときは、ケンカしたりしないよう1匹ずつ散歩させるので、朝と夕方何度も散歩に連れていかなくてはいけない。また入院室にはインターネットにつながったカメラが設置されていて、入院している動物の容態が気になればいつでも自宅や出先から監視できるようになている。
・動物の歯の治療も、意外に多い。犬猫で多いのは、歯周病だ。ペットフードは栄養バランスをよく考えて作られているのだけれど、本来、野生の肉食動物は草食動物を襲い、生肉を食いちぎり、そのつど歯が磨かれる。それに比べ、小さくてひと飲みできてしまうペットフードは歯をあまり使わなくてすんでしまう。また、ペットフードのカスが歯と歯茎のすきまに溜まり歯垢となり、時間がたつとそれが石みたいに固くなって歯石となる。歯石は、細菌(ばい菌)のすみかとなり、歯茎が腫れたり、炎症をおこす歯周病になることがとても多い。歯周病がひどくなると、歯がグラグラになってしまい、悪化すると歯を抜かなくてはいけなくなる。
・犬や猫は長い歴史を経て、いわば人間が改良に改良を重ねて作り出したものだから、人間社会が彼らの生きる世界になった。人間なしに生きていくことはできない。とくに犬は飼い主である人間との関係をしっかり築くことが、彼らの幸せになる。1分でも長くご主人様のそばにいることが犬にとっての幸せであり、ご主人様に喜んでもらうことが、彼らの幸せだ。昔は犬を外につないで飼っている家が多かったが、犬の幸せを考えれば、やっぱり家の中で飼うことが理想だと思う。そうすれば、ご主人様と一緒にいられるし、ちょっとした変化にも気づきやすいので、病気などで手遅れになってから病院に連れてこれることが少なくなる。
・人間に飼われている動物は、きちんとケアしてあげることも大切だ。きちんと世話をしてあげないとみすぼらしくなってしまう。競争馬がピカピカで美しいのは、毎日毎日ブラッシングをしてもらっているからだ。犬もきちんとブラッシングしてあげないと、毛につやは出ないし、汚れたまま放っておくと、毛がからまって、フェルト状になってしまうことがある。定期的にシャンプーしてあげることも大切だ。猫は自分でなめて体を清潔に保つけれど、やはりたまにはブラッシングが必要だ。犬にしても猫にしても、牛や馬などを含め「人に飼われることが前提」の動物は、人がきちんと世話をしてあげなくてはいけない。
・イグアナは大人になると1メートル以上にもなる大きなトカゲの一種。中南米の熱帯雨林の木の上が生活の中心だ。周りにはたくさんの種類の葉っぱと、さんさんと照りつける太陽光線、ときどき、バケツをひっくり返したようなスコールが降る。そんなところにイグアナはすんでいる。つまり、熱帯のような高めの温度と湿度、さまざまな種類の葉っぱ、は虫類飼育に欠かせない紫外線、登ることのできる木、・・・パッと考えただけでも、これだけ必要不可欠なものが思い浮かぶ。大きくなって、水槽では狭いだろうと部屋に放し飼いにしてもいいけれど、しっかりと太陽光線を当てないと骨が弱くなってしまう。もし、珍獣が飼いたくなったら、その動物が自然の中で、元々どんなところにすんでいて、どんなものを食べているのかということを考えたり、調べたりして、現実問題として飼えるかどうかを検討してほしいと思う。
・多くの人は、動物がすむところは清潔でなくてはならないと考える。だから金魚の水槽にもろ過器をつけ、エアポンプをつけ、水道の水をカルキ抜きすれば金魚にとって快適な環境だと思い金魚を放す。ところが、これが金魚にとって過酷な環境なのだ。新しい水もきれいすぎるろ過器も、金魚にはうれしくない。金魚がうれしいのは、ウンチなどを分解してくれるバクテリア(微生物)がいて、プランクトンがいる水だ。金魚を買ってくるときは、1週間ぐらい前に水槽に水を入れ、エアポンプを入れて用意しておく。買ったときに魚が入れられていたビニール袋ごと1時間くらい浮かせて、水槽の水とビニール袋内の温度を合わせる。そして、ゆっくりと水槽の中に魚を入れると、すぐに死んだりはしない。金魚を飼い始めてからも、規則正しく毎週1回金魚を水槽から出汁、水を新しく入れ替えて、砂利やろ過器の中をごしごし洗ったりしてはいけない。そんなことをしたらバクテリアがみんな死んでしまうからだ。2週間に1回くらい、水は3分の1ほど取り替えるだけで充分。取り替える3分の1の水も捨ててはいけない。砂利やろ過器はその中でササッと洗う。ろ過器の中の綿をこまめに替える必要もない。ちなみに僕のアロワナのろ過器の中なんて、1年間洗っていない。だから、長生きしているのだ。
・動物の命を支えるもの、食べ物。大事な大事なものなのに、間違ったエサをあげてペットを病気にしてしまう飼い主さんは少なくない。手のひらにのりそうな小さなサル、スローロリス。茶色い体に白い顔、でも目の周りは茶色い。愛くるしい容姿とリスの中を思わせる名前から、食べるのはフルーツやナッツと思いこんでいる人がいる。けれど、スローロリスは雑食。自然の中ではトカゲやバッタを捕まえて、丸かじりしている。そんな動物にフルーツやナッツばかりあげていたら、栄養失調になってしまう。最近大人気のフクロモモンガもかわいい顔に似合わずいろいろ食べる。彼らも野生では虫などをよく食べている。フルーツやナッツばかり与えられたスローロリスやフクロモモンガは、栄養不足で、クル病になって骨が変形してしまう。
・ウサギは消化器がとても大事な動物だから、おなかの病気は致命的になってしまう。草食動物がもつ素晴らしい能力の一つに、ワラや枯れ草を食べて栄養にできることがあげられる。おなかの中に飼っている微生物(バクテリア)が、植物に含まれているセルロースというすごく分解しにくい成分を分解し、栄養としている。人間が食べても決して栄養にならないワラなんかをエネルギーに変えることができるのだ。ところが、豆やお米、ビスケットのような炭水化物を与えると、分解するのに手こずって異常な発酵がおきてしまい、胃腸にガスが溜まってしまうのだ。そして、困ったことに、体によくないものでも、人間から与えられればバリバリ食べてしまう。動物なんだから、体に悪いものは本能で食べてはいけないと判断できるのではないかと思っている人がいるかもしれないけれど、そんなことはない。
・犬にレタスをあげているという飼い主さんがいた。「肉ばかりじゃ栄養が偏るからやっぱり野菜もとらないと!」と思ったそうだが、犬はもともと肉食動物だ。人間は雑食だから、肉も野菜も食べなければならないが、犬はそうではない。犬は野菜をうまく消化できないのだ。
・小型犬の場合、ピーナッツや梅干しの種なんかも命とりになることがある。飼い主さんが食べていたナッツ入りのチョコレートを落としてしまい、そこに飼い犬のチワワがいて、パクッと食べてしまった。吐き続けて、ぐったりした状態で連れてこられた。犬にとってチョコレートが中毒の原因になることは飼い主さんも知っていて、チョコレート中毒になったようだと心配して連れてきた。けれど、犬にとって中毒になるチョコレートの量は、チョコレートの種類にもよるけれど、ミルクチョコレートなら体重1kgあたり10g以上で、チョコレート1粒ぐらいでは中毒にはんらない。ちなみに、ホワイトチョコレートは食べても中毒にはならない。このチワワの場合、レントゲンを撮ってみると、腸の中に丸いものが写っていた。開腹手術をしたところ、それはチョコレートの中のマカデミアナッツだったのだ。腸にすぽっとはまって、腸閉塞をおこしていた。2~3日放っておいたら死んでしまうところだった。
・「昨日まで元気でエサを食べていたのに、急に具合が悪くなって」と飼い主さんたちは言うけれど、決して「急に」ではない。その前からジワジワと、いつもと違う兆候を見せていたけれど、気づかなかっただけかもしれない。人間だって、「最近、少し疲れやすいな」と思っても、ちょっと我慢して、家族や友達にも相談せず、いつもと変わりなく学校や会社に行けば、他の人は気づかないだろう。それがたたってある日倒れてしまう感じと似ているかもsれない。その証拠に、「急にエサを食べなくなって」と駆け込んできた飼い主さんに、根堀り葉堀り聞くと、「そういえばそういうことがありました」ということがよくある。たとえば、「水は飲んでいましたか?」「そう言われれば2カ月ぐらい前から水をたくさん飲むようになっていた気がします」一般に水をたくさん飲む症状を示す病気にはあまりいいものがない。糖尿病とか、腎臓病とか。そのときは2カ月前から兆候が出ていたのだけれど、飼い主さんが「おかしい、エサを食べない」と気づいたのがたまたま急だっただけなのだ。だから、僕が飼い主さんたちにお願いしているのは、どんな小さなことでも気になることがあったら気軽に来院してくださいということ。何もなければ数百円の診察料を払うだけですむし・・・・・。
・僕と動物とのつきあいは、もう30年以上になる。物心つくかつかないうちか、僕のそばにはいつも動物がいた。生き物が大好きだったのだ。僕が生まれ育ったのは、愛知県の知多半島。大きな河川はないけれど、ため池がたくさんあり、周りに畑や田んぼが広がり、その脇を小川が流れている。そんな自然豊かな、のんびりしたところだ。雑木林にはカブトムシやクワガタ、田んぼにはカエルやオタマジャクシ、ザリガニ、カブトエビ、ゲンゴロウ、田んぼに流れ込む小川にはメダカやタイコウチなどさまざまな生き物がすんでいた。小学生のことには、学校から帰ると、ランドセルを放り出し、畑や田んぼ、小川に出かけては、ダンゴムシ、ハサミムシ、マイマイカブリ、クモ、ミミズ、イモリ、カエル、トカゲ、ヘビ、ザリガニ、アリジゴクなd、動くものを片っ端から捕まえては飼っていた。捕まえてきただけでなく、両親にお願いしてハムスター、ブンチョウ、セキセイインコ、熱帯魚なども買ってもらった。なかでも夢中になったのはカエルだった。
・動物が好きな人は、大きく「サバンナ派」と「アマゾン派」に分かれるのだが、僕は断然アマゾン派。熱帯植物が行く手を遮り、先に何があるか見通せない。ジャングルの中は薄暗く、空を見上げれば、木々の間からわずかに光がもれてくる程度。湿気が肌にまとわりつき、どこからどんな動物が出てくるかわからない熱帯雨林。でも、そこには、たくさんの動物たちがひっそりと息づいている。そんな世界にたまらなく憧れる。
・獣医学部を受験することにした。そこで思ってもみない現実を知る。なんと全国で獣医学科がある大学は16校しかないのだ。競争倍率は30倍。かなりの狭き門。しかも、僕が通っていた高校は、当時創立7年目の新設校で、それまで獣医学科を受験した人はだれもいないという狭き門に加えて、受験指導もあてにできない。けれど、情熱だけはあった。推薦枠をとるために、猛烈に定期試験の勉強を始めた。
・ちなみに獣医学部に入ったからといて、動物病院の獣医になる人ばかりとは限らない。獣医学部を卒業すると、大きく分けて、臨床獣医師のように直接動物の治療にあたる職業につく人と、研究者や公務員などのように動物の治療にhあtらない職業につく人に分かれる。臨床獣医師には、僕のようにペットの診療をする人、動物園や水族館で働く人、そして、牛や豚、馬、鶏など産業植物の治療にあたる人なおがいる。競馬に出走する馬を専門に診る獣医さんもいる。動物の治療にあたらない職業も幅広い。僕らがいつも食べている畜産物の管理の多くも獣医がかかわっている。食肉として店頭で売られる前に必ず家畜検査場で、食べてもいい肉かどうかを検査しなければならないが、それも獣医の仕事。また、税関で外国から輸入された畜産物の検査や薬物の輸入検疫をおこなってのも獣医。このほかに製薬会社や研究所に勤めて、生物学的ないろいろな研究に進む人もいる。
・この受験を通して僕が学んだことは、情熱があれば壁は突きくずせるということ。エキゾチックペットの診療をしていると、日々迷うことばかりだ。でも、情熱があれば、絶対なんとかなる。その信念が今日も僕を動かしている。
・アマゾンでの2カ月間にわたるこの旅で感じたことは、お金なんてなくたって、勇気と健康さえあれば、明日をなんとか乗り切っていけるということだ。そして、「これからどうなるんだろう」という不安感は、僕にとって決してマイナスな感情ではないということ。むしろ何かワクワクと楽しいことなのだ。だからこそ、貯金もないのにあっちこっち回って、数千万円の借金をして病院を開業することにも踏み切れたのだと思う。勇気と健康があれば生きていける。
・何回も繰り返しになるが、僕はカエルが好きだ。なぜ好きかというと、かわいいから。愛嬌がある顔をしていて、何時間見ていても飽きない・・・という理由だけではあんまりなので、科学者の端くれとしていうならば、ものすごく多種多様な生き物だからだ。カエルの種類は、今わかっているだけで4000種とも6000種ともいわれている。北極と南極をのぞく世界中にすんでいて、水のほとんどない砂漠にすむカエルもいれば、一生水の中から出ないカエルに、ずっと地中にもぐっているカエルもいる。大きさだって1cmくらいのmのから30cm近いものまでいる。水の中に卵を産むものもいれば、葉っぱの上に卵を産むものもいる。一つの生き物のグループとして多様性に富んでいるのだ。
・大型の爬虫類は代謝のスピードが遅いので、麻酔薬が体内でなかなか分解されず、したがって目が覚めるのも遅いというわけだ。ちょっとドキドキしたが、これでトカゲは代謝が遅いということを、経験を通じて学ぶことができた。何事も勉強だ。このことがあってから、もっと早く目が覚める麻酔薬に替えることにした。大丈夫とわかっていても、2日も目を覚まさないと、少し心配になる。
・「トカゲはペットとしてとても人気のある動物なのだけれど、いまだに血液検査の基準の数値が出ていない。これは今後のトカゲの医療に貢献するものだと思うので、試薬を提供してください」と交渉して、見事試薬を提供してもらうことができた。一介の獣医の頼みによく応えてくれたものだと思う。富士フィルムさんには今でも感謝している。
・実はカメの手術方法も、カエルの病気の治療法も、フェレットの手術法も自慢するには恥ずかしくなるようなすごくシンプルな治療法だ。こういった何か新しい治療法を考えるとき、僕が心がけるようにしているのは、従来のやり方にとらわれず、いろいろな考えをしてみること。ときには、いままでの方法を「改善する」のではなく、「一から考えなおす」ことが必要だ。自由に考えて、そして、チャレンジすることを恐れないこと。
・ペットに子どもを産ませたくないとき、不妊手術という妊娠できなくする手術をする。かわいそうなようだけど、動物の場合、子どもを産まないまま長生きすると卵巣や子宮の病気になる可能性が高くなるのだ。犬は不妊手術をしないと10歳を過ぎたころから、病気になる確率が高くなる。
・わからないときは、僕は大学病院で検査してもらうことをすすめる。大学病院には僕たち町の動物病院の獣医ではそろえられない最新鋭の機器と、それぞれの病気を専門に研究している先生たちがそろっている。循環器科、泌尿器生殖器科、呼吸器科、脳神経科、眼科、腫瘍科、整形科、皮膚科、消化器科などがあり、「人間の病院では?」と思えるほどだ。大学病院で診てもらうためには、僕たちのような町の動物病院からの紹介が必要になる。僕たちは、「これは自分たちの手に負えない」とか、「自分の病院では原因がわからない」というとき、大学病院を紹介して、検査をしてもらったり、手術してもらったりする。とても頼りになる存在だけれど、大学病院は基本的に犬と猫の診療が中心だ。珍しいほ乳類や爬虫類などの珍獣は、ほとんど診てもらえない。だから、町医者の僕たちが悩むしかないのだ。
・ガンになる動物は多い。「おたくの○○ちゃんはガンです」と言うと、たいていの飼い主さんは、「え、動物もガンになるんですか?」と驚く。けれど、ほとんどの動物はガンになる。犬や猫などのほ乳類はもちろんのこと、小鳥やヘビだってガンになる。金魚などの魚類だってガンになるのだ。ガンは、お酒やタバコなど人間の悪い生活習慣との関係によってできると思っている人が多い。事実、そういったケースもあるだろう。そもそもガンは、基本的には自分の体の細胞だ。ガンはその細胞のコピーミスともいえる。Aという細胞が増えたり再生するときには、同じAという細胞にならなければならない。しかし、ガンはそうではない。Aがちょっとだけ違うA’やA”になってしまう。このA’やA”がどんどんどんどん増えていくのが、ガンなのだ。
・フェレットは完全な肉食動物だが、なぜか甘いものも大好き。フェレットが喜ぶからと、毎日バナナ1本をあげていたという。バナナには炭水化物が多く含まれるが、炭水化物を多くとりすぎると、血糖値をコントロールするインスリンというホルモンの働きを悪くして、糖尿病になってしまうことがある。
<目次>
はじめに
第1章 田園調布動物病院は今日も大忙し
動物病院は小さな総合病院
町の獣医さんはなんでもやる
北からイグアナ、南からプレーリードッグ
動物も歯が命
体重2.8gのアマガエルの手術に成功!
獣医師7人集めて、大型犬の骨折の手術
顔を切り裂き、尻尾を切り取る。ときには大胆な手術も必要
釣り糸を食べてしまう犬、おもちゃのトカゲを飲み込んだカエル
病院のペットとなった動物たち
どうしようもない無力感に、獣医をやめたくなることも
休診日にダックスフントの脊髄の手術
第2章 珍獣との「幸せな暮らし方」
ウサギも金魚もウーパールーパーも珍獣
犬と珍獣、同じペットでもこんなに違う
ワラビーは広いところで、ミドリガメは水の中で
プレーリードッグがはげてしまったのは、誰のせい?
そのカメ、冬眠しているのか、瀕死の状態なのか
かわいい顔をしているサルだけど・・・・・
金魚は清潔すぎる水が嫌い
キュートなフクロモモンガが食べるものは
ヤマネコにとって松坂肉はごちそう?
ウサギがおなかをこわしたら・・・・・
その犬にとって、キャベツは必要ですか?
本当にかわいそうなことは・・・・・?
「昨日まで元気だった」と言うけれど
第3章 僕はどうして獣医になったのか
ダンゴムシもハサミムシも、カエルもヘビも僕のペット
イグアナが家にやってきた!
情熱があれば、大学受験も突破できる!
テレビゲーム人気の裏で
探検部に入部
憧れの地、いざアマゾンへ
まぼろしの黄金ナマズを求めて
僕の珍獣の診療の原点、カエルの結石
第4章 だから珍獣は面白い!
カエルLOVE
タランチュラ、8ヵ月の断食後、脱皮
初めての珍獣の診療はウサギ
珍獣の常識は、人間の非常識
カメの卵が膀胱に落ちた!?
眠りから覚めないオオトカゲ
トカゲ200匹の血液検査
カメの開腹手術にPE法を考案
カエルのツボカビ症を水虫の薬で治す
おしっこを出す新しい方法を開発
エラ呼吸専用麻酔装置を発明
それぞれの珍獣に、それぞれの麻酔装置を
ハムスターはストッキングに、カメはトングでつかんでレントゲン撮影
第5章 命に休みはない
骨肉種で前脚を切断。3本脚になったゴールデンレトリバー
なぜ震えているの?
「ちょっと考えさせてもらえますか?」
人間用の薬で糖尿病のフェレットを治療
リスザルの赤ちゃん誕生!
「もうダメだ」と思った脱水症状のヤギが・・・・
動物が明日も生きている確率-それは50%
安楽死という選択
年間8万匹の犬の殺処分をどう考える?
命をいただくこと
命の列車
おわりに
面白かった本まとめ(2011年下半期)
<今日の独り言>
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動物病院というのは、基本的には犬・ネコの治療をし、その他の動物は治療できないそうですが、この田園調布動物病院では、犬・ネコだけでなくウサギ、カメ、カエル、金魚、ウーパールーパー、ワラビー、プレーリードッグ、ヤモリ、フェレット、ハムスター、シマリス、イグアナ等を治療するようです。
治療の半数が犬・ネコで、残りの半数がそれ以外の珍獣と言われる動物のようです。
特にカエルが好きなようで、2.8gのカエルの開腹手術もするとはスゴイと思いましたね。
また、この本ではペットを飼う時の食べ物の注意事項や病気の症例がたくさんあり、ペットをお持ちの方にはとても参考になると思います。
たとえば、金魚鉢は洗いすぎてはいけない、小型犬はピーナッツや梅干の種などが危ない、犬はチョコレート中毒になる(但しホワイトチョコレートは大丈夫)など。
また、この本の全体を通して、筆者の動物に対する愛情がとても感じられ、とてもオススメな本です!
とても楽しくこの本を読めました!
なお、この本の漢字には平仮名が併記されていますので、小学生でも読めると思いますので、オススメです!
以下はこの本のポイントなどです。
・午前9時。動物病院が開けると、さまざまなペットを連れた飼い主さんがやってくる。ペットが多種多様なら、病気も千差万別。一日の来院患者数は40~50件が平均的なところだが、犬や猫が占めるのは、そのうちのほぼ半数。残りは犬猫以外のエキゾチックペット。いわゆる”珍獣”と呼ばれる類だ。うちの病院には、僕のほかに3人の獣医、3人の看護師がいる。
・午前9時から午後1時、午後4時から8時・・・・これが僕の病院の外来受け付け時間。休診日は木曜日。昼間のなか休みが3時間もあって、長いと思う人もいるかもしれない。だけど、この時間は休み時間ではない。あくまで外来患者を受け付けないということ。1時から2時まではランチタイムだけれど、だいたい午前の診療が長引いて1時半過ぎまでかかる。2時からは手術時間だ。手術が短時間ですんだときや、珍しく手術がないときは、メールチェックしたり、原稿を書いたり、症例を検討したり。決して昼寝をしているわけではないのだ。昼に終わりそうもない大がかりな手術は、受付が終わった夜8時以降におこなう。1日12時間労働は当たり前、ときには15時間労働やそれ以上になることもある。
・預かっている動物を世話するために、スタッフは朝8時から出勤だ。犬をたくさん預かっているときは、ケンカしたりしないよう1匹ずつ散歩させるので、朝と夕方何度も散歩に連れていかなくてはいけない。また入院室にはインターネットにつながったカメラが設置されていて、入院している動物の容態が気になればいつでも自宅や出先から監視できるようになている。
・動物の歯の治療も、意外に多い。犬猫で多いのは、歯周病だ。ペットフードは栄養バランスをよく考えて作られているのだけれど、本来、野生の肉食動物は草食動物を襲い、生肉を食いちぎり、そのつど歯が磨かれる。それに比べ、小さくてひと飲みできてしまうペットフードは歯をあまり使わなくてすんでしまう。また、ペットフードのカスが歯と歯茎のすきまに溜まり歯垢となり、時間がたつとそれが石みたいに固くなって歯石となる。歯石は、細菌(ばい菌)のすみかとなり、歯茎が腫れたり、炎症をおこす歯周病になることがとても多い。歯周病がひどくなると、歯がグラグラになってしまい、悪化すると歯を抜かなくてはいけなくなる。
・犬や猫は長い歴史を経て、いわば人間が改良に改良を重ねて作り出したものだから、人間社会が彼らの生きる世界になった。人間なしに生きていくことはできない。とくに犬は飼い主である人間との関係をしっかり築くことが、彼らの幸せになる。1分でも長くご主人様のそばにいることが犬にとっての幸せであり、ご主人様に喜んでもらうことが、彼らの幸せだ。昔は犬を外につないで飼っている家が多かったが、犬の幸せを考えれば、やっぱり家の中で飼うことが理想だと思う。そうすれば、ご主人様と一緒にいられるし、ちょっとした変化にも気づきやすいので、病気などで手遅れになってから病院に連れてこれることが少なくなる。
・人間に飼われている動物は、きちんとケアしてあげることも大切だ。きちんと世話をしてあげないとみすぼらしくなってしまう。競争馬がピカピカで美しいのは、毎日毎日ブラッシングをしてもらっているからだ。犬もきちんとブラッシングしてあげないと、毛につやは出ないし、汚れたまま放っておくと、毛がからまって、フェルト状になってしまうことがある。定期的にシャンプーしてあげることも大切だ。猫は自分でなめて体を清潔に保つけれど、やはりたまにはブラッシングが必要だ。犬にしても猫にしても、牛や馬などを含め「人に飼われることが前提」の動物は、人がきちんと世話をしてあげなくてはいけない。
・イグアナは大人になると1メートル以上にもなる大きなトカゲの一種。中南米の熱帯雨林の木の上が生活の中心だ。周りにはたくさんの種類の葉っぱと、さんさんと照りつける太陽光線、ときどき、バケツをひっくり返したようなスコールが降る。そんなところにイグアナはすんでいる。つまり、熱帯のような高めの温度と湿度、さまざまな種類の葉っぱ、は虫類飼育に欠かせない紫外線、登ることのできる木、・・・パッと考えただけでも、これだけ必要不可欠なものが思い浮かぶ。大きくなって、水槽では狭いだろうと部屋に放し飼いにしてもいいけれど、しっかりと太陽光線を当てないと骨が弱くなってしまう。もし、珍獣が飼いたくなったら、その動物が自然の中で、元々どんなところにすんでいて、どんなものを食べているのかということを考えたり、調べたりして、現実問題として飼えるかどうかを検討してほしいと思う。
・多くの人は、動物がすむところは清潔でなくてはならないと考える。だから金魚の水槽にもろ過器をつけ、エアポンプをつけ、水道の水をカルキ抜きすれば金魚にとって快適な環境だと思い金魚を放す。ところが、これが金魚にとって過酷な環境なのだ。新しい水もきれいすぎるろ過器も、金魚にはうれしくない。金魚がうれしいのは、ウンチなどを分解してくれるバクテリア(微生物)がいて、プランクトンがいる水だ。金魚を買ってくるときは、1週間ぐらい前に水槽に水を入れ、エアポンプを入れて用意しておく。買ったときに魚が入れられていたビニール袋ごと1時間くらい浮かせて、水槽の水とビニール袋内の温度を合わせる。そして、ゆっくりと水槽の中に魚を入れると、すぐに死んだりはしない。金魚を飼い始めてからも、規則正しく毎週1回金魚を水槽から出汁、水を新しく入れ替えて、砂利やろ過器の中をごしごし洗ったりしてはいけない。そんなことをしたらバクテリアがみんな死んでしまうからだ。2週間に1回くらい、水は3分の1ほど取り替えるだけで充分。取り替える3分の1の水も捨ててはいけない。砂利やろ過器はその中でササッと洗う。ろ過器の中の綿をこまめに替える必要もない。ちなみに僕のアロワナのろ過器の中なんて、1年間洗っていない。だから、長生きしているのだ。
・動物の命を支えるもの、食べ物。大事な大事なものなのに、間違ったエサをあげてペットを病気にしてしまう飼い主さんは少なくない。手のひらにのりそうな小さなサル、スローロリス。茶色い体に白い顔、でも目の周りは茶色い。愛くるしい容姿とリスの中を思わせる名前から、食べるのはフルーツやナッツと思いこんでいる人がいる。けれど、スローロリスは雑食。自然の中ではトカゲやバッタを捕まえて、丸かじりしている。そんな動物にフルーツやナッツばかりあげていたら、栄養失調になってしまう。最近大人気のフクロモモンガもかわいい顔に似合わずいろいろ食べる。彼らも野生では虫などをよく食べている。フルーツやナッツばかり与えられたスローロリスやフクロモモンガは、栄養不足で、クル病になって骨が変形してしまう。
・ウサギは消化器がとても大事な動物だから、おなかの病気は致命的になってしまう。草食動物がもつ素晴らしい能力の一つに、ワラや枯れ草を食べて栄養にできることがあげられる。おなかの中に飼っている微生物(バクテリア)が、植物に含まれているセルロースというすごく分解しにくい成分を分解し、栄養としている。人間が食べても決して栄養にならないワラなんかをエネルギーに変えることができるのだ。ところが、豆やお米、ビスケットのような炭水化物を与えると、分解するのに手こずって異常な発酵がおきてしまい、胃腸にガスが溜まってしまうのだ。そして、困ったことに、体によくないものでも、人間から与えられればバリバリ食べてしまう。動物なんだから、体に悪いものは本能で食べてはいけないと判断できるのではないかと思っている人がいるかもしれないけれど、そんなことはない。
・犬にレタスをあげているという飼い主さんがいた。「肉ばかりじゃ栄養が偏るからやっぱり野菜もとらないと!」と思ったそうだが、犬はもともと肉食動物だ。人間は雑食だから、肉も野菜も食べなければならないが、犬はそうではない。犬は野菜をうまく消化できないのだ。
・小型犬の場合、ピーナッツや梅干しの種なんかも命とりになることがある。飼い主さんが食べていたナッツ入りのチョコレートを落としてしまい、そこに飼い犬のチワワがいて、パクッと食べてしまった。吐き続けて、ぐったりした状態で連れてこられた。犬にとってチョコレートが中毒の原因になることは飼い主さんも知っていて、チョコレート中毒になったようだと心配して連れてきた。けれど、犬にとって中毒になるチョコレートの量は、チョコレートの種類にもよるけれど、ミルクチョコレートなら体重1kgあたり10g以上で、チョコレート1粒ぐらいでは中毒にはんらない。ちなみに、ホワイトチョコレートは食べても中毒にはならない。このチワワの場合、レントゲンを撮ってみると、腸の中に丸いものが写っていた。開腹手術をしたところ、それはチョコレートの中のマカデミアナッツだったのだ。腸にすぽっとはまって、腸閉塞をおこしていた。2~3日放っておいたら死んでしまうところだった。
・「昨日まで元気でエサを食べていたのに、急に具合が悪くなって」と飼い主さんたちは言うけれど、決して「急に」ではない。その前からジワジワと、いつもと違う兆候を見せていたけれど、気づかなかっただけかもしれない。人間だって、「最近、少し疲れやすいな」と思っても、ちょっと我慢して、家族や友達にも相談せず、いつもと変わりなく学校や会社に行けば、他の人は気づかないだろう。それがたたってある日倒れてしまう感じと似ているかもsれない。その証拠に、「急にエサを食べなくなって」と駆け込んできた飼い主さんに、根堀り葉堀り聞くと、「そういえばそういうことがありました」ということがよくある。たとえば、「水は飲んでいましたか?」「そう言われれば2カ月ぐらい前から水をたくさん飲むようになっていた気がします」一般に水をたくさん飲む症状を示す病気にはあまりいいものがない。糖尿病とか、腎臓病とか。そのときは2カ月前から兆候が出ていたのだけれど、飼い主さんが「おかしい、エサを食べない」と気づいたのがたまたま急だっただけなのだ。だから、僕が飼い主さんたちにお願いしているのは、どんな小さなことでも気になることがあったら気軽に来院してくださいということ。何もなければ数百円の診察料を払うだけですむし・・・・・。
・僕と動物とのつきあいは、もう30年以上になる。物心つくかつかないうちか、僕のそばにはいつも動物がいた。生き物が大好きだったのだ。僕が生まれ育ったのは、愛知県の知多半島。大きな河川はないけれど、ため池がたくさんあり、周りに畑や田んぼが広がり、その脇を小川が流れている。そんな自然豊かな、のんびりしたところだ。雑木林にはカブトムシやクワガタ、田んぼにはカエルやオタマジャクシ、ザリガニ、カブトエビ、ゲンゴロウ、田んぼに流れ込む小川にはメダカやタイコウチなどさまざまな生き物がすんでいた。小学生のことには、学校から帰ると、ランドセルを放り出し、畑や田んぼ、小川に出かけては、ダンゴムシ、ハサミムシ、マイマイカブリ、クモ、ミミズ、イモリ、カエル、トカゲ、ヘビ、ザリガニ、アリジゴクなd、動くものを片っ端から捕まえては飼っていた。捕まえてきただけでなく、両親にお願いしてハムスター、ブンチョウ、セキセイインコ、熱帯魚なども買ってもらった。なかでも夢中になったのはカエルだった。
・動物が好きな人は、大きく「サバンナ派」と「アマゾン派」に分かれるのだが、僕は断然アマゾン派。熱帯植物が行く手を遮り、先に何があるか見通せない。ジャングルの中は薄暗く、空を見上げれば、木々の間からわずかに光がもれてくる程度。湿気が肌にまとわりつき、どこからどんな動物が出てくるかわからない熱帯雨林。でも、そこには、たくさんの動物たちがひっそりと息づいている。そんな世界にたまらなく憧れる。
・獣医学部を受験することにした。そこで思ってもみない現実を知る。なんと全国で獣医学科がある大学は16校しかないのだ。競争倍率は30倍。かなりの狭き門。しかも、僕が通っていた高校は、当時創立7年目の新設校で、それまで獣医学科を受験した人はだれもいないという狭き門に加えて、受験指導もあてにできない。けれど、情熱だけはあった。推薦枠をとるために、猛烈に定期試験の勉強を始めた。
・ちなみに獣医学部に入ったからといて、動物病院の獣医になる人ばかりとは限らない。獣医学部を卒業すると、大きく分けて、臨床獣医師のように直接動物の治療にあたる職業につく人と、研究者や公務員などのように動物の治療にhあtらない職業につく人に分かれる。臨床獣医師には、僕のようにペットの診療をする人、動物園や水族館で働く人、そして、牛や豚、馬、鶏など産業植物の治療にあたる人なおがいる。競馬に出走する馬を専門に診る獣医さんもいる。動物の治療にあたらない職業も幅広い。僕らがいつも食べている畜産物の管理の多くも獣医がかかわっている。食肉として店頭で売られる前に必ず家畜検査場で、食べてもいい肉かどうかを検査しなければならないが、それも獣医の仕事。また、税関で外国から輸入された畜産物の検査や薬物の輸入検疫をおこなってのも獣医。このほかに製薬会社や研究所に勤めて、生物学的ないろいろな研究に進む人もいる。
・この受験を通して僕が学んだことは、情熱があれば壁は突きくずせるということ。エキゾチックペットの診療をしていると、日々迷うことばかりだ。でも、情熱があれば、絶対なんとかなる。その信念が今日も僕を動かしている。
・アマゾンでの2カ月間にわたるこの旅で感じたことは、お金なんてなくたって、勇気と健康さえあれば、明日をなんとか乗り切っていけるということだ。そして、「これからどうなるんだろう」という不安感は、僕にとって決してマイナスな感情ではないということ。むしろ何かワクワクと楽しいことなのだ。だからこそ、貯金もないのにあっちこっち回って、数千万円の借金をして病院を開業することにも踏み切れたのだと思う。勇気と健康があれば生きていける。
・何回も繰り返しになるが、僕はカエルが好きだ。なぜ好きかというと、かわいいから。愛嬌がある顔をしていて、何時間見ていても飽きない・・・という理由だけではあんまりなので、科学者の端くれとしていうならば、ものすごく多種多様な生き物だからだ。カエルの種類は、今わかっているだけで4000種とも6000種ともいわれている。北極と南極をのぞく世界中にすんでいて、水のほとんどない砂漠にすむカエルもいれば、一生水の中から出ないカエルに、ずっと地中にもぐっているカエルもいる。大きさだって1cmくらいのmのから30cm近いものまでいる。水の中に卵を産むものもいれば、葉っぱの上に卵を産むものもいる。一つの生き物のグループとして多様性に富んでいるのだ。
・大型の爬虫類は代謝のスピードが遅いので、麻酔薬が体内でなかなか分解されず、したがって目が覚めるのも遅いというわけだ。ちょっとドキドキしたが、これでトカゲは代謝が遅いということを、経験を通じて学ぶことができた。何事も勉強だ。このことがあってから、もっと早く目が覚める麻酔薬に替えることにした。大丈夫とわかっていても、2日も目を覚まさないと、少し心配になる。
・「トカゲはペットとしてとても人気のある動物なのだけれど、いまだに血液検査の基準の数値が出ていない。これは今後のトカゲの医療に貢献するものだと思うので、試薬を提供してください」と交渉して、見事試薬を提供してもらうことができた。一介の獣医の頼みによく応えてくれたものだと思う。富士フィルムさんには今でも感謝している。
・実はカメの手術方法も、カエルの病気の治療法も、フェレットの手術法も自慢するには恥ずかしくなるようなすごくシンプルな治療法だ。こういった何か新しい治療法を考えるとき、僕が心がけるようにしているのは、従来のやり方にとらわれず、いろいろな考えをしてみること。ときには、いままでの方法を「改善する」のではなく、「一から考えなおす」ことが必要だ。自由に考えて、そして、チャレンジすることを恐れないこと。
・ペットに子どもを産ませたくないとき、不妊手術という妊娠できなくする手術をする。かわいそうなようだけど、動物の場合、子どもを産まないまま長生きすると卵巣や子宮の病気になる可能性が高くなるのだ。犬は不妊手術をしないと10歳を過ぎたころから、病気になる確率が高くなる。
・わからないときは、僕は大学病院で検査してもらうことをすすめる。大学病院には僕たち町の動物病院の獣医ではそろえられない最新鋭の機器と、それぞれの病気を専門に研究している先生たちがそろっている。循環器科、泌尿器生殖器科、呼吸器科、脳神経科、眼科、腫瘍科、整形科、皮膚科、消化器科などがあり、「人間の病院では?」と思えるほどだ。大学病院で診てもらうためには、僕たちのような町の動物病院からの紹介が必要になる。僕たちは、「これは自分たちの手に負えない」とか、「自分の病院では原因がわからない」というとき、大学病院を紹介して、検査をしてもらったり、手術してもらったりする。とても頼りになる存在だけれど、大学病院は基本的に犬と猫の診療が中心だ。珍しいほ乳類や爬虫類などの珍獣は、ほとんど診てもらえない。だから、町医者の僕たちが悩むしかないのだ。
・ガンになる動物は多い。「おたくの○○ちゃんはガンです」と言うと、たいていの飼い主さんは、「え、動物もガンになるんですか?」と驚く。けれど、ほとんどの動物はガンになる。犬や猫などのほ乳類はもちろんのこと、小鳥やヘビだってガンになる。金魚などの魚類だってガンになるのだ。ガンは、お酒やタバコなど人間の悪い生活習慣との関係によってできると思っている人が多い。事実、そういったケースもあるだろう。そもそもガンは、基本的には自分の体の細胞だ。ガンはその細胞のコピーミスともいえる。Aという細胞が増えたり再生するときには、同じAという細胞にならなければならない。しかし、ガンはそうではない。Aがちょっとだけ違うA’やA”になってしまう。このA’やA”がどんどんどんどん増えていくのが、ガンなのだ。
・フェレットは完全な肉食動物だが、なぜか甘いものも大好き。フェレットが喜ぶからと、毎日バナナ1本をあげていたという。バナナには炭水化物が多く含まれるが、炭水化物を多くとりすぎると、血糖値をコントロールするインスリンというホルモンの働きを悪くして、糖尿病になってしまうことがある。
<目次>
はじめに
第1章 田園調布動物病院は今日も大忙し
動物病院は小さな総合病院
町の獣医さんはなんでもやる
北からイグアナ、南からプレーリードッグ
動物も歯が命
体重2.8gのアマガエルの手術に成功!
獣医師7人集めて、大型犬の骨折の手術
顔を切り裂き、尻尾を切り取る。ときには大胆な手術も必要
釣り糸を食べてしまう犬、おもちゃのトカゲを飲み込んだカエル
病院のペットとなった動物たち
どうしようもない無力感に、獣医をやめたくなることも
休診日にダックスフントの脊髄の手術
第2章 珍獣との「幸せな暮らし方」
ウサギも金魚もウーパールーパーも珍獣
犬と珍獣、同じペットでもこんなに違う
ワラビーは広いところで、ミドリガメは水の中で
プレーリードッグがはげてしまったのは、誰のせい?
そのカメ、冬眠しているのか、瀕死の状態なのか
かわいい顔をしているサルだけど・・・・・
金魚は清潔すぎる水が嫌い
キュートなフクロモモンガが食べるものは
ヤマネコにとって松坂肉はごちそう?
ウサギがおなかをこわしたら・・・・・
その犬にとって、キャベツは必要ですか?
本当にかわいそうなことは・・・・・?
「昨日まで元気だった」と言うけれど
第3章 僕はどうして獣医になったのか
ダンゴムシもハサミムシも、カエルもヘビも僕のペット
イグアナが家にやってきた!
情熱があれば、大学受験も突破できる!
テレビゲーム人気の裏で
探検部に入部
憧れの地、いざアマゾンへ
まぼろしの黄金ナマズを求めて
僕の珍獣の診療の原点、カエルの結石
第4章 だから珍獣は面白い!
カエルLOVE
タランチュラ、8ヵ月の断食後、脱皮
初めての珍獣の診療はウサギ
珍獣の常識は、人間の非常識
カメの卵が膀胱に落ちた!?
眠りから覚めないオオトカゲ
トカゲ200匹の血液検査
カメの開腹手術にPE法を考案
カエルのツボカビ症を水虫の薬で治す
おしっこを出す新しい方法を開発
エラ呼吸専用麻酔装置を発明
それぞれの珍獣に、それぞれの麻酔装置を
ハムスターはストッキングに、カメはトングでつかんでレントゲン撮影
第5章 命に休みはない
骨肉種で前脚を切断。3本脚になったゴールデンレトリバー
なぜ震えているの?
「ちょっと考えさせてもらえますか?」
人間用の薬で糖尿病のフェレットを治療
リスザルの赤ちゃん誕生!
「もうダメだ」と思った脱水症状のヤギが・・・・
動物が明日も生きている確率-それは50%
安楽死という選択
年間8万匹の犬の殺処分をどう考える?
命をいただくこと
命の列車
おわりに
面白かった本まとめ(2011年下半期)
<今日の独り言>
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