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「おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ(正垣泰彦)」という本はオススメ!

2012年07月27日 01時00分00秒 | 
<金曜は本の紹介>

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 「おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ」という本は、サイゼリヤ創業者が、これまでの40年間の外食業界での経験で学んだことを「日経レストラン」に連載し、それをまとめたものです。

 外食業界でどうやって十分な利益を確保するかについてとても分かりやすく説明してあります。

 特に以下について書かれています。

・売り上げが減っても利益が増える店を目指すべき
・飲食店はメニュー数を絞ることが一番無駄を減らせる
・自分の店にしか出せないぞ、という強いメニューを作ること
・料理の品質と店の用途が合っているかを考えること
・危険なのは料理の質を下げて値下げすること
・店で起きるあらゆる現象を観察し、可能な限り、数値や客観的なデータに置き換えて、因果関係を考えること
・商品間の価格差を広げすぎないこと
・消費者ストレスを感じずに払える金額は朝:昼:夜で1:2:4
・メニューについてはアイテム数より使用食材の数を意識すべき。食材のロスや作業効率がが下がるのはメニュー数の増加より使用する食材の種類が増えたことによるケースが多い
・売り上げや利益が伸びている店を調べ、自店と何が違うのか考えること
・店を視察するときには「商品」「設備」「作業」「立地」の4分野についてそれぞれ100項目ずつ書き出すこと
・ヒットメニューを作るには、お値打ちで料理に合ったおいしい素材の開発と料理をおいしくする加工方法の開発が必要
・人時生産性(1日の粗利益/1日の総労働時間)は1時間あたり6000円を目標としている
・作業の中で、時間のかかるものを短くできないか、なくせないかと考えることが一番の効率化
・仕入れで大切なのは安く買うことではなく納品してもらう食材の品質について下限を決めること
・「検品」では「検数」と「検質」をすること
・繁盛店に卸しているところから仕入れる
・価格を見直すときのコツは値段の末尾に「4」「8」「9」を意識すること
・値下げ実行後は、その成果を十分検証すること
・サイゼリヤでは食材保管時の温度、湿度、収穫からの経過時間、運搬時の振動にこだわってきた。
・商圏内の人口と確保できる客単価は比例する
・中国でも7割引すると繁盛店となった
・利益が出ないというのは、社会への貢献が不十分な状態ということ
・何かに取り組み、どうしても上手くいかないときに、自分が悪かったと考えるのは、もっとも建設的な考え方
・敗者復活戦を乗り越えた人は、その後に伸びる
・目標として追う数値を1つに絞ること

 この本を読むと、思わずサイゼリヤに行って、安くて品質の良い食事を楽しみたくなりますね。

とてもオススメな本です!

以下はこの本のポイント等です。

・最初の店は、青果店の2階で人目につきにくい場所にあった。それでも「お客さんなんて簡単に来るものだ」と高をくくっていたら、これが全く来ない。深夜まで開ければ集客できるだろうと営業時間を朝4時まで延ばしても、地元のならず者のたまり場になっただけ。しまいには客同士のけんかで石油ストーブが倒れ、店が燃えてしまった。開店からたった7ヶ月後のことだ。ようやく店は再開したものの、やはりお客様は来なかった。商品に値打ちがあれば、場所が悪くてもお客様は入るはず。といっても、値打ちの出し方が分からないから、とりあえずメニューの価格を5割引きにした。それでも来ないから最終的には7割引にまで引き下げた。スパゲティの価格帯は150~200円になった。すると、青果店のキャベツやタマネギの山を越えて、ずらっとお客様が並んだ。客数が1日20人から一挙に600~800人まで増えた。店舗面積は17坪・38席だったので20回転にもなった。とても1店ではお客様をさばけなくなり、市内に4、5店出してお客様には最寄りのお店に行っていただくことにした。それがサイゼリヤの多店舗化の始まりだった。

・サイゼリヤは、店長に売り上げ目標を課していない。店長の仕事は人件費、水道光熱費など経費をコントロールすることだ。店の売り上げは「立地」「商品」「店舗面積」で決まる。売り上げが悪くなるとすれば、商品開発をする本社の責任で、店長のせいではないからだ。

・ほとんどの人は売り上げが増えれば、利益も増えると思っているが、それは違う。利益は「売り上げ」-「経費」。売り上げが増えなくても、無駄をなくして、経費を削れば利益は増える。経営者は日頃から、売り上げが減っても利益が増える店を目指すべきで、売り上げが減って利益が出ないから困るというのは、今まで無駄なことをたくさんしていたというのに等しい。

・では、どうすれば無駄を無くせるか?一番効果があるのは、何かを改善しようと考えるのではなく、今までやっていたことをやめることだ。飲食店ならメニュー数を絞ることが一番無駄を減らせる。同時に、自分の店にしか出せないぞ、という強いメニューを作ることだ。商品を絞り込んで徹底的にこだわるからこそ、値打ちのある料理を提供できる。

・商品数を絞るからこそ、お客様にお値打ち感を伝えやすい。まずは、来店客の2~3割が食べてくれる「核商品」を作り、それを磨き続けることだ。サイゼリヤであれば299円の「ミラノ風ドリア」などが、それに当たる。絞り込んでメニューを提供すると食材ロスが減り、作業効率も良くなる。無駄を省くので、利益もドンドン出る。そうなってきたら利益の一部は、お客様に還元すべきだから、値下げをする。すると、さらにお客様に喜ばれて、来店客数も増える。つまり、無駄をそぎ落とすことで、お値打ちな商品になるから、お客様に喜ばれて売り上げも最終的に増えるのであって、初めに安売りありきではないのだ。

・個人経営・中小の店には「核商品」をゼロから作るとっておきの方法があるので紹介しよう。これは私も経験したことなのだが、店主が自分の給料を削ってお客様に還元するというものだ。店主の給料を削って、その分だけ、原価を上げる。私自身創業当初は、給料をほとんどもらっていなかったし、食事は店の残り物で済ませていたが、おかげで行列が絶えることのに人気店になった。私が仲間だちと創業した40年前より、今の方がお客様は安くて価値のある料理に敏感だ。今でも十分通用する手法だと思っている。当時、私は独身だったが、結婚していても同じことをやれたと思う。家族にも働いて稼いでもらえば、自分の給料が無くてもやっていけるはずだ。自店でしか出せない料理「核商品」を作るには、そのくらいの覚悟が必要だ。

・お客様がその店の料理をおいしいと感じて、また店に来てくれるかどうかは、料理の品質と店の用途が合っているかどうかで決まる。用途に合っている料理を食べたときにお客様は「おいしい」と感じ、合っていないときに「まずい」と感じているのだ。そう考えると、「味付けが濃厚でコクはあるけど、味にキレがない」などと、ライバル店の料理を批評したところで、あまり意味がないことが分かる。つまり、味だけ論じることには何の意味もない。

・危険なのは、不況対策として、料理の質を下げてまで値下げをすることだ。来店したお客様が期待した用途の店でなくなってしまうとお客様の期待を裏切り、深刻な客離れを招くだろう。そんなことをするくらいなら、得意分野の商品に絞り込むことで無駄をなくしながら、どんな時に利用してほしい店なのかを明確にすべきだ。

・現在、飲食店は完全にオーバストアの状態にある。世の中が豊かになっていく中で飲食店は増えすぎた。選択肢が増えれば、当然、消費者は用途別に飲食店を選ぶ。それが消費者にとって都合が良く、豊かさを実感できるからだ。だから特定の用途に特化した飲食店を目指すべきだし、今後、そうした店が増えていくだろう。それは21世紀の飲食店のあるべき姿だと思っている。

・店で起きるあらゆる現象を観察し、可能な限り、数値や客観的なデータに置き換えて、因果関係を考えることだ。その際、心構えとして大切なのは、自分の店の料理、サービスなどはまだまだ大したことがないと自戒し続けること。そうすれば、何が問題なのかを探るときに「立地が悪い」とか、「景気が悪い」とか、外的要因のせいにしてしまって、判断を誤るケースは減るはずだ。

・不思議なもので、大ピンチになったときのほうが、正しい経営判断ができる経営者は多い。これは、切羽詰まって何かを他人のせいにする余裕がなくなり、自分の問題としていろいろな事象を見られるようになるからだろう。

・まず、あなたの店の料理名を縦に順に書き出し、それぞれの使用食材を料理名の横に書き出してみよう。弊社の「ミラノ風ドリア」なら、米、牛乳、バター・・・・となる。すべてのメニューを書き出してみると、ほとんどのお客様が食べている食材が分かるはずだ。それは卵やタマネギ、あるいは水や米といったものかもしれない。ほとんどの人はメニューそれぞれをもっと売るにはどうするか、という視点から考える。しかし、どんな食材をお客様が口に入れているのか、というデータに変換してみると、店の料理をもっと売るには、最もお客様に食べられている食材から順番に品質を良くしていく方が効果的かもしれない、という仮説に気づく。客観的な事実に基づき、仮説を立てて、実行し、検証する。これはサイエンス(科学)の手法そのものだ。自分の無知を知り、事実の前に謙虚でなければいけないのは科学者も飲食店経営者も同じである。

・ポイントは商品間の価格差を広げすぎないことだ。具体的には、「パスタ」「ピザ」「ドリア」など料理のカテゴリーごとに、一番安い価格の料理と一番高い料理の価格の差を2倍以内に収める。「サイゼリヤ」でもパスタで一番安い「ペペロンチーノ」は299円。一番高いパスタは「森のきのこのスパゲティ」など499円で数種類と、価格差は2倍以内に抑えている。価格差を2倍以内にとどめておくと、どれを頼んでも無茶な金額にならないという印象をお客様に与えられる。だから、お客様は安心して料理を選ぶことができる。

・消費者がストレスを感じずに払える金額は朝昼夜で異なる。比率は朝昼夜の順で1:2:4。普段の昼食に500円使う人は、夕食は1000円まで、朝食は250円までならストレスを感じずにお金を払えるという傾向にあるわけだ。

・メニューについては、アイテム数より使用食材の数を意識すべきだ。食材のロスが増えたり、作業効率が下がったりするのは、メニュー数の増加によるものではなく、使用する食材の種類が増えたことによるケースが多いからだ。

・「売り上げが伸びないのはなぜか」「もっと利益を出せないのか」と一人で悩むよりも、売り上げや利益が伸びている店を調べるべきだ。自店と何が違うのか、どうして違うのかを考えることで、自分たちがこれから何をすべきなのかが見えてくる。だから、私なりの視察のコツをお伝えしよう。まず視察する店選びだが、自店と業態や経営姿勢が違うタイプの店の方が違いが分かりやすい。ちなみに異業種でも大手のコンビニエンスストアやスーパーマーケットで売れている商品を調べると、消費者の嗜好が分かり参考になる。ユニクロなど、専門店から得られるヒントも多い。大前提は業績が良いところを視察し、そこから学ぶという姿勢だ。上場会社なら、有価証券報告書から売り上げの伸びや利益率、店舗数や従業員の生産性が分かるから、必ず調べておく。なぜその店に視察に行くのかを前もってはっきりさせておかなければならない。なおチェーン店を視察する場合、その店数は自社の10倍より100倍、100倍より1000倍と多ければ多いほど望ましい。なぜなら数多くの店を持つチェーン店では、長い年月をかけて改善と標準化を進め、その店のお客様にとって「これが大事」というものだけが残っているはずだからだ。チェーン店から学べる部分は個人経営の店でも多いはずだ。

・実際に店を視察するときは、「商品」「設備」「作業」「立地」の4分野について、それぞれ100項目ずつ書き出していくことをお勧めする。例えば、設備なら入り口の形、壁、床、照明、マット、従業員の制服など目に入ったものをチェックする。床に敷かれたマットは何センチ四方で何色で、どんな材質だったかなど、数値を交えてできるだけ具体的に状態を書くことが重要だ。なお、100項目というと凄い数に思えるかもしれないが、慣れればすぐ書けるようになるので心配はいらない。次のステップは、記した項目について、なぜその店はそうしているのか、なぜ自分の店と違うのかという「因果関係」を考えることだ。大切なのは話し合うことで、個人店の経営者なら、奥さんや家族と一緒に店に行くべきだ役割を分担して店を観察し、お互いに結果を報告して「仮説」を一緒に考える。

・一度、何百項目も書き出した店には定期的に訪ねることも重要だ。2回目の視察からは、前回の訪問と違う部分だけを書き出せばいい。その微妙な変化にこそ、大きなトレンドをつかむヒントがある。

・ヒットメニューを作るには、次の2つの事柄を究めることが必要だ。すなわち①「お値打ちで料理に合ったおいしい素材の開発」と②「より料理をおいしくする加工方法の開発」だ。当たり前に聞こえるかもしれないが、どこよりもお値打ちでおいしい料理を提供できるなら、その店の料理は必ず売れて、ヒットメニューになる。

・安売りがはやっているときに、値下げで割安感を演出するのは危険だ。お値打ちな料理とは価格が安いのではなく、その品質が「この値段なら、この程度の価値が必要だ」という水準を上回っている状態のことだ。だから、値下げをしても価値を伴わない料理は売れないはずで、自分の首を絞めるだけだ。私は「おいしい料理」とは「売れる料理」だと思っている。サイゼリヤのヒットメニュー「ミラノ風ドリア」では、これまでに1000回以上「アロマ(食前の香り)」「テイスト(味)」「フレーバー(食後の香り)」の改良を続けてきた。お客様にとっては食べても分からないくらいの微調整の繰り返しだが、その影響で注文数が増えたり、減ったりする。

・大商圏の店は非日常的な料理でなければならず、来店頻度は低い代わりに、価格帯は高めになる。一方の小商圏の店は、朝食に象徴されるようなシンプルな料理を提供し、同じお客様に頻繁に来てもらわなければならない。当然、価格は低めになる。これを逆に言うと、料理をシンプルにしていくことで、お客様の来店頻度が高まり、小商圏でも店を運営できるが、同時に価格も安くしていかなければならないということだ。そして、食べ飽きないシンプルな料理はディナーより昼食。昼食よりも朝食で求められる。

・適正な利益を確保すという意味で、私が創業時から重視する経営指標が「人時生産性」だ。「人時生産性」とは、1日に生じた店舗の粗利益を、その日に働いた従業員全員の総労働時間で割ったものだ。
 人時生産性=1日の粗利益額/従業員の1日の総労働時間
例えば、1日の売上高が10万円で粗利益率が65%なら、粗利益額は6万5000円。従業員の労働時間の合計が25時間なら、6万5000円/25時間で人時生産性は1時間当たり2600円になる。飲食店なら、人時生産性は1時間当たり2000~3000円というのが標準的なはず。経営を安定させるには、この人時生産性を高める努力が欠かせない。サイゼリヤの場合、人時生産性は1時間当たり6000円を目標としている。飲食店の賃金は安いとよく言われるが、その中で当社が、他産業並みの待遇を実現するために必要な生産性の水準と考えているためだ。すでに店舗の人時生産性は低い店で4000円、高い店で6000円に達している。

・私に言わせれば、仕事とは「作業」の集まり。その作業の中で、時間のかかるものを短くできないか、無くせないかと考えることが、一番の効率化だ。飲食店のホール作業には「案内」「オーダー」「レジ作業」「料理を運ぶ」「片付ける」といった普通に考えれば、絶対に必要な作業がある。ファストフードは、このうち「案内」「料理を運ぶ」「片づける」という時間のかかる作業を3つもなくすことで、飛躍的に効率的な店舗運営を可能にしている。何か無駄をなくそうというときは、固定観念に縛られず、売り方を変えることを考えてみるべきだろう。

・注意しなければならないのは、店で働く経営者自身や家族の給料・残業代もきちんと経費としてカウントし、営業利益を算出すること。そうしないと正しい現状把握ができない。私が新規出店の判断をするときは、ROIの予測が30%に達するかどうかを基準にしている。出店後は、少なくとも20%は絶対に確保しなければならないと思っているからだ。実際、計画では30%くらいを確保できるはずが、20%近辺の数字になってしまうことだってある。なぜ私が20%にこだわるかと言えば、世界の主要国の銀行預金金利で一番高い金利は歴史的に見て、およそ7%前後(経済危機時を除く)。もろもろの手間やリスクを考えると、その3倍を稼げないくらいなら、高金利国の銀行に預金をした方がましだからだ。商売はギャンブルではない。

・私たちの最初に店は偶然、立地が悪い代わりに家賃がすごく安く、開業資金がほとんどいらなかった。だから、全くはやらない時期を無休で働いて耐え抜き、お客に相場の7割引の価格で料理を出すことで、繁盛店に生まれ変わらせることができた。もしも、多額の投資や高い家賃が掛かる店だったら、あっという間に潰れていただろう。だから、初期投資が少額で済み、家賃が低いという条件を満たす物件が見つかるまで、立地は慎重に選ばなければならない。そして、立地で注意しなければならないのが、商圏内に見込み客がいるかどうかだ。チェック方法は簡単で、業種を問わず、自店が狙う価格帯で繁盛している店が商圏内にあるかどうかで分かる。こだわった料理を提供し、安売りをせずにはやっている店を個人店なら探すべきだろう。

・サイゼリヤが世界中の食材原産地から同じ品質の中で最も安いものを仕入れる「ソーシング活動」で、食材コストを削れるようになったのは500店舗を超えたころからだ。逆に言えば、そんなことをしなくても500店くらいまでは店を増やせるわけで、仕入れで最も大切なのは、とにかく安く買うことではない。では、何が一番大切かといえば、仕入れ業者との間で、納品してもらう食材の品質について下限を決めることだ。つまり、事前に決めた一定の水準を下回る食材は持ってこさせない。もしも、基準以下の食材を持ってきたら返品し、代わりの品物を必ず持ってきてもらう。約束は契約書にもきちんと書く。品質の下限とは「こんな食材を使った料理は、お客様に出せない」と、あなたが感じる品質のことだ。具体的には、食肉なら色、香り、固さ、スジの比率は何%以内。脂の量はこれくらいといったこと。野菜も色、大きさ、香り、収穫時期、保管時の温度などを決めておく。私の持論では、料理の味の良しあしは80%が食材で決まる。料理人の技能など、その他の要因は残りの20%にすぎない。

・そしてもう一つ、必ずやらなければならない重要なことが、仕入れた食材の品質が前述の条件を満たしているか、仕入れの都度、検品することだ。私は食材の価格を値切ったことはないが、「検品」の結果、突き返さざるを得ないことはよくあった。「検品」には、品数や量が発注内容通りか調べる「検数」と、品質が発注内容通りか調べる「検質」という2つの役割がある。「検数」はチェックしていても「検質」までは気が回っていないという店は多い。しかし、それは重大な誤りで、検質こそ、経営者が必ず自分でやらなければならないといっても過言ではない重要な仕事だ。なぜ「検質」が経営者の仕事かと言えば、食材を見極める力は、誰でも簡単に身につけられるものではないからだ。経験やセンス、そして「真剣さ」が問われる。こうした要素を店で最も兼ね備えているのは経営者にほかならない。

・品質の良い食材を安定して調達するには、良い仕入れ業者を選ばなければならない。これは至ってシンプルで、繁盛店に卸しているところから仕入れるようにすること。近隣の繁盛店に出掛け、料理を食べてみて、その食材をどこから仕入れているのか、店主に教えてもらうといいだろう。私もそうやって仕入先を開拓した。繁盛店とつき合っている業者が提供する食材は品質が安定しているはずで、卸値も適正なはずだ。そうでなければ、取引先の飲食店は繁盛店になっていない。別の視点から言えば、繁盛店と同じ食材を使う一方で、店のコストを削減し、その繁盛店よりお値打ちな料理が提供できるなら、店にお客様が来ないはずはない。

・気を付けなければならないのは、意味のない値下げもあることだ。なぜなら商品の価格を下げていくとある一定の価格水準までは注文数が増えるが、それ以上は値下げをしても注文数が伸びなくなるからだ。そこがお得感を打ち出して注文数を伸ばす最適な価格で、その価格を下回る水準への値下げは単に利益を減らすだけだ。

・価格を見直すときのコツは値段の末尾に「4」「8」「9」を意識することだ。ある料理を値下げするとき、350円よりも340円はかなり安い印象を受けるが、320円や330円まで引き下げても、消費者が受ける心理的なインパクトは340円とあまり変わらない。同じく500円よりも480円、490円はかなり安く感じるが、さらに20円、30円引き下げて460円や470円にしても、そのインパクトは知れている。ならば前者は340円、後者は480円か490円で売るべきだろう。

・値下げ実行後は、その成果を検証することが重要だ。それも単純に結果だけを見るのではなく、本当に値下げの効果で注文数が増えたのかを必ず検証することだ。仮に、値下げと同時にその料理の注文数が増えたとしても、それが本当に値下げの効果んおかは分からない。もしかすると、「改訂したメニューブックのPR文が良かった」「たまたまテレビでその料理が紹介され注目された」など、注文数が増えたのは値下げと全く関係がないことも十分にあり得る。

・食材の品質を落とすことで、仕入れ値を下げて利益を増やすー。これは飲食店経営者が最もやってはいけないことだ。私の経験からいえば、個人経営の店が繁盛店であり続けるためには、原価率は40%以上であるべきだと思う。

・サイゼリヤでは、食材保管時の①「温度」と②「湿度」、収穫からの③「経過時間」、運搬時の食材への④「振動」の4つにこだわってきた。たとえば、畑で野菜をトラックに積んで調理するまで、野菜のまわりの温度は4度に保つ。運搬時の湿度をある一定の水準に保つことで、野菜の水分が外に出ることを防ぐ。経過時間にこだわるのは細菌を繁殖させないため。運搬時、食材に振動を与えないようにするのは劣化を防ぐためだ。ミルクを振り続けると成分が分離してバターに変わるように、振動は食材を変質させてしまう。

・商圏内の人口と確保できる客単価は比例する。商圏内の人口が5万人という「小商圏」で確保できる客単価を「1」とすると、商圏内の人口が10万人という「中商圏」の客単価は「2」。商圏内の人口が20万人という「大商圏」なら客単価は「4」になる。たとえば、商圏内人口20万人の大商圏の洋食レストランの客単価が4000円だとすると、同じような店が人口5万人という小商圏にあるなら客単価は1000円が適正ということになる。

・もしも、自店の業態に必要な商圏内の人口よりも実際の商圏人口が少ないようなら、対策を打つ必要がある。一番簡単なのは商圏内に十分な人口が確保できる場所に移転することだが、それができる店は少ないだろう。次善の策が、商品の変更。商圏人口が少なくてもやっていける商品を投入するということだ。具体的には毎日のように利用しても食べ飽きないように、よりシンプルな店の料理を目指す。客層としては、40代以上のお客様を増やすべきだろう。40代以上のお客様の特徴は①価格にシビアでお値打ち感を求めている、②最適な量を食べたいと思っているので、Sサイズがあるなど量を選べるようにしてほしいと思っている、③カロリーや塩分、糖分、脂肪分が低い「ヘルスフード」を求めている、④料理やお酒を自分で組み合わせて食べるコーディネートを好む、といったものがある。そして、もう一つ忘れてはならないのが、⑤分かりやすさだ。店は見つけやすくなければならず、メニューを選ぶときも、ほとんど考えずに自分が食べたいものを選んで注文できるようにすること。40代以上のお客様はわずらわしいのが嫌いだ。

・異常事態に直面したときの心構えはチェンジとチャレンジだ。物事を変えざるを得ないとき(=異常事態)なのだから、新しいこと(=チェンジ)に前向きに挑戦(=チャレンジ)すべきだ。異常事態のときは、日頃やっているいろいろなことをやめざるを得ない。これは前向きに捉えると日頃やっていることを①「やめられる」し、②「絞ることができる」ということだ。

・中国事業の担当者は値上げをしないと潰れる、とさえ言う。しかし、中国への出店は、安くて良質なイタリア料理を食べていただきたいという理念に基づくものだったはずだ。値上げをしたら、何のために中国に出店したのか分からない。私は中国事業の担当者にこう指示を出した。「どうせ潰れるなら、創業期に料理の価格を市価の7割引にすることで、お客様が絶えない繁盛店を作ったときと同じくらいの大胆な値下げをしよう。価格を安くして潰れるなら、気分が良い」まず、それまでの価格と比べて、5割程度の値下げを実施。それではインパクトが弱いと、最終的には価格を7割ほど下げた。すると、その直後か1日100人くらいしか来店しなかった店に、1日3000人が押し掛けるようになった。店の前に並ぶ行列は1日中、絶えることがなくなった。1つの店では、お客様が入りきらないので、店の周辺に新しい店を出して、そちらもご利用いただく。店数を増やしていく手法も、創業期と同じだった。賃金も現地のサービス業としては最高水準の金額を支払えている。

・私が海外進出の経験からあらためて感じるのは、利益が出ないというのは、社会への貢献が不十分な状態だということだ。だから、サイゼリヤも中国では価格を大幅に引き下げることで、現地の人たちに喜ばれる店になって、初めて利益を出せるようになった。

・何かに取り組み、どうしても上手くいかないときに、自分が悪かったと考えるのは、最も建設的な考え方だ。競合店にお客を取られた→不景気のためだ、業績が悪い→部下の能力不足だ、と失敗の理由を他人に押しつけていては、一歩も前に進めない。世の中のすべての結果には、当然ながら原因がある。原因は自分の中にあるという前提で実験を行うほうが、成功する可能性は高くなるはずだ。なお、あらゆる「実験」は、何のためにそうするのか、なぜそれをすべきだと思ったのか、という前提条件を自分で文章にまとめて、ポイントを整理しながら進めていくとよい。同じ失敗を繰り返さなくて済み、成功につながる可能性が高まる。

・1つだけ確かなのは「敗者復活戦」を乗り越えた人はその後に伸びるということ。いわゆる「遅咲きの花」だ。サイゼリヤでは1年間に店長の5%が降格し、店長の補佐に戻る。そこから店長に再度、昇格する人は昔の仕事の進め方を反省しているから、前とは違って格段に仕事ができるようになる。そのうえ、仕事ができない人たちの気持ちも分かるから指導もうまい。店長を補佐する社員たちを集める「アシスタント会議」で、私は元店長たちに「あなたたちには将来性があるから頑張れ。期待しているぞ」と声をかけているが、それは慰めているのではなく、事実を伝えているだけの話なのだ。

・大切なのは、目標として追う数値を1つに絞ることだ。例えば、サイゼリヤの経営理念は「人のために・正しく・仲良く」というもの。人とはお客様のことで、この理念のもと、「客数増」を追求している。組織として追求する数値が決まれば、全スタッフはその目標数値を高めるために仕事をすることになる。例えば、店舗スタッフは客数を増やすために店の掃除をし、仕入れ担当者は客数を増やすために仕入れをするのだ。それぞれの担当者が目標のために具体的に何をするのかは、経営者や幹部が「翻訳」して伝えなければならない。目標として追う数値は時々、変えてもかまわない。例えば、「営業利益」でもよいし、アンケートを集めたいなら、アンケート結果の回収数というのでもよいだろう。ただし、追う数値は1つに絞ること。2つや3つに増やすべきではない。人間は一度に、いくつもの目標を追えるほど器用ではないからだ。


<目次>
はじめに
第1章 「客数増」がすべて-お客様本位の物の見方とは
 給料を削ってでも核商品を作れ
 求められる「おいしさ」は店によって違う
 物事をありのままに見る方法
 お客様に安心感を与える値付けとは
 品揃えは3タイプを意識せよ
 マクドナルドは気付きの宝庫-店舗視察のコツ-
 ヒットメニューを生む2つの大原則
 「安売り」と「お値打ち」は違う
 大商圏向きと小商圏向きの味がある
 流行の料理が売れるとは限らない
 付録1 サイゼリヤ流のカイゼンを徹底解剖
第2章 十分な利益を確保するには-大切なのは儲かる仕組みづくり
 最も大切な指標「人時生産性」
 儲かる店を作る財務の大原則
 仕入れは価格より、品質を重視せよ
 経営計画を作る目的は責任者をはっきりさせること
 値下げの限界点を見極めよ
 原価率は40%以上あっていい
 地方都市で成功する秘訣
 震災という「異常事態」
 多店舗化のポイント「立地創造」
 海外進出の注意点
 付録2 サイゼリヤ農場が被災でも絶望などしていられない
第3章 リーダーと組織の在り方-人が頑張れるのは誰かの役に立つからだ
 リーダーならビジョンを持て
 人のために・正しく・仲良く
 ビジネスとは心を磨く修行の場
 失敗からしか学べない
 能力を左右するのは「経験」
 週に1度は商圏内の調査を
 商売の原点を忘れないために
 大切なのは公正な評価
 数値目標は1つに絞れ
 あとがきにかえて
 有力経営者が語る「正垣泰彦」-ニトリホールディングス社長 似鳥昭雄


面白かった本まとめ(2012年上半期)

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