<金曜は本の紹介>
「友達の数は何人?(ロビン・ダンバー)」の購入はコチラ
この「友達の数は何人?」という本は、オックスフォード大学の認知・進化人類学研究所所長・進化人類学教授のロビン・ダンバーさんが書いた本で、特に人間の行動を進化面から面白く探ったものです。
特に以下については面白いと思いましたね。
・脳は一雌一雄関係を保つことにいちばん頭を使っている
・社交上手な雌ほど多くの子孫を残す
・女性は色彩への感受性が強い
・気のおけないつながりは150人まで
・チンギス・ナーンの子孫は多い
・男女の恋人募集広告の傾向は進化論的な考察と一致
・キスは相手の遺伝子構成を吟味
・恋愛は匂いも重要
・男性はリスクを恐れない者がもてる
・異常なのはミルクを平気で飲めるほう(乳糖を分解する酵素ラクターゼを分泌する人はごく一部)
・つわりは妊婦が感染症を未然に防ぐために進化した
・長い時間帯で見ると、いまの寒冷な気候のほうがおかしい
・すべての現生人類の血統をさかのぼると約20万年前にアフリカにいたたった5000人の女性だった(絶滅しそうだだった)
・ネアンデルタール人の肌は白かった
・恐竜は鳥類に近い
・美しい人は裕福になれるだけでなく、子宝にも恵まれる
・ひとかどのことを成し遂げる人物はメガネ・肥満のガリ勉タイプではなく、スポーツ万能で勉学優秀、そのうえ社交性も抜群というオールラウンド・プレーヤー
とてもオススメな本です!
以下はこの本のポイント等です。
・脳が大きく発達したのは、複雑な社会に適応するため-少なくとも霊長類に関してはそう思われていた。ところが最近、スザン・シュルツと私が行った鳥類などの研究から、新しい可能性が浮上してきた。脳は、一雌一雄関係を保つことにいちばん「頭を使って」いるのではないか。あなたは夫や妻の短所や欠点に苦労させられたことはないだろうか?もしあなたが、パートナーとの関係を続けるのも楽じゃないと思っていたら、まさにそういうことだ。鳥類でもほ乳類でも、体格のわりに脳が大きい種はまずまちがいなく一雌一雄だ。反対にその他大勢の群れをつくり、乱交にはげむ種は脳が小さい。
・ほとんどの霊長類の場合、メスが無事に子どもを産んで育てられるかどうかは、ほかのメスの協力で決まる。メスどうしの関係を円滑にするには、複雑な社会のなかで地道な交渉を重ねる必要がある。ケニアのアンボセリ国立公園で、ヒヒ集団の家族史を30年以上にわたって観察した研究では、社交上手のメスほど多くの孫や子を残して生涯を終えている。しかしオスはちがう。社交術よりも大切なのは、ひるむことなく戦えるかどうかだ。
・3原色のうち赤と緑に反応する錘体細胞は、X染色体上の遺伝子の指令でつくられるが、残る青の錘体細胞の遺伝子は第7染色体上にある。そのため〔赤緑を区別しにくい一般的な〕色覚異常は圧倒的に男性が多い。また、青が見えづらいタイプの色覚異常がほとんどないのも同じ理由による。男が持っているX染色体は母親ゆずりの1本だけなので、もしそこに乗っている遺伝子が不良品だったとしても替えがきかに。しかし女はX染色体を両親から1本ずつもらっているので、何かあったときでも予備がある。4色視や5色視もこれで簡単に説明がつく。網膜内の錘体細胞に関する遺伝子にちょっとした変異があれば、それだけで赤や緑の微妙な色調のちがいを感知できる。男の場合は、1本だけしかないX染色体が色の見えかたを決定するので話は早い。しかし女はX染色体が2本あり、それぞれからつくられる錘体細胞がまったく同じ波長に反応するとはかぎらない。目が発達するときに両方のX染色体が関与すれば、反応する波長が異なる錘体細胞が出現し、3原色の赤、緑、青に加えて別の色調の赤と緑も認識できる5色視が可能になるのだ。
・「こんなに遅くまでどこにいたのよ?」と問いつめられ、事実から少々距離のある答えを返したとき、女はまずまちがいなくそれを見破る。この驚異的な能力の背景には、色彩(とくに赤)への強い感受性があるのではないか。つまり相手のほんのちょっとした顔色の変化を察知して、言い訳がウソだと見抜くのだ。そうだとしたら、進化はずいぶん薄情なことをしてくれたものだ。
・くわしい人口調査が行われた約20の部族社会では、氏族や村といった集団の平均人数は153人であることがわかった。細かく見ると100~230人まで幅があるが、統計的には150人という平均の範囲におさまる。
・あなたもチンギス・ハーンの子孫である可能性が少なくないことが、現代遺伝学で証明されている。Y染色体遺伝子をくわしく調べたところ、いま生きている男性のうち実に0.5%は、モンゴル帝国の偉大な将軍かその兄弟の血筋を受けついでいることがわかったのだ。もしあなたの祖先が中央アジアの出身ならば、子孫である確率は8.5%に上昇する。これは日本から黒海沿岸まで、中央アジア全域で2000人以上の男性のDNAを解析してわかったことだ。対象者の大多数は、Y染色体のDNA配列(ハプロタイプという)に大きなばらついがあったのだが、200人だけは配列の特徴がとてもよく似ていて、なかには完全に一致する者もいたその200人のハブロタイプは全部で18種類ほど。60種類前後のほかのハプロタイプとは明らかに一線を画していて、特異な集団を形成していた。さらに興味ぶかい事実が明らかになる。これらのハプロタイプの持ち主の分布を調べると、断然多いのはいまのモンゴルだ。さらに集中度が高い場所が中央アジア全域に飛び地のように点在していた。ほかのハプロタイプは、それぞれ本拠地がひとつに定まっていた。
・生殖の成功率を最大限に引き上げたいオスの選ぶ道はただひとつ、できるだけたくさんの卵子に受精させること。ヒトの場合は、若くて受胎能力が盛んな女を選ぶか、一度にたくさんの女と結婚するかである。対して女の方は生まれた子どもを育てあげねばならないから、子育てにプラスになる相手を求める。だから恋人募集の条件で収入や地位、職業(要するに金があるかどうか)を重視するのだ。さらに女の場合は、長期的な関係が築けるかどうか、人づきあいのスキルが高いかどうかも相手選びの重要な基準となる。
・何をもって美しい顔と感じるかは、男女の生殖戦略のちがいを反映している。セントアンドルーズ大学の神経心理学者デヴィッド・ペレットノ研究室は、「好感度の高い」顔を合成した写真を使って、人がいちばん魅力的だと感じる特徴を特定することに成功した。それによると、女性が魅力的だと感じる男性の顔には、大きい目と小さい鼻、それに顔の下半分ががっちりしていて、あごが発達しているといった特徴がある。あとの2つは性的成熟を示すものだ。対して男性が魅力的だと感じる女性の顔の特徴は、大きな瞳、左右に離れた目、高い頬骨、小さいあごと上唇、大きい口。その多くは子どもの顔と共通で、若さ、すなわち受胎能力の高さを強調している。さらに男性は、やわらかくてつやのある紙と、輝くようななめらかな肌にも弱い-化粧品業界の目のつけどころだ。ただしこの2つは若さと生殖能力のしるしであるエストロゲン濃度と密接に結びついているので、おいそれと偽装はできない。
・人間はキスで何をしているかというと、どうやら相手の遺伝子構成を吟味しているらしいのだ。人間の免疫システムはひとりひとり異なっていて、それを決定するのは主要組織適合遺伝子複合体、略してMHCと呼ばれる遺伝子の集まりだ。花粉、ウイルス、バクテリアといった異物をどこまで認識し、体内に侵入してきたときに退治するかはMHC遺伝子が決める。MHC遺伝子は変異を起こしやすい。私たちの身体は、隙あらば寄生したり、生命をねらったりする顕微鏡レベルの敵に囲まれているが、そんな脅威に対抗できるのもMHC遺伝子のおかげだ。またMHC遺伝子は体臭のコントロールもしている。その人が生まれつき持っている体臭は、免疫反応との関係が深いのだ。すでに数多くの研究で示されているように、人は自分にないMHC遺伝子型を持つ相手を伴侶に選ぶ傾向がある。その理由は説明するまでもない。自分と同じ遺伝子型だと、生まれた子どもの免疫力は幅が狭くなる。でも両親の遺伝子型が異なっていれば、子どもは両方を受け継いで病気に対する抵抗力の範囲が広がるのだ。つまり自分にない免疫反応の持ち主が伴侶としてふさわしいわけだが、ではどうやってそれを見分けるのか?ひとつの手がかりは匂いだ。
・リスクを恐れない者が生殖で成功するのh、平和な現代イギリスでも通用する事実だ。リヴァプール大学で私の学生だったジゼル・パートリッジは、男性のリスク意識と、生涯に持った子供の数を比較する調査を行った。リスク意識は職業(たとえば消防士と事務職)とアンケート結果(スピードに対する考え方、危険なレジャーをするかどうか)の両面から評価した。その結果、リスクをとる意識が高い男性は、そうでない男性より明らかに子どもの数が多かった。その理由ははっきりしないが、事実は事実。リスクを恐れない男ほど、次の世代に貢献している。自腹を切らないと女は寄ってこないのだ。
・むしろ異常なのはミルクを平気で飲めるほうなのである。現生人類のなかで、ミルクの乳糖を分解する酵素、ラクターゼを分泌する人はごく一部だけだ。もちろん赤ん坊のときは誰でもミルクを飲んで消化している。ところがラクターゼ分泌に関わる遺伝子は、離乳期とともに働くのをやめてしまうのだ。それ以降はミルクと乳製品は消化できないものになり、無理に摂取すると最悪の場合生命にも関わることになる。そして判明したのは、離乳後に新鮮なミルクを消化できる能力は、いわゆる白人人種であるコーカソイド(なかでも北欧人)と、サハラ砂漠南縁に暮らす一部の牧畜民にしかない事実だった。それ以外の人々にとって、ミルクはやっかいな飲み物でしかなかったのだ。彼らが食べるのは、ミルクを加工したヨーグルトやチーズであり、飲むときは徹底的に加熱していた。アフリカの飢饉を救うために粉乳を送ることが賢明かどうか、これでわかるだろう。そんな状況で大量のミルクを人々に飲ませたら、事態は悪化するに決まっている。飢えで弱っている子どもはひとたまりもない。
・リヴァプール大学のクレイグ・ロバーツとジリアン・ペッパーは、つわりの頻度と食生活を世界各地で調査した。その結果、まずコーヒーなどの刺激物とアルコールとの関係が明らかになったが、それ以上に強い相関関係があったのは、実は肉、動物性脂肪、ミルク、卵、シーフードの消費量だった。穀類や豆類ではそうした関連はなかった。この調査結果からすると、つわりは妊婦が感染症を未然に防ぐために進化したという説も納得できる。しかし肉や乳製品には、消化しやすい栄養素がたくさん含まれている。なぜそれを避けなくてはならないのか?その答えは細菌だ。細菌汚染された肉や乳製品を食べると、流産の危険がある。穀類ではそうした心配はないので、妊娠中は穀類中心の食事をしたほうがよい。ところでつわりの毒物排除説に関しては、否定的なデータもある。スパイス類を摂取する頻度が高いほど、つわりが軽いという関係が認められたのだ。スパイス類の多くに発ガン性物質が含まれているから、これは意外な事実である。だがアジアを旅した人なら実感できるように、あの激辛カレーでは悪い細菌も生きられないはずだ。実際のところ、スパイスは悪玉どころか立派な善玉ななおだ。脳内鎮痛剤エンドルフィンの分泌をうながすことで、免疫システムの調節が促進され、病気にかかりにくくなるのである。これから妊娠・出産をしようという女性は、肉と乳製品を控えたほうがつわり防止によさそうだ。スコットランドでよく食べる、ポリッジというオートミールがゆはまさにうってつけ。さらにチリソースを一滴落としてぴりっとさせれば食も進むというものだ。
・地球の歴史全体を振り返ると、気候の激変はめずらしいことではない。氷河期という言葉は誰でも耳にしたことがあるだろう。ヨーロッパ北部全体が、断続的にではあるが分厚い氷でおおわれた時代だ。氷河期はおおよろ6万年周期で訪れており、そのあいだに温暖な気候の時代がはさまっている。いまはちょうど温暖な時期というわけだ。最後の氷河期が終わったのは約1万年前。このとき、徐々に温暖化していた気候が急激に寒冷に戻った期間があって、ヤンガードライアス期と呼ばれる。地球の平均気温はわずか50年で7度も上がった。それまでの温暖化で極地の氷が融けだし、海水面は90mも上昇した。それに比べると、いま騒がれている温暖化はずっとおとなしい。2080年までに予測される平均気温の上昇はせいぜい4度である。思い切りうしろに下がって状況を眺めると、現在の気象がいかにふつうでないかわかる。貝殻に含まれる炭素同位元素から分析すると、恐竜たちが死に絶えた6000万~4000万年前まえの間、地球の平均気温は約30度、いまの2倍も高かった。ヨーロッパや北アメリカはうっそうとした熱帯林で、ロンドンやパリ、ベルリンの中心部ではキツネザルに似た霊長類が木々の間を走り回り、むっとする湿地ではカバが水につかっていたのだ。長い時間軸で見ると、いまの寒冷な気候のほうがおかしいのだ。
・人類の歴史は長い。ヒトはチンパンジーやゴリラといったアフリカの大型類人猿と同じ科に属しているが、私たちの祖先が彼らから枝分かれしたのはおよそ600万年前。そこからは平坦な一本道というわけでは決してなく、途中で横道もたくさんできて、なかには何十万年と栄えたのちに絶滅したものもある。アウストラロピテクスの多くと、アフリカを出て東に向かい、遠く現在の北京にまで達した初期のホモ・エレクトス、ヨーロッパを中心に分布していたネアンデルタール人だ。私たち現生人類に続く系統も、何度となく絶滅の危機にさらされている。遺伝学的な研究から、すべての現生人類の血統をさかのぼると、約20万年前にアフリカにいた5000人の女性に行きつくことがわかっている。こんなにささやかな繁殖個体群は、途中で跡形もなく消えてもおかしくなかった。私たちはいま特権的な時代を生きている。それは系統のなかで現存する唯一の種ということだ。実は人類600万年の歴史のなかで、そんな特異な時代がはじまってまだ1万年しかたっていない。それ以前は必ず複数、最高で6種類の人類が共存していた。すでに絶滅しているものの、現生人類よりはるかに長く存在した種はたくさんある。なかには手を伸ばせば届きそうなぐらい、現生人類の時代のすぐ近くまで生きていた仲間もいるのだ。ヨーロッパで最後のネアンデルタール人が死んだのは、つい2万8000年前のこと。最後のホモ・エレクトスは6万年前より少しあとに中国で絶滅した。インドネシアのフローレス島では、やはりホモ・エレクトスの子孫にあたる小型の原人がつい1万2000年前まで生きていた。
・ネアンデルタール人の肌が白かったことは、最近発表されたDNA分析で明らかになった。バルセロナ大学の遺伝学者たちが、スペインのエル・シドロン洞窟から見つかった4万8000年前のネアンデルタール人の骨からDNAの抽出に成功した。そこに含まれているmcIrという遺伝子は、現代ヨーロッパ人も持っていて、メラニン色素の生成を抑えることで、肌の色を白くする働きがある。両親からともにこの遺伝子を受け継ぐと、日光に敏感な白い肌と赤毛の持ち主になる。赤毛のネアンデルタール人?意外なイメージだ。近年の遺伝子研究からは、現生人類、とくに北半球の人間に特徴的な突然変異を、ネアンデルタール人がほとんど持っていないこともわかっている。つまりネアンデルタール人は私たちの祖先ではなく、とても関係は違いが別種の人類ということだ。
・北アメリカで見つかったTレックスとマストドンのDNAサンプルを抽出したオーガンたちは、鳥(ニワトリとダチョウ)、霊長類(ヒト、チンパンジー、アカゲザル)、ウシ、イヌ、ラット、マウス、ゾウ、は虫類、両生類、魚のDNAと比較してみた。分析によって、まずマストドンはゾウの仲間であることがわかった。これは予想どおいの結果で、おかげで分析の信頼生も高まった。ほんとうの大発見はここからで、Tレックスはニワトリやダチョウにとても近いことが判明したのだ。統計的分析では区別ができないぐらい、三者の関係は近かった。さらにおもしろいことに、このグループにはは虫類のなかで唯一アリゲーター科のワニが属していた。ワニは恐竜が世をしのぶ仮の姿なのかもしれない。ただしワニでもクロコダイル科は歴史がとても古い。恐竜が生きていた時代にはすでに地球上にいた。
・身長が高い人ほど社会的、経済的に成功するというのはまぎれもない事実だ-ウォール街でもイギリスの金融市場でも、背が高い人ほど、同じ仕事でも金を多く稼いでいる。同様のことがIQでも当てはまりそうだ。実際、IQと社会的成功の相関関係を示す研究がいくつか発表されている。傷口に塩を塗り込むような話で申し訳ないが、美しい人は裕福になれるだけでなく、子宝にも恵まれる。私がヴロツワフ大学のボグスワフ・パウウォフスキーと共同で、ポーランドの医療データベースを分析したところ、背の高い男性ほど既婚率が高く、子供を持っている割合も多かった。
・ひとかどのことを成しとげる人物はメガネ・肥満のガリ勉タイプではなく、スポーツ万能で勉学優秀、そのうえ社交性もばつぐんというオールラウンド・プレーヤーであることがはっきりしたのだ。この結果はある意味それほど意外でもない。成功は成功から生まれるものだからだ。それにしても、「健全なる身体には健全なる精神が宿る」といういにしえからのことわざは、あまりにもそのまんまの意味ではないか。
<目次>
PartⅠ ヒトとヒトのつながり
第1章 貞節な脳(男と女)
浮気好きな種の脳は小さい・・大きな新皮質はメスのおかげ・・女の視覚は、男よりカラフル
第2章 ダンバー数(仲間同士)
集団サイズは新皮質の大きさに比例する・・気のおきないつながりは150人まで・・メンタライジング・・ネットワークは”3の倍数”で増える
第3章 親類や縁者の力(血縁)
共同体意識・・家族といっしょのほうが健康・・方言は共同体の会員証
第4章 ご先祖さまという亡霊(民族)
チンギス・ハーンの末裔?・・言語と遺伝子のネットワーク・・失われた民族の痕跡・・女たちを返せ?
PartⅡ つながりを生むもの
第5章 親密さの素(触れ合い・笑い・音楽)
やっしくさわって・・信頼を育む化学物質・・笑いの進化・・ヒトが音楽好きな理由
第6章 うわさ話は毛づくろい(言葉・物語)
言葉は、遠隔の毛づくろい・・母親ことばと音楽の起源・・女どうしのつながりが、言葉を発達させた・・夜、物語る効果
第7章 今夜、ひとり?(魅力)
恋人探しのルール・・魅力の秘密・・野心を調整する・・女の変化に気づいていない男たち
第8章 エスキモーのあいさつ(キス・匂い・リスク)
キスの進化論的な効用・・匂いの影響力・・もてるのはリスクをとる男
第9章 ずるいあなた(婚姻)
単婚のジレンマ・・メスが浮気して得なわけ・・愛の絆を深めにくい遺伝子
PartⅢ 環境や人類とのつながり
第10章 進化の傷跡(肌の色・体質)
ミルクとの愛憎関係・・高緯度とカルシウム・・肌の色を決めるビタミン・・赤ん坊は父親似と思いたい・・ややこしい性別
第11章 進化の邪魔をするやつはどいつだ?(進化と欲望)
病原体を防ぐ言語共同体・・つわりがあると良いこと・・死よりも大きな不安?・・中国が抱える時限爆弾
第12章 さよなら、いとこたち(絶滅の罠)
迫り来る悲劇・・乳香の教え・・マンモス絶滅の真実・・言語の大消滅時代・・それって心配すること?・・伝統的な社会も、地球にやさしいわけではなかった
第13章 こんなに近くてこんなに遠い(人類の起源)
伝説の小さな獣人・・二つの結論・・「人間らしさ」の起源・・ネアンデルタール人の肌は白かった
第14章 ダーウィン戦争(進化と創造)
デザインが、どうインテリジェント?・・進化戦争・・分子遺伝学は救世主?・・この骨は誰のもの?
PartⅣ 文化・倫理・宗教とのつながり
第15章 人間ならではの心って?(志向意識水準)
相手の心を読む・・ヒトと動物の「誤差」・・内なる限界・・不幸の確率
第16章 カルチャークラブに入るには(文化)
人間の文化・動物の文化・・ひっくりかえった常識・・高次元の文化・・シェイクスピアの六次志向意識水準
第17章 脳にモラルはあるのか?(道徳)
「トロッコ問題」を神経心理学で解く・・道徳と宗教の誕生・・類人猿にモラルはある?
第18章 進化が神を発見した(宗教)
宗教の進化生物学的な意味・・笑い、音楽、そして宗教・・信仰とダンバー数
第19章 頭を使って長生きしよう(健康・知性)
IQと健康と死の関係・・何て不公平な世の中・・成功は成功から生まれる・・知識の喜び
第20章 美しい科学(芸術)
ルネサンス的教養人・・詩人もまた科学者である・・ラテン語は捨てられ、科学は下り坂に
謝辞
解説-我らデジタルエイジの石器時代人
面白かった本まとめ(2012年上半期)
<今日の独り言>
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・女性は色彩への感受性が強い
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・チンギス・ナーンの子孫は多い
・男女の恋人募集広告の傾向は進化論的な考察と一致
・キスは相手の遺伝子構成を吟味
・恋愛は匂いも重要
・男性はリスクを恐れない者がもてる
・異常なのはミルクを平気で飲めるほう(乳糖を分解する酵素ラクターゼを分泌する人はごく一部)
・つわりは妊婦が感染症を未然に防ぐために進化した
・長い時間帯で見ると、いまの寒冷な気候のほうがおかしい
・すべての現生人類の血統をさかのぼると約20万年前にアフリカにいたたった5000人の女性だった(絶滅しそうだだった)
・ネアンデルタール人の肌は白かった
・恐竜は鳥類に近い
・美しい人は裕福になれるだけでなく、子宝にも恵まれる
・ひとかどのことを成し遂げる人物はメガネ・肥満のガリ勉タイプではなく、スポーツ万能で勉学優秀、そのうえ社交性も抜群というオールラウンド・プレーヤー
とてもオススメな本です!
以下はこの本のポイント等です。
・脳が大きく発達したのは、複雑な社会に適応するため-少なくとも霊長類に関してはそう思われていた。ところが最近、スザン・シュルツと私が行った鳥類などの研究から、新しい可能性が浮上してきた。脳は、一雌一雄関係を保つことにいちばん「頭を使って」いるのではないか。あなたは夫や妻の短所や欠点に苦労させられたことはないだろうか?もしあなたが、パートナーとの関係を続けるのも楽じゃないと思っていたら、まさにそういうことだ。鳥類でもほ乳類でも、体格のわりに脳が大きい種はまずまちがいなく一雌一雄だ。反対にその他大勢の群れをつくり、乱交にはげむ種は脳が小さい。
・ほとんどの霊長類の場合、メスが無事に子どもを産んで育てられるかどうかは、ほかのメスの協力で決まる。メスどうしの関係を円滑にするには、複雑な社会のなかで地道な交渉を重ねる必要がある。ケニアのアンボセリ国立公園で、ヒヒ集団の家族史を30年以上にわたって観察した研究では、社交上手のメスほど多くの孫や子を残して生涯を終えている。しかしオスはちがう。社交術よりも大切なのは、ひるむことなく戦えるかどうかだ。
・3原色のうち赤と緑に反応する錘体細胞は、X染色体上の遺伝子の指令でつくられるが、残る青の錘体細胞の遺伝子は第7染色体上にある。そのため〔赤緑を区別しにくい一般的な〕色覚異常は圧倒的に男性が多い。また、青が見えづらいタイプの色覚異常がほとんどないのも同じ理由による。男が持っているX染色体は母親ゆずりの1本だけなので、もしそこに乗っている遺伝子が不良品だったとしても替えがきかに。しかし女はX染色体を両親から1本ずつもらっているので、何かあったときでも予備がある。4色視や5色視もこれで簡単に説明がつく。網膜内の錘体細胞に関する遺伝子にちょっとした変異があれば、それだけで赤や緑の微妙な色調のちがいを感知できる。男の場合は、1本だけしかないX染色体が色の見えかたを決定するので話は早い。しかし女はX染色体が2本あり、それぞれからつくられる錘体細胞がまったく同じ波長に反応するとはかぎらない。目が発達するときに両方のX染色体が関与すれば、反応する波長が異なる錘体細胞が出現し、3原色の赤、緑、青に加えて別の色調の赤と緑も認識できる5色視が可能になるのだ。
・「こんなに遅くまでどこにいたのよ?」と問いつめられ、事実から少々距離のある答えを返したとき、女はまずまちがいなくそれを見破る。この驚異的な能力の背景には、色彩(とくに赤)への強い感受性があるのではないか。つまり相手のほんのちょっとした顔色の変化を察知して、言い訳がウソだと見抜くのだ。そうだとしたら、進化はずいぶん薄情なことをしてくれたものだ。
・くわしい人口調査が行われた約20の部族社会では、氏族や村といった集団の平均人数は153人であることがわかった。細かく見ると100~230人まで幅があるが、統計的には150人という平均の範囲におさまる。
・あなたもチンギス・ハーンの子孫である可能性が少なくないことが、現代遺伝学で証明されている。Y染色体遺伝子をくわしく調べたところ、いま生きている男性のうち実に0.5%は、モンゴル帝国の偉大な将軍かその兄弟の血筋を受けついでいることがわかったのだ。もしあなたの祖先が中央アジアの出身ならば、子孫である確率は8.5%に上昇する。これは日本から黒海沿岸まで、中央アジア全域で2000人以上の男性のDNAを解析してわかったことだ。対象者の大多数は、Y染色体のDNA配列(ハプロタイプという)に大きなばらついがあったのだが、200人だけは配列の特徴がとてもよく似ていて、なかには完全に一致する者もいたその200人のハブロタイプは全部で18種類ほど。60種類前後のほかのハプロタイプとは明らかに一線を画していて、特異な集団を形成していた。さらに興味ぶかい事実が明らかになる。これらのハプロタイプの持ち主の分布を調べると、断然多いのはいまのモンゴルだ。さらに集中度が高い場所が中央アジア全域に飛び地のように点在していた。ほかのハプロタイプは、それぞれ本拠地がひとつに定まっていた。
・生殖の成功率を最大限に引き上げたいオスの選ぶ道はただひとつ、できるだけたくさんの卵子に受精させること。ヒトの場合は、若くて受胎能力が盛んな女を選ぶか、一度にたくさんの女と結婚するかである。対して女の方は生まれた子どもを育てあげねばならないから、子育てにプラスになる相手を求める。だから恋人募集の条件で収入や地位、職業(要するに金があるかどうか)を重視するのだ。さらに女の場合は、長期的な関係が築けるかどうか、人づきあいのスキルが高いかどうかも相手選びの重要な基準となる。
・何をもって美しい顔と感じるかは、男女の生殖戦略のちがいを反映している。セントアンドルーズ大学の神経心理学者デヴィッド・ペレットノ研究室は、「好感度の高い」顔を合成した写真を使って、人がいちばん魅力的だと感じる特徴を特定することに成功した。それによると、女性が魅力的だと感じる男性の顔には、大きい目と小さい鼻、それに顔の下半分ががっちりしていて、あごが発達しているといった特徴がある。あとの2つは性的成熟を示すものだ。対して男性が魅力的だと感じる女性の顔の特徴は、大きな瞳、左右に離れた目、高い頬骨、小さいあごと上唇、大きい口。その多くは子どもの顔と共通で、若さ、すなわち受胎能力の高さを強調している。さらに男性は、やわらかくてつやのある紙と、輝くようななめらかな肌にも弱い-化粧品業界の目のつけどころだ。ただしこの2つは若さと生殖能力のしるしであるエストロゲン濃度と密接に結びついているので、おいそれと偽装はできない。
・人間はキスで何をしているかというと、どうやら相手の遺伝子構成を吟味しているらしいのだ。人間の免疫システムはひとりひとり異なっていて、それを決定するのは主要組織適合遺伝子複合体、略してMHCと呼ばれる遺伝子の集まりだ。花粉、ウイルス、バクテリアといった異物をどこまで認識し、体内に侵入してきたときに退治するかはMHC遺伝子が決める。MHC遺伝子は変異を起こしやすい。私たちの身体は、隙あらば寄生したり、生命をねらったりする顕微鏡レベルの敵に囲まれているが、そんな脅威に対抗できるのもMHC遺伝子のおかげだ。またMHC遺伝子は体臭のコントロールもしている。その人が生まれつき持っている体臭は、免疫反応との関係が深いのだ。すでに数多くの研究で示されているように、人は自分にないMHC遺伝子型を持つ相手を伴侶に選ぶ傾向がある。その理由は説明するまでもない。自分と同じ遺伝子型だと、生まれた子どもの免疫力は幅が狭くなる。でも両親の遺伝子型が異なっていれば、子どもは両方を受け継いで病気に対する抵抗力の範囲が広がるのだ。つまり自分にない免疫反応の持ち主が伴侶としてふさわしいわけだが、ではどうやってそれを見分けるのか?ひとつの手がかりは匂いだ。
・リスクを恐れない者が生殖で成功するのh、平和な現代イギリスでも通用する事実だ。リヴァプール大学で私の学生だったジゼル・パートリッジは、男性のリスク意識と、生涯に持った子供の数を比較する調査を行った。リスク意識は職業(たとえば消防士と事務職)とアンケート結果(スピードに対する考え方、危険なレジャーをするかどうか)の両面から評価した。その結果、リスクをとる意識が高い男性は、そうでない男性より明らかに子どもの数が多かった。その理由ははっきりしないが、事実は事実。リスクを恐れない男ほど、次の世代に貢献している。自腹を切らないと女は寄ってこないのだ。
・むしろ異常なのはミルクを平気で飲めるほうなのである。現生人類のなかで、ミルクの乳糖を分解する酵素、ラクターゼを分泌する人はごく一部だけだ。もちろん赤ん坊のときは誰でもミルクを飲んで消化している。ところがラクターゼ分泌に関わる遺伝子は、離乳期とともに働くのをやめてしまうのだ。それ以降はミルクと乳製品は消化できないものになり、無理に摂取すると最悪の場合生命にも関わることになる。そして判明したのは、離乳後に新鮮なミルクを消化できる能力は、いわゆる白人人種であるコーカソイド(なかでも北欧人)と、サハラ砂漠南縁に暮らす一部の牧畜民にしかない事実だった。それ以外の人々にとって、ミルクはやっかいな飲み物でしかなかったのだ。彼らが食べるのは、ミルクを加工したヨーグルトやチーズであり、飲むときは徹底的に加熱していた。アフリカの飢饉を救うために粉乳を送ることが賢明かどうか、これでわかるだろう。そんな状況で大量のミルクを人々に飲ませたら、事態は悪化するに決まっている。飢えで弱っている子どもはひとたまりもない。
・リヴァプール大学のクレイグ・ロバーツとジリアン・ペッパーは、つわりの頻度と食生活を世界各地で調査した。その結果、まずコーヒーなどの刺激物とアルコールとの関係が明らかになったが、それ以上に強い相関関係があったのは、実は肉、動物性脂肪、ミルク、卵、シーフードの消費量だった。穀類や豆類ではそうした関連はなかった。この調査結果からすると、つわりは妊婦が感染症を未然に防ぐために進化したという説も納得できる。しかし肉や乳製品には、消化しやすい栄養素がたくさん含まれている。なぜそれを避けなくてはならないのか?その答えは細菌だ。細菌汚染された肉や乳製品を食べると、流産の危険がある。穀類ではそうした心配はないので、妊娠中は穀類中心の食事をしたほうがよい。ところでつわりの毒物排除説に関しては、否定的なデータもある。スパイス類を摂取する頻度が高いほど、つわりが軽いという関係が認められたのだ。スパイス類の多くに発ガン性物質が含まれているから、これは意外な事実である。だがアジアを旅した人なら実感できるように、あの激辛カレーでは悪い細菌も生きられないはずだ。実際のところ、スパイスは悪玉どころか立派な善玉ななおだ。脳内鎮痛剤エンドルフィンの分泌をうながすことで、免疫システムの調節が促進され、病気にかかりにくくなるのである。これから妊娠・出産をしようという女性は、肉と乳製品を控えたほうがつわり防止によさそうだ。スコットランドでよく食べる、ポリッジというオートミールがゆはまさにうってつけ。さらにチリソースを一滴落としてぴりっとさせれば食も進むというものだ。
・地球の歴史全体を振り返ると、気候の激変はめずらしいことではない。氷河期という言葉は誰でも耳にしたことがあるだろう。ヨーロッパ北部全体が、断続的にではあるが分厚い氷でおおわれた時代だ。氷河期はおおよろ6万年周期で訪れており、そのあいだに温暖な気候の時代がはさまっている。いまはちょうど温暖な時期というわけだ。最後の氷河期が終わったのは約1万年前。このとき、徐々に温暖化していた気候が急激に寒冷に戻った期間があって、ヤンガードライアス期と呼ばれる。地球の平均気温はわずか50年で7度も上がった。それまでの温暖化で極地の氷が融けだし、海水面は90mも上昇した。それに比べると、いま騒がれている温暖化はずっとおとなしい。2080年までに予測される平均気温の上昇はせいぜい4度である。思い切りうしろに下がって状況を眺めると、現在の気象がいかにふつうでないかわかる。貝殻に含まれる炭素同位元素から分析すると、恐竜たちが死に絶えた6000万~4000万年前まえの間、地球の平均気温は約30度、いまの2倍も高かった。ヨーロッパや北アメリカはうっそうとした熱帯林で、ロンドンやパリ、ベルリンの中心部ではキツネザルに似た霊長類が木々の間を走り回り、むっとする湿地ではカバが水につかっていたのだ。長い時間軸で見ると、いまの寒冷な気候のほうがおかしいのだ。
・人類の歴史は長い。ヒトはチンパンジーやゴリラといったアフリカの大型類人猿と同じ科に属しているが、私たちの祖先が彼らから枝分かれしたのはおよそ600万年前。そこからは平坦な一本道というわけでは決してなく、途中で横道もたくさんできて、なかには何十万年と栄えたのちに絶滅したものもある。アウストラロピテクスの多くと、アフリカを出て東に向かい、遠く現在の北京にまで達した初期のホモ・エレクトス、ヨーロッパを中心に分布していたネアンデルタール人だ。私たち現生人類に続く系統も、何度となく絶滅の危機にさらされている。遺伝学的な研究から、すべての現生人類の血統をさかのぼると、約20万年前にアフリカにいた5000人の女性に行きつくことがわかっている。こんなにささやかな繁殖個体群は、途中で跡形もなく消えてもおかしくなかった。私たちはいま特権的な時代を生きている。それは系統のなかで現存する唯一の種ということだ。実は人類600万年の歴史のなかで、そんな特異な時代がはじまってまだ1万年しかたっていない。それ以前は必ず複数、最高で6種類の人類が共存していた。すでに絶滅しているものの、現生人類よりはるかに長く存在した種はたくさんある。なかには手を伸ばせば届きそうなぐらい、現生人類の時代のすぐ近くまで生きていた仲間もいるのだ。ヨーロッパで最後のネアンデルタール人が死んだのは、つい2万8000年前のこと。最後のホモ・エレクトスは6万年前より少しあとに中国で絶滅した。インドネシアのフローレス島では、やはりホモ・エレクトスの子孫にあたる小型の原人がつい1万2000年前まで生きていた。
・ネアンデルタール人の肌が白かったことは、最近発表されたDNA分析で明らかになった。バルセロナ大学の遺伝学者たちが、スペインのエル・シドロン洞窟から見つかった4万8000年前のネアンデルタール人の骨からDNAの抽出に成功した。そこに含まれているmcIrという遺伝子は、現代ヨーロッパ人も持っていて、メラニン色素の生成を抑えることで、肌の色を白くする働きがある。両親からともにこの遺伝子を受け継ぐと、日光に敏感な白い肌と赤毛の持ち主になる。赤毛のネアンデルタール人?意外なイメージだ。近年の遺伝子研究からは、現生人類、とくに北半球の人間に特徴的な突然変異を、ネアンデルタール人がほとんど持っていないこともわかっている。つまりネアンデルタール人は私たちの祖先ではなく、とても関係は違いが別種の人類ということだ。
・北アメリカで見つかったTレックスとマストドンのDNAサンプルを抽出したオーガンたちは、鳥(ニワトリとダチョウ)、霊長類(ヒト、チンパンジー、アカゲザル)、ウシ、イヌ、ラット、マウス、ゾウ、は虫類、両生類、魚のDNAと比較してみた。分析によって、まずマストドンはゾウの仲間であることがわかった。これは予想どおいの結果で、おかげで分析の信頼生も高まった。ほんとうの大発見はここからで、Tレックスはニワトリやダチョウにとても近いことが判明したのだ。統計的分析では区別ができないぐらい、三者の関係は近かった。さらにおもしろいことに、このグループにはは虫類のなかで唯一アリゲーター科のワニが属していた。ワニは恐竜が世をしのぶ仮の姿なのかもしれない。ただしワニでもクロコダイル科は歴史がとても古い。恐竜が生きていた時代にはすでに地球上にいた。
・身長が高い人ほど社会的、経済的に成功するというのはまぎれもない事実だ-ウォール街でもイギリスの金融市場でも、背が高い人ほど、同じ仕事でも金を多く稼いでいる。同様のことがIQでも当てはまりそうだ。実際、IQと社会的成功の相関関係を示す研究がいくつか発表されている。傷口に塩を塗り込むような話で申し訳ないが、美しい人は裕福になれるだけでなく、子宝にも恵まれる。私がヴロツワフ大学のボグスワフ・パウウォフスキーと共同で、ポーランドの医療データベースを分析したところ、背の高い男性ほど既婚率が高く、子供を持っている割合も多かった。
・ひとかどのことを成しとげる人物はメガネ・肥満のガリ勉タイプではなく、スポーツ万能で勉学優秀、そのうえ社交性もばつぐんというオールラウンド・プレーヤーであることがはっきりしたのだ。この結果はある意味それほど意外でもない。成功は成功から生まれるものだからだ。それにしても、「健全なる身体には健全なる精神が宿る」といういにしえからのことわざは、あまりにもそのまんまの意味ではないか。
<目次>
PartⅠ ヒトとヒトのつながり
第1章 貞節な脳(男と女)
浮気好きな種の脳は小さい・・大きな新皮質はメスのおかげ・・女の視覚は、男よりカラフル
第2章 ダンバー数(仲間同士)
集団サイズは新皮質の大きさに比例する・・気のおきないつながりは150人まで・・メンタライジング・・ネットワークは”3の倍数”で増える
第3章 親類や縁者の力(血縁)
共同体意識・・家族といっしょのほうが健康・・方言は共同体の会員証
第4章 ご先祖さまという亡霊(民族)
チンギス・ハーンの末裔?・・言語と遺伝子のネットワーク・・失われた民族の痕跡・・女たちを返せ?
PartⅡ つながりを生むもの
第5章 親密さの素(触れ合い・笑い・音楽)
やっしくさわって・・信頼を育む化学物質・・笑いの進化・・ヒトが音楽好きな理由
第6章 うわさ話は毛づくろい(言葉・物語)
言葉は、遠隔の毛づくろい・・母親ことばと音楽の起源・・女どうしのつながりが、言葉を発達させた・・夜、物語る効果
第7章 今夜、ひとり?(魅力)
恋人探しのルール・・魅力の秘密・・野心を調整する・・女の変化に気づいていない男たち
第8章 エスキモーのあいさつ(キス・匂い・リスク)
キスの進化論的な効用・・匂いの影響力・・もてるのはリスクをとる男
第9章 ずるいあなた(婚姻)
単婚のジレンマ・・メスが浮気して得なわけ・・愛の絆を深めにくい遺伝子
PartⅢ 環境や人類とのつながり
第10章 進化の傷跡(肌の色・体質)
ミルクとの愛憎関係・・高緯度とカルシウム・・肌の色を決めるビタミン・・赤ん坊は父親似と思いたい・・ややこしい性別
第11章 進化の邪魔をするやつはどいつだ?(進化と欲望)
病原体を防ぐ言語共同体・・つわりがあると良いこと・・死よりも大きな不安?・・中国が抱える時限爆弾
第12章 さよなら、いとこたち(絶滅の罠)
迫り来る悲劇・・乳香の教え・・マンモス絶滅の真実・・言語の大消滅時代・・それって心配すること?・・伝統的な社会も、地球にやさしいわけではなかった
第13章 こんなに近くてこんなに遠い(人類の起源)
伝説の小さな獣人・・二つの結論・・「人間らしさ」の起源・・ネアンデルタール人の肌は白かった
第14章 ダーウィン戦争(進化と創造)
デザインが、どうインテリジェント?・・進化戦争・・分子遺伝学は救世主?・・この骨は誰のもの?
PartⅣ 文化・倫理・宗教とのつながり
第15章 人間ならではの心って?(志向意識水準)
相手の心を読む・・ヒトと動物の「誤差」・・内なる限界・・不幸の確率
第16章 カルチャークラブに入るには(文化)
人間の文化・動物の文化・・ひっくりかえった常識・・高次元の文化・・シェイクスピアの六次志向意識水準
第17章 脳にモラルはあるのか?(道徳)
「トロッコ問題」を神経心理学で解く・・道徳と宗教の誕生・・類人猿にモラルはある?
第18章 進化が神を発見した(宗教)
宗教の進化生物学的な意味・・笑い、音楽、そして宗教・・信仰とダンバー数
第19章 頭を使って長生きしよう(健康・知性)
IQと健康と死の関係・・何て不公平な世の中・・成功は成功から生まれる・・知識の喜び
第20章 美しい科学(芸術)
ルネサンス的教養人・・詩人もまた科学者である・・ラテン語は捨てられ、科学は下り坂に
謝辞
解説-我らデジタルエイジの石器時代人
面白かった本まとめ(2012年上半期)
<今日の独り言>
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