「ケトン体が人類を救う」の購入はコチラ
「ケトン体が人類を救う」という本は、自ら糖質制限を行って糖尿病を克服した医師がその実体験の内容や、妊婦の糖尿病患者への糖質制限による克服、学会での糖質制限に対する非難やその誤解、現状の栄養学の常識が間違っていて低カロリーではなく低糖質が大切なこと、脂肪分解の代謝時に生まれるケトン体や、その糖質代謝ではなく脂肪代謝を活用したケトジェニックな生き方が健康であること等について分かりやすく説明したものです♪
この本の紹介があまりにも長くなってしまいましたので2つに分けていて、以下はパート1の続きのパート2となります。
パート1についはコチラをご覧ください♪
・私は糖尿病は人体の糖質過多に対する反抗、拒否反応であると考えています。この病態に対して、さまざまな薬が開発されていますが、根本的な問題は「人間はそんなに糖質をとってはいけない」ということなのだと思うのです。ですからこれを抜きに「糖質をとりながら糖尿病を治そう」などというのは馬鹿げた話だと思います。
・鳥浜貝塚(福井県若狭町)の発掘で出土したものから、縄文人が食べていた物を推理しました。(魚類30%、クルミ19%、獣類15%、ドングリ15%、貝類13%、クリ4%、ヒシ4%)この遺跡は通常では腐食してしまった残りにくい貴重な遺物が、水漬けの状態で良好に保存されていたため、「縄文のタイムカプセル」と呼ばれている縄文時代前期の貴重な遺跡です。何度かの発掘で、約5500年前の遺物層が約60cmの厚さで検出され、その中にドングリ、クルミなどナッツの種子層、魚骨やウロコなどの魚骨層、淡水産の貝殻の貝層が確認されました。その堆積状況から、秋に採取した森の食べ物を秋からふゆにかけて食べ、春には三方湖で魚や貝をとっていたこと、夏は若狭湾に回遊するマグロ、カツオ、ブリ、サワラなどの海水魚をとって食べていたことがわかり、季節に応じた食生活の様相が明らかとなりました。魚、獣、貝を合わせて58%と、ずいぶんたくさんの魚介類・肉類を食べていたことがわかります。また、堅いナッツ類が炭水化物の主要な部分を占めています。このころ特に多く食べられていたと思われるクルミには、糖質はなく、脂肪がほとんどです。ですから、実際上はタンパク質と脂肪で80%にもなります。炭水化物としては20%ぐらい含まれていますが、その中には食物繊維も多く、糖質はあるものの、現代人が食べているような瞬時に血糖値を上げるようなものはありません。過酷な環境にあったと思われるだけに、エネルギーの消耗も多く、この長い時代には、飢えとの闘いが主だったと思われ、この時期のほとんどのヒトは、ほぼケトン体だけで生きていたものと思われます。もちろん肥満やメタボなどには縁がなかったことでしょう。
・これまでの定説では、農耕が始まったのは、約1万~1万4000年前だと言われています。紀元前8000年~7000年ごろに、現在の北シリア、ヨルダン川のあたりにおいて組織的農耕が始まったとされています。そして組織的農耕が、さらに世界的に広がり定着したのは、約4000年前と考えられます。ですからそれ以前のヒト属はみな、狩猟・採集を中心に生活していたのです。農耕が始まる前の700万年間は、人類はみな糖質制限食であり、ヒトは進化に要した時間の大部分で、狩猟・採集生活をしていたことになります。人体には本来、穀物に依存して生きるような遺伝的システムはないのです。
・農耕が始まる前(糖質制限食)であれば恒常性が保たれていた食後血糖値も、玄米や全粒粉のパンによって緩やかながら上がるようになっていましたが、白米や白パンとなると、かなり乱れるようになってしまいます。江部康二医師によれば、700万年間ほぼ一定に保たれていた人類の血糖値変動幅は、農耕開始後に約2倍となり精製炭水化物摂取が始まったここ200年は、その幅は3倍となり、インスリンを大量・頻回に分泌せざるをえなくなったと言います。糖尿病の人が糖質を1人前摂取すると、未精製の穀物でさえも、食後血糖値は軽く200を超えてきます。この急峻な食後高血糖のことを「ブドウ糖スパイク」と呼び、動脈硬化が生じる元凶となります。さらに、精製炭水化物を摂取したときに、健康な人にでも生じる160~170ぐらいの食後高血糖の状態を江部医師は「ブドウ糖ミニスパイク」と名付けています。このブドウ糖ミニスパイクが知らず知らずのうちに積み重なって、生体の恒常性を攪乱し、アレルギー疾患を悪化させたり、生活習慣病のもととなったりしています。お寿司屋さんやパスタの料理人、ラーメン店店主などに重症糖尿病が多いのも、職業柄、こうしたミニスパイクを避けられないからなのです。しかもこうした激しい労働を強いられる方たちは「低カロリー食」を要求されると、バテてしまって仕事になりませんから、従来の糖尿病治療からは脱落してしまい、一層重症化して、悲劇を迎えてしまうのです。
・現在、世界に氾濫する生活習慣病の元凶は、この50年あまりの間に、急速に増大した精製炭水化物やジャンクフードによるグルコースミニスパイクとインスリン過剰分泌です。すでにWHOは、成人及び子どものための糖類の摂取に関するガイドライン(1日あたり砂糖にして小さじ6杯程度=25g、多くても総エネルギー摂取量の10%未満にすべきで、5%未満であればより効果的とする)を発表しています(2015年3月)。またアメリカでは、糖類のもたらす健康問題、社会への悪影響を「たばこや酒と共通している」として、「砂糖税」を導入せよとの議論も巻き起こっています。今後私たちが注意しなければならないのは、「脂肪量」ではなくて「糖質量」であり、具体的には白米を中心とした精製糖質と、急峻に血糖値を上げる砂糖入り飲料水です。厚生労働省が推し進める「主食を中心にしたバランスよい食事」「お米をたくさん食べることが基本」という考え方の是非をもう一度見直さなければならないでしょう。
・この日本人が大好きな白米ですが、じつは「日本人は昔からお米を食べていた」ということは嘘だとわかってきます。日本にヒトが住み着いて3万年くらいの時間が経っていて、縄文時代の終わりから弥生時代に米が伝わり、作られるようになるまでの過程は先に見てきたとおりですが、そうすると日本で米が作られるようになったのは、ほんの3000年くらい前のことです。しかし、それ以降も日本人がいつでも腹一杯、お米を食べていたかというと、そんなことはありません。江戸時代には、稲作はとくに盛んになりましたが、お米は今の貨幣のようなもので、武士が管理していて、農民、庶民が普通に食べられるものではありませんでした。200年くらい前になっても、庶民は米を食べられませんでした。北海道の屯田兵の食事にも麦や粟やひえが主体であって「お米を浮かべて食べた」という記録が残っています。明治時代には日清戦争で兵隊を集めるために「お米を1日6合食べさせる」という誘い文句で徴兵し、それが成功してたくさんの兵隊が集まったという逸話があることからも、当時の庶民にとっていかにコメが魅力的で、価値あるものであったかがわかります。とはいえ、つい最近までコメは生産量も低く、すべての国民が食べられるような量は作れませんでした。お米が日本中にいきわたって誰でも食べられるようになったのは、秋田の八郎潟の干拓が終わったころといいますから、1960年ごろのことです。多くの研究でだいたい第二次世界大戦後になってやっとコメが主食になったと言われています。白米を銀シャリと呼び、「腹いっぱい食べて死にたい」という言葉も残っているようにお米を食べることは庶民の憧れでした。麦や粟、ひえには「食べ過ぎて死にたい」などという言葉は残っていません。お米がいかに貴重なもので、庶民の手に入らないものであったかを知る言葉です。
・「若いころから、お米ばかりをたくさん食べていた人は、みんな若死をしてしまうということです。例えば東北地方の米どころの生活ならば、みんなそれです。なかでも、とくに一番短命なのは秋田県ですが、ここの米どころの人は、白いご飯を大食します。しかも塩辛い大根の味噌漬け、なすの味噌漬けなどをおかずにして、真っ白いご飯を驚くほどたくさん食べます。塩気がなかったら白いご飯を大食できるはずはありません。こういう食事を若いときからやってきた人は、みんな40歳ごろから、脳溢血で倒れます。結局これがそうした村の短命の原因です。」また近藤先生によると志摩の海女が長生きなわけは、志摩ではお米がとれないので、イモや麦を主食として大豆、野菜、魚、海藻などを食べるからだそうです。彼女たちが甘いお菓子が食べたいと言うから差し出すと、一つしか食べません。じつはのどから手が出るくらいほしいようなのですが、それを食べたら「アワビをとるとき、おなかが重苦しくてとれないから」といいます。海女の仕事を通して、お菓子が体によくないということを知っているのです。一方同じ海女でも輪島の海女は対照的に短命だったといいいます。理由として一寸二分づきの米を食べていることがあげられています。一寸二分づきというのは極度に精米した米で、白米そのものでした。
・沖永良部島の話では、島内に1か所だけ短命村があって訪ねてみます。するとほかのでは水田がなくイモと雑穀を主食にして食べているのに、このだけには水田があって昔から米をたくさん食べていたのです。その村の人々は短命でした。また山陰地方に米どころなのに長寿の村がありました。博士は自分の説が間違っているのかと思いその村を訪ねています。鳥取県の米どころです。ここで村民にどういうものを食べているのかと聞くと、なんと米どころなのに米のご飯は食べていないと言います。「ぜんぜんお米を食べないのですか?」「いや、決まった日には食べます。へいぜいはお米のご飯は食べていません」「なぜ」「米は売るために作っているのです。自分たちが食べるために作っているわけではありません」海藻や野菜はよく食べているようですが米は食べず主食はサツマイモと麦でした。その村には明治時代に村のおきてを書いた書物が見つかりました。「近頃は村民が皆ぜいたくになってきている。そして米がたくさんあるからと今まで昔から麦を食べてきた人たちまでが、お米ばかり食べるようになってきた。わが高麗村だけは、そういうぜいたくなまねをしてはならぬ。米はたくさんあっても売り物にし、村民は麦とイモを主食にせよ。そのかわり一年のうち次にかかげる日だけは米のごはんを食べてもよろしい」。その特定の日は合わせてⅠ年に10日くらいだったといいます。これらのたくさんの町や村を訪ね歩いてわかったことは、やはりお米をたくさん食べる村は短命であり、食べない村は長寿村だったということだと博士はまとめています。「日本人は昔から米を主食にしてきた」「和食は健康長寿のもとだ」という最近の糖尿病の権威たちの意見とはまったく違っていますね。
・アルツハイマー病の特徴の一つとして、脳にインスリン欠乏が起こることと、脳内でインスリン抵抗性が発生することがあります。アルツハイマー病の患者の脳ではインスリンの効きが極端に悪くなっているのです。ですからアルツハイマー病は「第3の糖尿病」とも言われるようになってきました。インスリンが使えないと、神経細胞はグルコース(ブドウ糖)を使えなくなりますから神経変性を起こし、記憶障害などの神経症状が出てくるようになります。ところが脳はケトン体もエネルギー源とすることが可能です。ですからアルツハイマー病を発症していったんグルコースが使えない状況に陥っても、ケトン体が供給されていれば神経細胞はその活性を保てるのです。実際にアルツハイマー病の患者にココナッツオイルを食べさせてケトン体を測ると、その値は上昇しており、ココナッツオイルの食べ方を工夫することで安定したケトン体の濃度を保てるようになります。ケトン体はグルコースに代わるエネルギー源であるばかりか、むしろケトン体のほうがすぐれた脳のエネルギー源であることも明らかにされつつあるのです。
・ココナッツオイルは、炭素数12の中鎖脂肪酸である「ラウリン酸」を主体としています。中鎖脂肪酸は、長鎖脂肪酸とは異なり、小腸から門脈を経由して直接肝臓に入り、そこで代謝されてケトン体になります。長鎖脂肪酸と比べて約5倍も速く分解されてエネルギーになるのです。食事療法だけで血清ケトン体を上げるには、等質をとらないようにしなければなりませんが、ケトン体をエステル型(脂肪酸と結合している形)で摂取すると、それだけでも血中ケトン体の濃度を上げることができるのです。このようにアルツハイマー病にココナッツオイルをはじめとしたケトン体を利用する治療が始まっています。もともとはてんかん発作の治療に対して1920年代に「ケトン食」という高脂肪食が使われていた時期があったのですが、その後てんかんには効果的な薬剤が開発されたこともあって、すっかり消えてしまいました。ところが1994年ごろから重症てんかんで薬剤が効かないものに対してもケトン食の効果が報告されるようになり、ふたたび大切な治療法として注目されるようになりました。私が2014年、日本病態栄養学会で胎児のケトン体の高値を発表していたときにも、同じセクションで何演題もケトン食による小児の重症てんかん治療効果の発表がされていました。そのときの目標ケトン体値は4000μmol/Lくらいに置いていましたから、まじめに医学を研究していたら「ケトン体が怖いもの」なんてことをいう医者がいたら無知でしかないと思ったものです。このようにケトン体は、脳神経にやさしく親和性のある大切なエネルギー源ですし、またかつて今のように糖質過多でなかった時代には、ケトン体が脳にとっても「メインのエネルギー源」だったと思われます。積極的にケトン体を使う生き方が、脳神経のアンチエイジング、活性化に役立つ可能性を秘めていると思います。
・人体の正常な細胞は、酸素があれば酸素を使ってエネルギーを生成します。これに対してがん細胞は、嫌気性解糖系(酸素を使わないでエネルギーを産生する)がこう進していて、ミトコンドリアを使う酸素を使ったエネルギー代謝(ミトコンドリアの酸化的リン酸化)は使いません。この2つの代謝の効率を比べると、1つのグルコース(ブドウ糖)から嫌気性解糖系では2分子のATPしか産生されませんが、酸素を使う酸化的リン酸化では、36分子のATPを産生できます。したがってミトコンドリアで酸素を使って効率的にエネルギー産生をするほうが、細胞の増殖にもメリットがあると考えられるのに、なぜがん細胞は酸化的リン酸化によるエネルギー産生を使わないのか、長い間謎になっています。がん細胞における嫌気性解糖系のこう進を「ワールブルグ効果」と言います。1920年代にドイツのオットー・ワールブルグ博士らがこれらのことを発表したからです。この原因は今までよくわかっていませんでしたが、最近の研究ではこの性質こそが、がん細胞の増殖のカギを握っていると言われています。さてがん細胞は、そのエネルギー産生を嫌気性解糖に依存しているため、正常細胞の何十倍ものグルコース(ブドウ糖)を取り込む必要があります。またがん細胞内では嫌気性解糖によって大量の乳酸が産生され、これががん細胞の増殖や転移の促進に関与しているという説もあります。「甘いものはがんの栄養になる」と言われ始めていますが、実際にグルコース、つまり砂糖の多いお菓子や食品を多く摂取することは、がん細胞の増殖や転移を促進します。ですから、砂糖を多く使った食品の摂取を少なくするだけで、がん細胞の増殖を抑える効果が期待できるのです。じつは、がんの転移を調べるPET検査では、がんのこの「ブドウ糖を大量に取り込む」という性質を利用しています。この検査では、フッ素の同位体で目印をつけたブドウ糖を注射し、この薬剤ががん組織に高濃度に集まる性質を利用して、がんの転移の位置や広がりを見つけているのです。このように嫌気性代謝とブドウ糖の存在が、がん細胞の生命線になっているのですから、がん細胞がブドウ糖を利用できなくすれば、正常細胞にダメージを与えずに、がん細胞だけを死滅させることができると考えられます。
・がん細胞のこの性質を利用して、現在食事の糖分を減らして、中鎖脂肪酸トリグリセリドを多く摂取する「中鎖脂肪ケトン食」を実施することがおこなわれています。ブドウ糖を与えないで、がん細胞だけを兵糧攻めにしようというわけです。このようなケトン食療法が、進行がんに対して有効性を示したという研究がすでにあり、これからますますの発展が期待できます。今使われている多くの抗ガン剤と比べれば、副作用がない点は大変魅力的です。血液中のケトン体濃度が高いほど、がん細胞の増殖抑制効果があったと報告されています。
・ハタイクリニックの西脇俊二先生は「ガンが消える!」(KKベストセラーズ)という著書の中で、これに超高濃度ビタミンCの点滴を組み合わせるという方法で、余命3か月と言われるほど全身に転移があった進行がんの患者さんのがんを消しています。とくに結腸がん、膀胱がん、腎臓がん、乳がんの患者には、有意な差が認められるそうです。多摩南部地域病院の古川健司先生も、「長高濃度ビタミンC点滴療法」に取り組んでいます。がん細胞の大好物はブドウ糖です。ビタミンCは分子構造がブドウ糖に似ているので、がんが間違えて取り込みます。ところがビタミンCはがん細胞の中に入ると、過酸化水素という活性酸素を発生してがん細胞をやっつけてくれるのです。問題はビタミンCが体内に4時間しかとどまらないことです。そういう性質なのですが、食事で糖質をカットするとどうなるでしょう?がん細胞は好物の糖質(ブドウ糖)がゼロなので、いつもよりビタミンCを積極的に取り込もうとするはずです。つまり飛躍的な効果が期待できるのです。ちなみにこの場合の糖質制限は1日15g以下です。この数値はてんかんの治療法としてかいはつされたもので「スーパーケトジェニック(ケトン食)」と呼びます。古川先生はさらに独自に研究を重ね、がん患者さん向けに、2日でケトジェニック状態になるメニューを開発中です。体力の衰えたがん患者さん向けなので、タンパク質3割、脂肪7割とし、脂肪分はココナッツオイルと亜麻仁油で多くをまかなうところが特徴です。ケトジェニック状態になって、ケトン体がどんどん出るようになれば、体の免疫力も上がっていくことが期待できます。
・糖質過多の生活の対極にある「ケトジェニックな生活」の効果は、糖尿病や肥満、メタボにとどまらず、アトピーやアレルギー疾患、歯周病、認知症、加齢による変化への応用など、多方面にわたると報告されています。ヒトはこれまでの歴史を通じて、これほど精製された糖質を摂取してきたことはないのです。簡単に手に入る砂糖入り飲料と、多彩な菓子類。何よりも、主食とするコメやパンやパスタは糖質だらけであって、それに組み合わせる副菜も、ポテトや根菜など糖質のオンパレードです。安く手に入る原料で大量生産ができ、口に入れれば糖質は中毒性があるので、リピーターを作るのも簡単です。それでも、自分の足で歩き、外気温に左右されていた時代には、たくさんの代謝エネルギーが使われましたが、今は車や電車で移動して、快適なエアコン頼みの生活です。体が多すぎる糖質に静かな悲鳴を上げ始めていることに早く気づかなければなりません。
・ケトジェニックな生き方は、もっとすごいことを引き起こします。糖尿病が食事で治ってしまうことは、医療の巨大転換を意味するからです。たとえば、薬を使わないで糖尿病が治るので、医療費が様変わりします。今の日本の医療費は40兆円にもなろうとしています。この中で薬剤費が占める割合は10兆円ぐらいと言われています。糖質制限をすると、透析やインスリンなどをはじめとした糖尿病関係をはじめ、メタボの解消から高血圧、脂肪肝などの薬剤費が激減する可能性があります。透析には年間2兆円がかかっているのです。アルツハイマー病や認知症、がん治療にも効果が期待できますから、おそらくは5~10兆円くらいの削減効果があると思います。食事で多くの病気が治ったら、その削減で生じた予算を、お母さんと子どもたちのために使えるとよいと思います。今の日本、恵まれているようにも見えますが、一方では余裕のない生活の母子もたくさんいます。また、いろいろな心配から子どもを産まない人も増えています。ひるがえって、先進国では唯一、子どもがたくさん産まれている国、フランスでは母子手当が本当に充実していて、たとえ結婚していなくても、お母さんは安心して赤ちゃんを産めるそうです。たくさんの赤ちゃんが生まれる国は未来が明るいと思います。不適切な治療をして病気を悪化させ、医療費を無駄にするよりも、適切な食事で病気を治して、余ったお金で新しい命を育むフォローをしたほうが、国にとってもそれぞれの人たちにとっても、ずっといいに決まっていますよね。
・ケトン体をエネルギー源にして生きることをケトジェニックな生き方と言います。これは順天堂大学の白澤卓二教授、ナグモクリニックの南雲吉則先生、日本機能性医学研究所の斎藤糧三先生を中心にしたケトジェニックダイエットグループが提唱しています。その考え方をごく簡単に紹介すると、積極的にケトン体をとって脂肪を燃やし、これをエネルギー源にするというものです。肉を食べて脂肪を燃やすというわけです。斎藤糧三先生によれば
1)カロリー計算はしない
2)糖質(炭水化物)はとらない
3)タンパク質を1日60gとる
4)野菜で食物繊維とミネラル(マグネシウムや亜鉛)をとる
5)ココナッツオイルを1日大さじ1~2杯とる
・沖縄県那覇市のこくらクリニック院長・渡辺信幸先生が提唱しているMEC食は離島での医療の経験から生まれた考え方で、肉(MEAT)、卵(EGG)、そしてチーズ(CHEESE)を積極的にとることを勧めています。この3つの食材にはタンパク質に脂質、ミネラルやビタミンも豊富に含まれているからです。この3つの頭文字をとって「MEC食」と名付けられています。MEC食は同時に「食事をよく噛むこと」を提唱しています。食事を口に入れたら30回よく噛むことが大切とされています。MEC食と30回噛むことをまとめて「MEC&KK(カムカム)30」と呼んでいます。1日に摂取する目安としては、
●肉200g(豚でも鶏でも牛でも魚でもよい)
●卵4個(6個でもよい)
●チーズ120g(6ピースのチーズ6個分)
です。これらを食べてよく噛むこと。一度に30回噛みましょう。主食や糖質は控えた方がよいとされますが、とはいえ、これら以外の食品を追加することは自由です。
・京都高雄病院の江部康二先生は3種類の糖質制限の食事法を提唱しています。
①スーパー糖質制限食:3食とも糖質を制限して主食をとらない。
②スタンダード糖質制限食:3食のうち2食の糖質を制限して、1食だけ(夕食以外)主食をとる
③プチ糖質制限食:3食のうち1食(基本的に夕食)だけ糖質を制限し、主食をとらない。
この3つです。①は糖尿病、ダイエットに効果、②も「カロリー制限」をするより糖尿病やダイエットに効果があり、③は軽いダイエット効果が見込め糖尿病には向きません、このスーパーとかスタンダードという方法は、糖質制限をやっている方には、もっともポピュラーな方法です。そしてスーパーこそが糖尿病治療にももっとも効果があるでしょう。
・これらのいずれのグループにも共通していることは、低糖質、高タンパク質の食事です。ローカーボ、ハイプロテインとも言います。それぞれ強調する点が少しずつ違いますが、糖質を制限するという点では一致しています。
・ほかにも「オーソモレキュラー療法」という栄養療法で糖質制限と高タンパク質食に不足する栄養素をサプリメントで補給する考え方で治療を進めている新宿溝口クリニックの溝口徹先生、「断糖食」をすすめる兵庫県の崇高クリニックの荒木裕先生、「糖質ゼロ」を勧める釜地豊秋先生、ケトン食をがん治療に勧める銀座東京クリニックの福田一典先生、低インスリン生活を勧める郡山市のあさひ内科クリニックの新井圭輔先生など、たくさんの先生方がご活躍しています。これらすべての治療のベースは「糖質を下げること」「低インスリンを維持すること」「ケトン体エンジンを使うこと」にあり、このことで多くの患者さんを救っているのです。さらにこういった主張はこれまで書籍での発表が中心でしたが、今はインターネット、SNSの時代です。多くの患者さんはネット経由で糖質制限のことを知り、自らもネット上でブログを作ったり掲示板に投稿するなどして活発に意見交換をして知識を得ています。
・Facebookでは私も関わって2014年3月に「糖質制限」というグループが立ち上がりました。これを指導したのは品川雅也さん。自ら大幅なダイエットに成功した今やトレーナー顔負けの筋肉体の管理人です。2014年3月末に呼びかけて、1年半で会員数8000人を突破した非公開グループで、さらにこの非公開の中心グループのほかに、公開の小グループや、非公開の小グループの数々を携えて成長しており、グループ総数は30以上、総会員数は4万5千人にもなります。どんなグループがあるかといえば、「糖質制限ダイエット」「糖質制限レシピ」「糖質制限グルメ」「糖質制限スイーツ」などから、「スポーツ」「肉」「魚」「卵」「マヨネーズ」「ココナッツオイル」「スタイル」「Ⅰ型糖尿病」「Ⅱ型糖尿病」、また栄養士や看護師それぞれの専門家もあったり「犬部「猫部」もあります。英語版の専門ページや「子育て」や「離乳食」「低糖質企業懇話会」「糖質制限節約塾」などや「低糖美酒」「禁煙」「禁酒」「ガン」というグループもあります。ここではそれぞれのグループに責任管理人がいて、相互に交流し合いながら連日活発な意見交換をしています。また地域ごとにも、北海道、北陸、千葉、神戸んどのグループもできており、それぞれの場所でオフ会が開かれています。積極的で自発的なこういった集団は、MEC食グループでも会員数は4000人を数え、「沖縄MECの会」など、どんどん増え続けています。そのメンバーには、医師や歯科医師、鍼灸師、管理栄養士、看護師、助産師など医療関係の方々から、食品、料理関係の専門の方、トレーナー、スポーツ系の方々、糖尿病、肥満などで悩む患者さんたち・・・etc.と、じつに多彩で多才な人たちが集まっています。ですからこの中に目的を持って参加すると、今まで一人でいた方たちが、多くの方々とつながってその声を聴きながら実践していくことになり、じつに確実に糖質制限やMEC食の方法をモノにして、健康体を取り戻すことができるのです。
・ブログといえば、何といっても江部康二先生の「ドクター江部の糖尿病徒然日記」をまず取り上げなければならないでしょう。全国で1万5千人を超える方が毎日見ている人気ブログは、糖質制限普及の先頭を行く牽引車です。おそらく糖質制限の世界に入った方であれば、誰もが一度はお世話になっていて、毎日参考にしている方が多い人気のブログです。しかも、質問コメントには必ず迅速にお返事をしてくれる江部先生の真摯な姿勢。これが間違いなく人気の要因の一つでしょう。しかも今までの発言がすべて整理されていて、いつでもそれを参照することができ、糖質制限に関する知識の百科事典になっています。
・ベストセラー「炭水化物が人類を滅ぼす」を書いて糖質制限ブームをさらに盛り上げた練馬光が丘病院の夏井睦先生は、専門の「傷の湿潤治療」をこなしながら、3万人を超える読者のいる「新しい創傷治療」というホームページを運営。ホームページの中では糖質制限についても頻繁に言及し、意見交換や多方面にわたる考察を展開、また全国の糖質制限レストランや医療機関を紹介したり、オフ会にあたる「豚皮揚げを食べる会」を全国で開いていて、熱烈なファンの多いサイトとなっています。
・「低糖質ダイエットは危険なのか?中年おやじドクターの実践検証結果報告」というブログを運営しているカルピンチョ先生も人気です。すごく勉強になるブログで、私もいつも、いろいろ教えていただいています。超専門的な医師(正体は明かしていませんが)が、かなり深く掘り下げたブログを公開して、読者の質問に答えてくれるのはすごいことです。
・確かに今、日本でそして世界で、すべての人口を糖質制限とケトン食でまかなうことは難しいでしょう。穀物や糖質が現在の人類を支えていることは否定できません。私は、誰もがケトジェニックな暮らしにすべきだと考えているわけではありません。何より糖尿病の方、肥満や生活習慣病に悩んでいる方、がんなどがあってよくならない方や現状に疑問を持っている方に、ケトジェニックな生活を始めることをお勧めしているのです。現状で問題なく、満足している方は、従来どおりお過ごしいただけたらよいとも思っています。
・この本では、実にたくさんのことを書いてきました。どれも、私がどうしても読者の方々にお伝えしたいことばかりです。最後にもう一度、まとめとしてポイントを書いておきますから、覚えておいてください。
●糖質だけが血糖値を上げます。
●カロリーと血糖値には、何の関係もありません(これはとっても大事!!)。
●「食品成分表」には、血糖値を上げる「糖質」という項目がありません。
●「食品交換表」は何も交換せずに、炭水化物を「50~60%」という固定した割合で摂取せざるをえなくしています。
●やせたければ「脂肪」をとりなさい、これこそが真実です。
●絨毛-胎盤には、高濃度のケトン体が存在します。
●胎児はケトン体で生きています。
●妊娠中のコレステロール高値と中性脂肪高値は、胎児のためにあります。
●新生児もケトン体で生きています。
●妊娠糖尿病は、胎児による「タンパク質と脂肪の要求」のあらわれで、「糖質は不要」という病態です。
●糖質制限で、妊娠糖尿病も、Ⅰ型・Ⅱ型糖尿病も管理できます。
●ケトン体には、毒性はありません。
●ケトン体で生きることこそ、長寿・健康の道です。
●がん細胞には、ブドウ糖が不可欠ですが、ケトン体は利用できません。
●糖尿病ケトアシドーシスは、糖尿病性アシドーシスなのです。
●ヒトの進化の歴史では、直立2足歩行を始めたことでサルの先祖と分かれ、道具の使用、火の使用、そして肉食による脳の巨大化が始まり、絶滅を免れました。
まる今ではケトン体を利用した「ケトジェニックな生き方」が人気で、SNSの世界でも広がっています。
●ケトジェニックな生き方は、健康で長寿の道です。これこそ人類を救います。
●アメリカ糖尿病学会は、すでに糖質制限食を、糖尿病の治療の選択肢として認めています。
・医学界の遅れに対し、食品業界では、糖質ゼロ麺を開発した紀文食品をはじめ、ローソンで販売されている鳥越製粉のふすまパン、そして糖質オフ飲料やアイスクリーム、お菓子、ケーキにいたるまで、シャトレーゼやグリコ、高梨乳業などが次々と開発に参入して商品が生まれています。清酒や餃子、さらにはハンバーガーまでもが作られるようになりました。喜ばしい限りです。こんな動きがもっと広がっていってほしいと思います。
良かった本まとめ(2016年下半期)
<今日の独り言>
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「ケトン体が人類を救う」という本は、自ら糖質制限を行って糖尿病を克服した医師がその実体験の内容や、妊婦の糖尿病患者への糖質制限による克服、学会での糖質制限に対する非難やその誤解、現状の栄養学の常識が間違っていて低カロリーではなく低糖質が大切なこと、脂肪分解の代謝時に生まれるケトン体や、その糖質代謝ではなく脂肪代謝を活用したケトジェニックな生き方が健康であること等について分かりやすく説明したものです♪
この本の紹介があまりにも長くなってしまいましたので2つに分けていて、以下はパート1の続きのパート2となります。
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・私は糖尿病は人体の糖質過多に対する反抗、拒否反応であると考えています。この病態に対して、さまざまな薬が開発されていますが、根本的な問題は「人間はそんなに糖質をとってはいけない」ということなのだと思うのです。ですからこれを抜きに「糖質をとりながら糖尿病を治そう」などというのは馬鹿げた話だと思います。
・鳥浜貝塚(福井県若狭町)の発掘で出土したものから、縄文人が食べていた物を推理しました。(魚類30%、クルミ19%、獣類15%、ドングリ15%、貝類13%、クリ4%、ヒシ4%)この遺跡は通常では腐食してしまった残りにくい貴重な遺物が、水漬けの状態で良好に保存されていたため、「縄文のタイムカプセル」と呼ばれている縄文時代前期の貴重な遺跡です。何度かの発掘で、約5500年前の遺物層が約60cmの厚さで検出され、その中にドングリ、クルミなどナッツの種子層、魚骨やウロコなどの魚骨層、淡水産の貝殻の貝層が確認されました。その堆積状況から、秋に採取した森の食べ物を秋からふゆにかけて食べ、春には三方湖で魚や貝をとっていたこと、夏は若狭湾に回遊するマグロ、カツオ、ブリ、サワラなどの海水魚をとって食べていたことがわかり、季節に応じた食生活の様相が明らかとなりました。魚、獣、貝を合わせて58%と、ずいぶんたくさんの魚介類・肉類を食べていたことがわかります。また、堅いナッツ類が炭水化物の主要な部分を占めています。このころ特に多く食べられていたと思われるクルミには、糖質はなく、脂肪がほとんどです。ですから、実際上はタンパク質と脂肪で80%にもなります。炭水化物としては20%ぐらい含まれていますが、その中には食物繊維も多く、糖質はあるものの、現代人が食べているような瞬時に血糖値を上げるようなものはありません。過酷な環境にあったと思われるだけに、エネルギーの消耗も多く、この長い時代には、飢えとの闘いが主だったと思われ、この時期のほとんどのヒトは、ほぼケトン体だけで生きていたものと思われます。もちろん肥満やメタボなどには縁がなかったことでしょう。
・これまでの定説では、農耕が始まったのは、約1万~1万4000年前だと言われています。紀元前8000年~7000年ごろに、現在の北シリア、ヨルダン川のあたりにおいて組織的農耕が始まったとされています。そして組織的農耕が、さらに世界的に広がり定着したのは、約4000年前と考えられます。ですからそれ以前のヒト属はみな、狩猟・採集を中心に生活していたのです。農耕が始まる前の700万年間は、人類はみな糖質制限食であり、ヒトは進化に要した時間の大部分で、狩猟・採集生活をしていたことになります。人体には本来、穀物に依存して生きるような遺伝的システムはないのです。
・農耕が始まる前(糖質制限食)であれば恒常性が保たれていた食後血糖値も、玄米や全粒粉のパンによって緩やかながら上がるようになっていましたが、白米や白パンとなると、かなり乱れるようになってしまいます。江部康二医師によれば、700万年間ほぼ一定に保たれていた人類の血糖値変動幅は、農耕開始後に約2倍となり精製炭水化物摂取が始まったここ200年は、その幅は3倍となり、インスリンを大量・頻回に分泌せざるをえなくなったと言います。糖尿病の人が糖質を1人前摂取すると、未精製の穀物でさえも、食後血糖値は軽く200を超えてきます。この急峻な食後高血糖のことを「ブドウ糖スパイク」と呼び、動脈硬化が生じる元凶となります。さらに、精製炭水化物を摂取したときに、健康な人にでも生じる160~170ぐらいの食後高血糖の状態を江部医師は「ブドウ糖ミニスパイク」と名付けています。このブドウ糖ミニスパイクが知らず知らずのうちに積み重なって、生体の恒常性を攪乱し、アレルギー疾患を悪化させたり、生活習慣病のもととなったりしています。お寿司屋さんやパスタの料理人、ラーメン店店主などに重症糖尿病が多いのも、職業柄、こうしたミニスパイクを避けられないからなのです。しかもこうした激しい労働を強いられる方たちは「低カロリー食」を要求されると、バテてしまって仕事になりませんから、従来の糖尿病治療からは脱落してしまい、一層重症化して、悲劇を迎えてしまうのです。
・現在、世界に氾濫する生活習慣病の元凶は、この50年あまりの間に、急速に増大した精製炭水化物やジャンクフードによるグルコースミニスパイクとインスリン過剰分泌です。すでにWHOは、成人及び子どものための糖類の摂取に関するガイドライン(1日あたり砂糖にして小さじ6杯程度=25g、多くても総エネルギー摂取量の10%未満にすべきで、5%未満であればより効果的とする)を発表しています(2015年3月)。またアメリカでは、糖類のもたらす健康問題、社会への悪影響を「たばこや酒と共通している」として、「砂糖税」を導入せよとの議論も巻き起こっています。今後私たちが注意しなければならないのは、「脂肪量」ではなくて「糖質量」であり、具体的には白米を中心とした精製糖質と、急峻に血糖値を上げる砂糖入り飲料水です。厚生労働省が推し進める「主食を中心にしたバランスよい食事」「お米をたくさん食べることが基本」という考え方の是非をもう一度見直さなければならないでしょう。
・この日本人が大好きな白米ですが、じつは「日本人は昔からお米を食べていた」ということは嘘だとわかってきます。日本にヒトが住み着いて3万年くらいの時間が経っていて、縄文時代の終わりから弥生時代に米が伝わり、作られるようになるまでの過程は先に見てきたとおりですが、そうすると日本で米が作られるようになったのは、ほんの3000年くらい前のことです。しかし、それ以降も日本人がいつでも腹一杯、お米を食べていたかというと、そんなことはありません。江戸時代には、稲作はとくに盛んになりましたが、お米は今の貨幣のようなもので、武士が管理していて、農民、庶民が普通に食べられるものではありませんでした。200年くらい前になっても、庶民は米を食べられませんでした。北海道の屯田兵の食事にも麦や粟やひえが主体であって「お米を浮かべて食べた」という記録が残っています。明治時代には日清戦争で兵隊を集めるために「お米を1日6合食べさせる」という誘い文句で徴兵し、それが成功してたくさんの兵隊が集まったという逸話があることからも、当時の庶民にとっていかにコメが魅力的で、価値あるものであったかがわかります。とはいえ、つい最近までコメは生産量も低く、すべての国民が食べられるような量は作れませんでした。お米が日本中にいきわたって誰でも食べられるようになったのは、秋田の八郎潟の干拓が終わったころといいますから、1960年ごろのことです。多くの研究でだいたい第二次世界大戦後になってやっとコメが主食になったと言われています。白米を銀シャリと呼び、「腹いっぱい食べて死にたい」という言葉も残っているようにお米を食べることは庶民の憧れでした。麦や粟、ひえには「食べ過ぎて死にたい」などという言葉は残っていません。お米がいかに貴重なもので、庶民の手に入らないものであったかを知る言葉です。
・「若いころから、お米ばかりをたくさん食べていた人は、みんな若死をしてしまうということです。例えば東北地方の米どころの生活ならば、みんなそれです。なかでも、とくに一番短命なのは秋田県ですが、ここの米どころの人は、白いご飯を大食します。しかも塩辛い大根の味噌漬け、なすの味噌漬けなどをおかずにして、真っ白いご飯を驚くほどたくさん食べます。塩気がなかったら白いご飯を大食できるはずはありません。こういう食事を若いときからやってきた人は、みんな40歳ごろから、脳溢血で倒れます。結局これがそうした村の短命の原因です。」また近藤先生によると志摩の海女が長生きなわけは、志摩ではお米がとれないので、イモや麦を主食として大豆、野菜、魚、海藻などを食べるからだそうです。彼女たちが甘いお菓子が食べたいと言うから差し出すと、一つしか食べません。じつはのどから手が出るくらいほしいようなのですが、それを食べたら「アワビをとるとき、おなかが重苦しくてとれないから」といいます。海女の仕事を通して、お菓子が体によくないということを知っているのです。一方同じ海女でも輪島の海女は対照的に短命だったといいいます。理由として一寸二分づきの米を食べていることがあげられています。一寸二分づきというのは極度に精米した米で、白米そのものでした。
・沖永良部島の話では、島内に1か所だけ短命村があって訪ねてみます。するとほかのでは水田がなくイモと雑穀を主食にして食べているのに、このだけには水田があって昔から米をたくさん食べていたのです。その村の人々は短命でした。また山陰地方に米どころなのに長寿の村がありました。博士は自分の説が間違っているのかと思いその村を訪ねています。鳥取県の米どころです。ここで村民にどういうものを食べているのかと聞くと、なんと米どころなのに米のご飯は食べていないと言います。「ぜんぜんお米を食べないのですか?」「いや、決まった日には食べます。へいぜいはお米のご飯は食べていません」「なぜ」「米は売るために作っているのです。自分たちが食べるために作っているわけではありません」海藻や野菜はよく食べているようですが米は食べず主食はサツマイモと麦でした。その村には明治時代に村のおきてを書いた書物が見つかりました。「近頃は村民が皆ぜいたくになってきている。そして米がたくさんあるからと今まで昔から麦を食べてきた人たちまでが、お米ばかり食べるようになってきた。わが高麗村だけは、そういうぜいたくなまねをしてはならぬ。米はたくさんあっても売り物にし、村民は麦とイモを主食にせよ。そのかわり一年のうち次にかかげる日だけは米のごはんを食べてもよろしい」。その特定の日は合わせてⅠ年に10日くらいだったといいます。これらのたくさんの町や村を訪ね歩いてわかったことは、やはりお米をたくさん食べる村は短命であり、食べない村は長寿村だったということだと博士はまとめています。「日本人は昔から米を主食にしてきた」「和食は健康長寿のもとだ」という最近の糖尿病の権威たちの意見とはまったく違っていますね。
・アルツハイマー病の特徴の一つとして、脳にインスリン欠乏が起こることと、脳内でインスリン抵抗性が発生することがあります。アルツハイマー病の患者の脳ではインスリンの効きが極端に悪くなっているのです。ですからアルツハイマー病は「第3の糖尿病」とも言われるようになってきました。インスリンが使えないと、神経細胞はグルコース(ブドウ糖)を使えなくなりますから神経変性を起こし、記憶障害などの神経症状が出てくるようになります。ところが脳はケトン体もエネルギー源とすることが可能です。ですからアルツハイマー病を発症していったんグルコースが使えない状況に陥っても、ケトン体が供給されていれば神経細胞はその活性を保てるのです。実際にアルツハイマー病の患者にココナッツオイルを食べさせてケトン体を測ると、その値は上昇しており、ココナッツオイルの食べ方を工夫することで安定したケトン体の濃度を保てるようになります。ケトン体はグルコースに代わるエネルギー源であるばかりか、むしろケトン体のほうがすぐれた脳のエネルギー源であることも明らかにされつつあるのです。
・ココナッツオイルは、炭素数12の中鎖脂肪酸である「ラウリン酸」を主体としています。中鎖脂肪酸は、長鎖脂肪酸とは異なり、小腸から門脈を経由して直接肝臓に入り、そこで代謝されてケトン体になります。長鎖脂肪酸と比べて約5倍も速く分解されてエネルギーになるのです。食事療法だけで血清ケトン体を上げるには、等質をとらないようにしなければなりませんが、ケトン体をエステル型(脂肪酸と結合している形)で摂取すると、それだけでも血中ケトン体の濃度を上げることができるのです。このようにアルツハイマー病にココナッツオイルをはじめとしたケトン体を利用する治療が始まっています。もともとはてんかん発作の治療に対して1920年代に「ケトン食」という高脂肪食が使われていた時期があったのですが、その後てんかんには効果的な薬剤が開発されたこともあって、すっかり消えてしまいました。ところが1994年ごろから重症てんかんで薬剤が効かないものに対してもケトン食の効果が報告されるようになり、ふたたび大切な治療法として注目されるようになりました。私が2014年、日本病態栄養学会で胎児のケトン体の高値を発表していたときにも、同じセクションで何演題もケトン食による小児の重症てんかん治療効果の発表がされていました。そのときの目標ケトン体値は4000μmol/Lくらいに置いていましたから、まじめに医学を研究していたら「ケトン体が怖いもの」なんてことをいう医者がいたら無知でしかないと思ったものです。このようにケトン体は、脳神経にやさしく親和性のある大切なエネルギー源ですし、またかつて今のように糖質過多でなかった時代には、ケトン体が脳にとっても「メインのエネルギー源」だったと思われます。積極的にケトン体を使う生き方が、脳神経のアンチエイジング、活性化に役立つ可能性を秘めていると思います。
・人体の正常な細胞は、酸素があれば酸素を使ってエネルギーを生成します。これに対してがん細胞は、嫌気性解糖系(酸素を使わないでエネルギーを産生する)がこう進していて、ミトコンドリアを使う酸素を使ったエネルギー代謝(ミトコンドリアの酸化的リン酸化)は使いません。この2つの代謝の効率を比べると、1つのグルコース(ブドウ糖)から嫌気性解糖系では2分子のATPしか産生されませんが、酸素を使う酸化的リン酸化では、36分子のATPを産生できます。したがってミトコンドリアで酸素を使って効率的にエネルギー産生をするほうが、細胞の増殖にもメリットがあると考えられるのに、なぜがん細胞は酸化的リン酸化によるエネルギー産生を使わないのか、長い間謎になっています。がん細胞における嫌気性解糖系のこう進を「ワールブルグ効果」と言います。1920年代にドイツのオットー・ワールブルグ博士らがこれらのことを発表したからです。この原因は今までよくわかっていませんでしたが、最近の研究ではこの性質こそが、がん細胞の増殖のカギを握っていると言われています。さてがん細胞は、そのエネルギー産生を嫌気性解糖に依存しているため、正常細胞の何十倍ものグルコース(ブドウ糖)を取り込む必要があります。またがん細胞内では嫌気性解糖によって大量の乳酸が産生され、これががん細胞の増殖や転移の促進に関与しているという説もあります。「甘いものはがんの栄養になる」と言われ始めていますが、実際にグルコース、つまり砂糖の多いお菓子や食品を多く摂取することは、がん細胞の増殖や転移を促進します。ですから、砂糖を多く使った食品の摂取を少なくするだけで、がん細胞の増殖を抑える効果が期待できるのです。じつは、がんの転移を調べるPET検査では、がんのこの「ブドウ糖を大量に取り込む」という性質を利用しています。この検査では、フッ素の同位体で目印をつけたブドウ糖を注射し、この薬剤ががん組織に高濃度に集まる性質を利用して、がんの転移の位置や広がりを見つけているのです。このように嫌気性代謝とブドウ糖の存在が、がん細胞の生命線になっているのですから、がん細胞がブドウ糖を利用できなくすれば、正常細胞にダメージを与えずに、がん細胞だけを死滅させることができると考えられます。
・がん細胞のこの性質を利用して、現在食事の糖分を減らして、中鎖脂肪酸トリグリセリドを多く摂取する「中鎖脂肪ケトン食」を実施することがおこなわれています。ブドウ糖を与えないで、がん細胞だけを兵糧攻めにしようというわけです。このようなケトン食療法が、進行がんに対して有効性を示したという研究がすでにあり、これからますますの発展が期待できます。今使われている多くの抗ガン剤と比べれば、副作用がない点は大変魅力的です。血液中のケトン体濃度が高いほど、がん細胞の増殖抑制効果があったと報告されています。
・ハタイクリニックの西脇俊二先生は「ガンが消える!」(KKベストセラーズ)という著書の中で、これに超高濃度ビタミンCの点滴を組み合わせるという方法で、余命3か月と言われるほど全身に転移があった進行がんの患者さんのがんを消しています。とくに結腸がん、膀胱がん、腎臓がん、乳がんの患者には、有意な差が認められるそうです。多摩南部地域病院の古川健司先生も、「長高濃度ビタミンC点滴療法」に取り組んでいます。がん細胞の大好物はブドウ糖です。ビタミンCは分子構造がブドウ糖に似ているので、がんが間違えて取り込みます。ところがビタミンCはがん細胞の中に入ると、過酸化水素という活性酸素を発生してがん細胞をやっつけてくれるのです。問題はビタミンCが体内に4時間しかとどまらないことです。そういう性質なのですが、食事で糖質をカットするとどうなるでしょう?がん細胞は好物の糖質(ブドウ糖)がゼロなので、いつもよりビタミンCを積極的に取り込もうとするはずです。つまり飛躍的な効果が期待できるのです。ちなみにこの場合の糖質制限は1日15g以下です。この数値はてんかんの治療法としてかいはつされたもので「スーパーケトジェニック(ケトン食)」と呼びます。古川先生はさらに独自に研究を重ね、がん患者さん向けに、2日でケトジェニック状態になるメニューを開発中です。体力の衰えたがん患者さん向けなので、タンパク質3割、脂肪7割とし、脂肪分はココナッツオイルと亜麻仁油で多くをまかなうところが特徴です。ケトジェニック状態になって、ケトン体がどんどん出るようになれば、体の免疫力も上がっていくことが期待できます。
・糖質過多の生活の対極にある「ケトジェニックな生活」の効果は、糖尿病や肥満、メタボにとどまらず、アトピーやアレルギー疾患、歯周病、認知症、加齢による変化への応用など、多方面にわたると報告されています。ヒトはこれまでの歴史を通じて、これほど精製された糖質を摂取してきたことはないのです。簡単に手に入る砂糖入り飲料と、多彩な菓子類。何よりも、主食とするコメやパンやパスタは糖質だらけであって、それに組み合わせる副菜も、ポテトや根菜など糖質のオンパレードです。安く手に入る原料で大量生産ができ、口に入れれば糖質は中毒性があるので、リピーターを作るのも簡単です。それでも、自分の足で歩き、外気温に左右されていた時代には、たくさんの代謝エネルギーが使われましたが、今は車や電車で移動して、快適なエアコン頼みの生活です。体が多すぎる糖質に静かな悲鳴を上げ始めていることに早く気づかなければなりません。
・ケトジェニックな生き方は、もっとすごいことを引き起こします。糖尿病が食事で治ってしまうことは、医療の巨大転換を意味するからです。たとえば、薬を使わないで糖尿病が治るので、医療費が様変わりします。今の日本の医療費は40兆円にもなろうとしています。この中で薬剤費が占める割合は10兆円ぐらいと言われています。糖質制限をすると、透析やインスリンなどをはじめとした糖尿病関係をはじめ、メタボの解消から高血圧、脂肪肝などの薬剤費が激減する可能性があります。透析には年間2兆円がかかっているのです。アルツハイマー病や認知症、がん治療にも効果が期待できますから、おそらくは5~10兆円くらいの削減効果があると思います。食事で多くの病気が治ったら、その削減で生じた予算を、お母さんと子どもたちのために使えるとよいと思います。今の日本、恵まれているようにも見えますが、一方では余裕のない生活の母子もたくさんいます。また、いろいろな心配から子どもを産まない人も増えています。ひるがえって、先進国では唯一、子どもがたくさん産まれている国、フランスでは母子手当が本当に充実していて、たとえ結婚していなくても、お母さんは安心して赤ちゃんを産めるそうです。たくさんの赤ちゃんが生まれる国は未来が明るいと思います。不適切な治療をして病気を悪化させ、医療費を無駄にするよりも、適切な食事で病気を治して、余ったお金で新しい命を育むフォローをしたほうが、国にとってもそれぞれの人たちにとっても、ずっといいに決まっていますよね。
・ケトン体をエネルギー源にして生きることをケトジェニックな生き方と言います。これは順天堂大学の白澤卓二教授、ナグモクリニックの南雲吉則先生、日本機能性医学研究所の斎藤糧三先生を中心にしたケトジェニックダイエットグループが提唱しています。その考え方をごく簡単に紹介すると、積極的にケトン体をとって脂肪を燃やし、これをエネルギー源にするというものです。肉を食べて脂肪を燃やすというわけです。斎藤糧三先生によれば
1)カロリー計算はしない
2)糖質(炭水化物)はとらない
3)タンパク質を1日60gとる
4)野菜で食物繊維とミネラル(マグネシウムや亜鉛)をとる
5)ココナッツオイルを1日大さじ1~2杯とる
・沖縄県那覇市のこくらクリニック院長・渡辺信幸先生が提唱しているMEC食は離島での医療の経験から生まれた考え方で、肉(MEAT)、卵(EGG)、そしてチーズ(CHEESE)を積極的にとることを勧めています。この3つの食材にはタンパク質に脂質、ミネラルやビタミンも豊富に含まれているからです。この3つの頭文字をとって「MEC食」と名付けられています。MEC食は同時に「食事をよく噛むこと」を提唱しています。食事を口に入れたら30回よく噛むことが大切とされています。MEC食と30回噛むことをまとめて「MEC&KK(カムカム)30」と呼んでいます。1日に摂取する目安としては、
●肉200g(豚でも鶏でも牛でも魚でもよい)
●卵4個(6個でもよい)
●チーズ120g(6ピースのチーズ6個分)
です。これらを食べてよく噛むこと。一度に30回噛みましょう。主食や糖質は控えた方がよいとされますが、とはいえ、これら以外の食品を追加することは自由です。
・京都高雄病院の江部康二先生は3種類の糖質制限の食事法を提唱しています。
①スーパー糖質制限食:3食とも糖質を制限して主食をとらない。
②スタンダード糖質制限食:3食のうち2食の糖質を制限して、1食だけ(夕食以外)主食をとる
③プチ糖質制限食:3食のうち1食(基本的に夕食)だけ糖質を制限し、主食をとらない。
この3つです。①は糖尿病、ダイエットに効果、②も「カロリー制限」をするより糖尿病やダイエットに効果があり、③は軽いダイエット効果が見込め糖尿病には向きません、このスーパーとかスタンダードという方法は、糖質制限をやっている方には、もっともポピュラーな方法です。そしてスーパーこそが糖尿病治療にももっとも効果があるでしょう。
・これらのいずれのグループにも共通していることは、低糖質、高タンパク質の食事です。ローカーボ、ハイプロテインとも言います。それぞれ強調する点が少しずつ違いますが、糖質を制限するという点では一致しています。
・ほかにも「オーソモレキュラー療法」という栄養療法で糖質制限と高タンパク質食に不足する栄養素をサプリメントで補給する考え方で治療を進めている新宿溝口クリニックの溝口徹先生、「断糖食」をすすめる兵庫県の崇高クリニックの荒木裕先生、「糖質ゼロ」を勧める釜地豊秋先生、ケトン食をがん治療に勧める銀座東京クリニックの福田一典先生、低インスリン生活を勧める郡山市のあさひ内科クリニックの新井圭輔先生など、たくさんの先生方がご活躍しています。これらすべての治療のベースは「糖質を下げること」「低インスリンを維持すること」「ケトン体エンジンを使うこと」にあり、このことで多くの患者さんを救っているのです。さらにこういった主張はこれまで書籍での発表が中心でしたが、今はインターネット、SNSの時代です。多くの患者さんはネット経由で糖質制限のことを知り、自らもネット上でブログを作ったり掲示板に投稿するなどして活発に意見交換をして知識を得ています。
・Facebookでは私も関わって2014年3月に「糖質制限」というグループが立ち上がりました。これを指導したのは品川雅也さん。自ら大幅なダイエットに成功した今やトレーナー顔負けの筋肉体の管理人です。2014年3月末に呼びかけて、1年半で会員数8000人を突破した非公開グループで、さらにこの非公開の中心グループのほかに、公開の小グループや、非公開の小グループの数々を携えて成長しており、グループ総数は30以上、総会員数は4万5千人にもなります。どんなグループがあるかといえば、「糖質制限ダイエット」「糖質制限レシピ」「糖質制限グルメ」「糖質制限スイーツ」などから、「スポーツ」「肉」「魚」「卵」「マヨネーズ」「ココナッツオイル」「スタイル」「Ⅰ型糖尿病」「Ⅱ型糖尿病」、また栄養士や看護師それぞれの専門家もあったり「犬部「猫部」もあります。英語版の専門ページや「子育て」や「離乳食」「低糖質企業懇話会」「糖質制限節約塾」などや「低糖美酒」「禁煙」「禁酒」「ガン」というグループもあります。ここではそれぞれのグループに責任管理人がいて、相互に交流し合いながら連日活発な意見交換をしています。また地域ごとにも、北海道、北陸、千葉、神戸んどのグループもできており、それぞれの場所でオフ会が開かれています。積極的で自発的なこういった集団は、MEC食グループでも会員数は4000人を数え、「沖縄MECの会」など、どんどん増え続けています。そのメンバーには、医師や歯科医師、鍼灸師、管理栄養士、看護師、助産師など医療関係の方々から、食品、料理関係の専門の方、トレーナー、スポーツ系の方々、糖尿病、肥満などで悩む患者さんたち・・・etc.と、じつに多彩で多才な人たちが集まっています。ですからこの中に目的を持って参加すると、今まで一人でいた方たちが、多くの方々とつながってその声を聴きながら実践していくことになり、じつに確実に糖質制限やMEC食の方法をモノにして、健康体を取り戻すことができるのです。
・ブログといえば、何といっても江部康二先生の「ドクター江部の糖尿病徒然日記」をまず取り上げなければならないでしょう。全国で1万5千人を超える方が毎日見ている人気ブログは、糖質制限普及の先頭を行く牽引車です。おそらく糖質制限の世界に入った方であれば、誰もが一度はお世話になっていて、毎日参考にしている方が多い人気のブログです。しかも、質問コメントには必ず迅速にお返事をしてくれる江部先生の真摯な姿勢。これが間違いなく人気の要因の一つでしょう。しかも今までの発言がすべて整理されていて、いつでもそれを参照することができ、糖質制限に関する知識の百科事典になっています。
・ベストセラー「炭水化物が人類を滅ぼす」を書いて糖質制限ブームをさらに盛り上げた練馬光が丘病院の夏井睦先生は、専門の「傷の湿潤治療」をこなしながら、3万人を超える読者のいる「新しい創傷治療」というホームページを運営。ホームページの中では糖質制限についても頻繁に言及し、意見交換や多方面にわたる考察を展開、また全国の糖質制限レストランや医療機関を紹介したり、オフ会にあたる「豚皮揚げを食べる会」を全国で開いていて、熱烈なファンの多いサイトとなっています。
・「低糖質ダイエットは危険なのか?中年おやじドクターの実践検証結果報告」というブログを運営しているカルピンチョ先生も人気です。すごく勉強になるブログで、私もいつも、いろいろ教えていただいています。超専門的な医師(正体は明かしていませんが)が、かなり深く掘り下げたブログを公開して、読者の質問に答えてくれるのはすごいことです。
・確かに今、日本でそして世界で、すべての人口を糖質制限とケトン食でまかなうことは難しいでしょう。穀物や糖質が現在の人類を支えていることは否定できません。私は、誰もがケトジェニックな暮らしにすべきだと考えているわけではありません。何より糖尿病の方、肥満や生活習慣病に悩んでいる方、がんなどがあってよくならない方や現状に疑問を持っている方に、ケトジェニックな生活を始めることをお勧めしているのです。現状で問題なく、満足している方は、従来どおりお過ごしいただけたらよいとも思っています。
・この本では、実にたくさんのことを書いてきました。どれも、私がどうしても読者の方々にお伝えしたいことばかりです。最後にもう一度、まとめとしてポイントを書いておきますから、覚えておいてください。
●糖質だけが血糖値を上げます。
●カロリーと血糖値には、何の関係もありません(これはとっても大事!!)。
●「食品成分表」には、血糖値を上げる「糖質」という項目がありません。
●「食品交換表」は何も交換せずに、炭水化物を「50~60%」という固定した割合で摂取せざるをえなくしています。
●やせたければ「脂肪」をとりなさい、これこそが真実です。
●絨毛-胎盤には、高濃度のケトン体が存在します。
●胎児はケトン体で生きています。
●妊娠中のコレステロール高値と中性脂肪高値は、胎児のためにあります。
●新生児もケトン体で生きています。
●妊娠糖尿病は、胎児による「タンパク質と脂肪の要求」のあらわれで、「糖質は不要」という病態です。
●糖質制限で、妊娠糖尿病も、Ⅰ型・Ⅱ型糖尿病も管理できます。
●ケトン体には、毒性はありません。
●ケトン体で生きることこそ、長寿・健康の道です。
●がん細胞には、ブドウ糖が不可欠ですが、ケトン体は利用できません。
●糖尿病ケトアシドーシスは、糖尿病性アシドーシスなのです。
●ヒトの進化の歴史では、直立2足歩行を始めたことでサルの先祖と分かれ、道具の使用、火の使用、そして肉食による脳の巨大化が始まり、絶滅を免れました。
まる今ではケトン体を利用した「ケトジェニックな生き方」が人気で、SNSの世界でも広がっています。
●ケトジェニックな生き方は、健康で長寿の道です。これこそ人類を救います。
●アメリカ糖尿病学会は、すでに糖質制限食を、糖尿病の治療の選択肢として認めています。
・医学界の遅れに対し、食品業界では、糖質ゼロ麺を開発した紀文食品をはじめ、ローソンで販売されている鳥越製粉のふすまパン、そして糖質オフ飲料やアイスクリーム、お菓子、ケーキにいたるまで、シャトレーゼやグリコ、高梨乳業などが次々と開発に参入して商品が生まれています。清酒や餃子、さらにはハンバーガーまでもが作られるようになりました。喜ばしい限りです。こんな動きがもっと広がっていってほしいと思います。
良かった本まとめ(2016年下半期)
<今日の独り言>
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