
「下流老人と幸福老人」という本は、シニア調査から上流老人と下流老人の資産や男女別等で、何が幸福で不幸と思っているか、人生を振り返っての反省点、幸福老人はどういう考えを持っているか等について明らかにし、そして今後幸福老人を増やすにはどのような社会が望ましいかについて、実際に行われている良い例も含めて紹介されています♪
意外と幸福度には男女や年齢、金融資産による差はあまりなく、金融資産が少なくても幸せな人は5割以上いるというのは驚きましたね。
また幸福老人は自分だけでなく他人の幸福を考え、趣味の仲間や隣近所に友人が多い人であり、不幸老人はお金に執着し、夫婦や子供との関係が悪い人のようです。
特に女性は隣近所に友人が多いほうが幸せで、既婚以外の一人暮らしの男性シニアは交際している異性がいると格段に幸福度が上がるとはナルホドと思いましたね♪
また、シニア以外でも年収が高ければ幸福度が高いというわけではなく、年収800万円くらいがもっとも幸せというのは驚きましたね。
それから人生の失敗は「もっと貯金や資産を増やしておくべきだった」というのがダントツで、そのほか「もっと遊び、恋愛をし、プライベートを大事にすれば良かった」という意見が多かったようです。
人生は仕事を頑張り、仕事だけでなく遊びや恋愛、趣味も大切ということですね♪
そして不幸の最大の要因は夫婦生活で、人生の成否のかなりは結婚で決まるようです^_^;)
また、お金持ちは断捨離をし、近所のカフェやレストラン等に行き、コンサートに行き、図書館で新聞や雑誌など本を読み、野菜をよく食べ炭水化物を減らした食事をしているとはナルホドと思いましたね。
それから、今後の社会としては中古住宅をリノベーションすることによって不動産の価値を再創造し、シェアハウス、シェアオフィス、店舗、コミュニティスペースなど様々な用途に活用していくことが望ましいようです。
特に高齢者が若い人に安くホームシェアするというのは、相互に助け合い、刺激し合って、また高齢者は少しながらも収入が増え、若い人は安く賃貸でき、お互いメリットがあって良いことではないかと思います♪
それから巻末には「ひふみ投信」のレオスキャピタルワークス代表取締役社長の「藤野英人」さんのインタビューもあり、私も参加している「ツイッターピアノの会(略称「ツイピの会」)についても書かれていたのには驚きましたね♪
「下流老人と幸福老人」という本は、これからの幸せな人生のためのヒントとなりとてもオススメです!
以下はこの本のポイント等です。
・60歳以上の方は自分が以下の項目に当てはまるか、60歳未満の方は60歳以上になったときを想像してチェックしてみてほしい。
□趣味の仲間などの友人が多い
□隣近所に友人が多い
□未婚、離別ではない
□子供がいて、たまに会っている
□孫の顔を見るのが楽しい
□夫婦仲が良い
□健康である
□異性の友達がいる
□お金や高級品に執着しない
□自分の幸せよりもみんなの幸せを考える
以上のうち7個以上当てはまるものがある人は、おそらく「幸福老人」である。
・「シニア調査」「シニア追加調査」によりシニアの幸福度を見ると、両調査ともに「とても幸せ」が7%台、「幸せ」が6割弱、合計すると7割弱が幸せである。男女差、年齢差はほとんどない。また金融資産別に幸福度を見ると「とても幸せである」という人は5000万円以上で13%だが、残りの資産階層でも5~8%くらいであまり差がない。そして「幸せである」は2000万円以上の階層では67%前後であり、500万円未満の階層で6割を切り、200万円未満では49%であり金融資産の多い少ないによる幸福度の差は確かにある。だが見方を変えれば、200万円未満しか資産がなくても半数以上のシニアは幸せなのだ。しかも資産200万円未満で「幸せでない」人は15%だけであり、31%の人は「どちらともいえない」と回答している。資産と幸福度には相関があるものの、資産が少ないことが決定的に不幸と結びついてはいないのである。
・金融資産500万円未満の階層の人々は、人口では29%だが、資産は2.1%しかない。1億円以上の階層の人々は人口では3%だが、資産では30%を占める。これが下流老人と上流老人の資産格差の実態である。
・過去1年の入院費、治療費、薬代、リハビリ費の合計をたずねたところ、金融資産の差による違いはなかった。つまり資産があってもなくてもかかる医療費は同じだということである。こうしたことが資産の少ないシニアが生活資金の不足でますます不安になる要因である。病気になったら収入のほとんどが医療関係にとられてしまうからである。
・「墓友」というのもあるそうだ。死後には共同墓地などといった同じ墓に入ることを前提としてつきあっている交友関係のことを言うのだそう。宗教団体に加えて企業やNPO法人などが共同墓地の運営に乗り出すようになってきており、そこで募集されている共同墓地に友達同士で共に応募をするという行動を取っている。このような墓友というのは老人同士のサークルなどで知り合った者同士という親戚ではない他人同士だそうだ。
・「仕事はしたいが、いい仕事が見つからない」「家事を自分にかわってやってくれる人がいない」といったより生活に即した項目も浮上する。収入、資産が少ない分、まだ働きたいというニーズはあるが、いい仕事がないのである。1億総活躍というのであれば、シニアが自分が面白い、自分を活かせると思える仕事を見つけられることが重要だ。単に労働力不足だから、年金を減らすから働けというのでは、精神的に貧しすぎる。それでは老人を財政難解消の手段として使い尽くそうとしているだけである。年をとってからは、より自己実現的な仕事、人の役に立っていると実感できる仕事をしたいと思うのが人情である。そのことが幸福老人の増加にもつながるはずである。また一億総活躍の風潮が仕事がしたくてもできない老人を役に立たない人間であるとみなす風潮を生み出すことは避けなければならない。老人というのは基本的には今まで長く生きてきて、苦労してきて今はもうそこにいてくれるだけでいいよと思われるべきコンサマトリーな存在であるべきだからだ。
・自分の人生を振り返り、後悔することは誰でもたくさんあるはずだ。そこで「これまでの人生で失敗した、もう少しうまくやるべきだったと思うこと」を選んでもらった。全体では「もっと貯金、資産を増やしておくべきだった」がダントツで38%。やはり老後にお金がかかることを気にしているのだ。次いで「もっと遊んでおくべきだった」「もっと恋愛をしておけばよかった」「もっと仕事中心ではなく、プライベートを大事にすればよかった」も1割を超えた。
・人生への後悔は今「幸せではない」人のほうが多いはずだから「幸せではない」人が「幸せである」人より多い順に並べてみた。すると「夫婦生活があまりうまくいかなかった」が1位に浮上した。「幸せではない人」では28%に対して「幸せ」な人では3%と大きく差が開く。やはり人生の成否のかなりは結婚で決まるのだ。次いで「もっと貯金、資産を増やしておくべきだった」が55%、「自分の学歴が足りなかった」が20%。少し下位で「事業を始めたがあまりうまくいかなかった」が12%、「転職、脱サラがあまりうまくいかなかった」が12%、「退職金の使い方が少しまずかった」が16%だった。さらに「子供のしつけがうまくいかなかった」が16%あり、「もっと遊んでおくべきだった」「もっと恋愛をしておけばよかった」はいずれも22%と若い頃の生活を後悔しているようである。
・人生の失敗を男女別に見ると、男性が女性より多いのは「もっと仕事中心ではなく、プライベートを大事にすればよかった」「もっと貯金、資産を増やしておくべきだった」「出世があまりできなかった」「もっといい家を買うべきだった」「職業選択を少し間違った」「もっと恋愛をしておけばよかった」「転職、脱サラがあまりうまくいかなかった」「事業を始めたがあまりうまくいかなかった」だった。やはり男性は、仕事、住宅というお金に関わることでの失敗を感じている。
・逆に女性が男性より多いのは「夫婦生活があまりうまくいかなかった」「自分の学歴が足りなかった」「子供の就職がうまくいかなかった」である。現在のシニアの女性はまだ見合い結婚も少なくなく、また学歴を制限され、大学進学率はまだ低く、学校卒業から結婚・出産までの期間が短く、結婚前に独身貴族時代を過ごした人は少ないからである。
・金融資産別に人生の失敗と感じていることを集計すると、当然ながら資産が500万円未満のシニアは「もっと貯金、資産を増やしておくべきだった」が57%もある。「退職金の使い方が少しまずかった」も15%で金融資産2000万円以上のシニアとの差が大きい。また金融資産別・幸福度別に見ると、金融資産2000万円以上の人で「幸せではない、どちらともいえない」人が「幸せである」人よりも失敗だと思っていることは「夫婦生活があまりうまくいかなかった」「もっと恋愛をしておけばよかった」である。特に「夫婦生活」は30%対1.6%という大きな差がある。また「子供のしつけがうまくいかなかった」も「幸せではない人」では15%あり、「幸せである人」の5%と差が大きい。資産があっても幸福でない人は、恋愛、夫婦、子供といった家族面での後悔が多いのである。
・上流老人は学歴もあり、仕事では成功したが、画竜点晴を欠くがごとく夫婦生活に失敗したり、子育てに失敗したり、あるいは健康を害して自由に動けなくなったりすると俄然不幸感が強まるということができる。
・個人の年収と幸福度の相関を見ると、基本的に年収が高くなるほど幸福度が上がる。ただし600万円を超えると幸福度は伸び悩む。「とても幸せ」に限れば1200万円以上で15%と増えるが「幸せである」と合計すると78%であり、800万円~1200万円未満のシニアの82%よりも少ない。600万円以上収入があることは幸福度にとってはあまり意味のないお金であり、1200万円以上あってもますます意味がないらしい。これはシニアに限らず見られる傾向であって、私の調査経験でも、30~40代の年齢層であっても年収が1000万円以上になると幸福度が下がることがしばしばある。また男性は年収が上がるほど既婚率が上がるのだがやはり1000万円を超すと既婚率が下がる傾向もほとんどすべての調査で見られた。詳しい理由はなぜなのかわからないが、どうも年収800万円というのが最も幸福なラインらしいのだ。また年収と幸福度が比例するとはいえ、年収が低いシニアでも幸福である人は過半数いる。200万円~300万円未満のシニアでもほぼ3分の2は幸せである。そしてこの年収階層のシニアが実数では最も多い。最も人口が多い年収階層のシニアの3分の2が幸せであると感じられる社会は、今のところはそんなに悪い社会ではないといえるのだろう。
・配偶関係による幸福度の差を見ると全体ではやはり既婚者の幸福度が高く、離別者と未婚者では低い。だが男女別に見ると男性の未婚者は「幸せ」が40%弱であるが、女性の未婚者は60%であり大きな差がある。また男性の離別者は「幸せ」が35%だが、女性の離別者は56%、男性の死別者は「幸せ」が41%だが、女性の死別者は68%でありやはり差が大きい。男性は一人では幸せになりにくいらしい。世代的に家事ができない男性がまだ多いことも大きな要因であろう。さらにそこに金融資産をクロスすると男性の離別者や死別者、女性の未婚者、離別者で、資産が多くなるほど幸福度が上がる傾向が顕著である。男性離別者の資産500万円未満では「幸せ」は40%弱だが、2000万円以上では57%だし、男性死別者の500万円未満では「幸せ」は30%だが、2000万円以上では62%と30ポイントも開きがある。
・女性離別者も、500万円未満では「幸せ」は53%だが、2000万円以上では82%とやはり30ポイント近くも開きがある。こういう女性は離別してキャリアウーマンとしてバリバリ働いて資産を形成したのか、それとも慰謝料をたくさんもらったのか?集計してみると離別し500万円以上資産があり、かつ幸福な女性のこれまでの主な職業で多いのは会社員である。現在のシニア女性としては珍しいキャリアウーマンが、離婚と引き替えに資産を得て幸福となったケースがあるということである。このように独り身の特に女性の高齢者の幸福度を上げるためには、資産を多くすることが有効である。今後、未婚、離別、死別の高齢者がますます増えるだろうから、そうなりそうな人々は計画的に老後までに資産を形成しておく必要があるということになる。
・女性全体では「子と孫の世代と同居」する人、つまり三世代同居で「幸せである」人が75%と多い。そして500万円未満の人では男女ともに「子の世代と同居」する人の幸福度は低めであり、「幸せである」が48%台である。おそらく収入の低いパラサイトシングルと同居するシニアの幸福度が低いということであろう。
・最近の生活に関する質問への回答を金融資産別に集計し、資産2000万円以上が500万円未満より多い順に並べてみた。すると、差が大きいのは「家のなかのいらないものをたまにゴミとして捨てている」「近所の喫茶店、ファミリーレストランにしばしば行く」「クラシックのコンサートにたまに行く」「図書館に行って新聞や雑誌を読んだりすることがよくある」「野菜をよく食べたり炭水化物を減らした食事をしている」「近所の居酒屋などによく行く」「近所のファミリーレストランなどで2000円以上の食事をすることがしばしばある」などであり、上流老人が断捨離、健康生活、文化生活を重視していることがわかる。
・対して500万円未満のほうが多いのは「宝くじをよく買う」「近所の公園によく行く」である
・男女別に見ると、女性は「友人の家によく行く」「近所の人の家によく行く」といったつきあい系が男性よりも多いことが特徴である。男性のほうが多いのは「宝くじ」「近所の公園」「近所のファミリーレストランなどで2000円以上の食事」「近所の居酒屋」「図書館に行って新聞や雑誌」「近所の喫茶店、ファミリーレストラン」である。つまり女性は人との会話を楽しむが、男性は公園、居酒屋、喫茶店、ファミリーレストラン、図書館といった近所の場所に移動することによって気分を変えるようである。
・男性は子供や孫がいても必ずしも幸せではない。むしろ子供がいない人のほうが「幸せである」が40%と少し多い。孫がいない男性は「幸せである」が43%と明らかに多い。これは現在のシニアでは経済力が男性の幸福度を測る基準として重視されたからであろうか。あるいはそもそも子供との関係が悪いために一人暮らしをしているのかもしれない。
・男女ともに知っている人の数が多いほど「幸せである」人はほぼ正比例で増える。しかし男女の差も非常に大きい。男性では知っている人の数が0人だと幸せである人は32%だが、知っている人の数が11~20人だと幸せである人は50%である。対して女性は知っている人が0人だと幸せである人は42%だが、11~20人だと8割近い。このように知っている人の数が少ない場合の幸福度は男女差は少ないが、女性は知っている人の数が増えるほど幸福度がどんどん増していく。女性と比べると男性の場合は隣近所の知っている人の数は多いに越したことはないが、女性ほどには幸福度を上げないようなのである。近所に6~20人知り合いがいる男性でも、0~2人しか知り合いのいない女性と同じ程度の幸福度なのである。ただし今後は高学歴の女性で外で働き続けた人が増えるから、女性にとっても隣近所の知人の数よりも、学生時代や会社の友人のほうが重要になる可能性は大いにある。
・一人暮らし(既婚以外)の男女シニアについて現在交際している異性がいるか・いないか別に幸福度を集計してみた。すると女性は、交際している異性がいる人で幸せな人は68%だが、交際している異性がいない人でも58%であり、それほど大きく幸福度は変わらない。対して男性は、交際している異性がいない人で幸せな人は32%だが、交際している異性がいる人は58%が幸せである。ガールフレンドがいことで格段に幸福度が上がる。ガールフレンドは、子供や孫がいることよりも、隣近所の知人の数が多いことよりもはるかに幸福度を上げるのだ!なるほど、だから渡辺淳一の小説が売れるわけだ。何歳のどんな異性とつきあっているかは質問していないが、とにかく男性は異性とつきあっていないととたんに幸福度が下がるのだ。
・「あなたが今、幸福だと思うのは主としてどういう時、どういう理由からですか」という質問では、全体では「好きなことをしている時」60%、「自分が健康だと感じる時」46%、「家族と楽しく話している時」43%、「孫の顔を見た時」41%、「家族全員が健康だから」38%、「配偶者がやさしくしてくれる時」37%(既婚者では43%)、「子供がやさしくしてくれる時」32%(子供のいる人では37%)、「友人と楽しく話している時」32%、「子供が仕事をちゃんとしていると思えた時」30%(子供のいる人では34%)、「人のために役立っていると感じられる時」24%などとなった。ただし孫のいる人に限ると、「孫の顔を見た時」は68%もいる。
・資産が多くなるほど「幸せ」な人は友人と余暇を楽しむ人が増える傾向がある。資産が多い人のほうが仕事を通じて広げた交友関係も広いだろうし、お金があるから様々な会合、パーティなどに出席して知人を増やしてきたのだろう。だから資産が多い人ほど余暇を友人と一緒に楽しむ機会が増えたとしてもおかしくない。一方、「幸せではない」人で友人と余暇を楽しむ人は資産の大小に関わらず2割弱しかない。逆に資産500万円未満で「幸せ」な人は友人と余暇を楽しむ人は30%である。お金があって友人がいないよりも、お金がなくても友人がいるほうが幸福度が増すのである。
・男性では、特に学生時代の友人の数が多いほど幸福度が高まった。具体的には学生時代の友人が0人だと「幸せ」な人は56%だが、11~20人だと79%に増えるのだ。ただし今の職場の友人数の幸福度への影響はあまり大きくない。一方女性は、学生時代や以前の職場の友人数と幸福度は男性ほどきれいに比例はしないものの、やはりある程度相関している。それよりもはっきりしているのは、趣味・教養・スポーツの友人の数である。友人が0人だと「幸せ」な人は56%だが、11~20人だと83%に増えるのである。
・一人暮らしのシニアにかぎると、各分野における友人の数が多いほど幸福度が上がるという傾向はあまり顕著ではなくなる。とりわけ男性の場合、地域の友人が1~2人でも6人以上でも「幸せ」である人は4~5割である。男性の場合、趣味・教養・スポーツの友人も、多いほど幸福になるとは言い切れない。むしろ友人が3~5人の男性で「幸せ」な人が54%と最も多い。
・金融資産別では、500万円未満でかつ「幸せ」な人は、「自分ひとりの幸せよりもみんなの幸せを考えたい」人が64%、500万円~2000万円未満の人では67%、2000万円以上の人では63%である。つまり「自分ひとりの幸せよりもみんなの幸せを考えたい」人は、金融資産が多いか少ないかに関わらず、「幸せ」な人の共通の価値観なのである。他人の幸せを考えるということは、必ずしも自己犠牲ということではないだろう。自分の幸せを拡大し続けることより、他者を信頼し、誰もが幸せになることに共感することを通じて自分の幸せを増やせる人だということであろう。
・資産の少ない下流老人であっても、幸福を感じるには、夫婦関係、子供や孫などの家族関係はもちろん大事だが、隣近所との人間関係も大事である。だが夫婦はいつか一人になるし、子供は遠くに住んでいるかもしれない。だから親戚づきあいや近所づきあいは生活の質を高める上で重要な意味を持つ。そしておそらく向こう3軒両隣を超えたいわゆる地縁とかご近所とかではないもっと広い人間関係づくりも重要になるだろう。昔からつきあってきた同世代の友人などだけでなく、若い世代とのつきあい、つながりも重要になっていくだろうと私は考える。
・私はかねてから、ささやかながら提案をしてきたつもりである。すでに「「家族と郊外」の社会学(1995)」において、郊外ニュータウンが同年代・同階層の核家族だけの均質な空間であることを批判し、より多様な世代、多様な属性の人々が混ざり合った住宅地の必要性を唱えた。そして「ファスト風土化する日本」(2014)では、高齢者比率が高まり、空き室も増えた古い団地では、空き室に若い人を安く入居させ、そのかわりに若い人に団地に住む高齢者の生活の見守りや支援をしてもらえばいいと提案し、このように運営される団地を私は「社会問題解決型団地と」と名付けた。もちろん団地でなくても一般の住宅地でも同じである。また「脱ファスト風土宣言」(2006)では、さびれた商店街の空き店舗に安い家賃で若者の店を入れることを提案した。「第4の消費」(2014)、「これからの日本のために「シェア」の話をしよう」(2011)ではシェアハウスに注目した。そしてシェアハウスの人気の理由から、今後の高齢社会の問題を解決する要素がシェアハウスの中にいち早く取り入れられていることを分析した。したがって、単にシェアハウスに住むだけがシェアなのではなく地域全体、社会全体が「シェアタウン」「シェア社会」になるだろうと予測したのである。
・子供が独立したなどの理由から、夫婦二人あるいは一人暮らし世帯で5室以上に住む世帯が大量にいる。これらの家はいずれは空き家になる。「住宅・土地統計調査」によれば2013年の空き家数は820万戸である。こうした空き室、空き家をもっと活用したらどうかという提案も「東京は郊外から消えていく!」(2012)などでしてきた。そして私は、これからは中古住宅をリノベーションすることによって不動産の価値を再創造し、シェアハウス、シェアオフィス、店舗、コミュニティスペースなど、様々な用途に活用していくことが望ましいと主張してきた。
・シェアハウスの利点は何か。まずみんなが一緒に住むから楽しく、特に女性が住む場合、防犯面でも安心感がある。また、家具、家電、食器などが備わっていうので引っ越しに伴うコストが少ない。したがって自由業、非正規雇用者、長期出張が多い人、外国人でも住みやすい。さらに中古住宅をリノベーションしたものが多いため、モダンなものからレトロな古民家まえ、外観も内装も個性的である。(「第4の消費」(2012))今後、中高年の一人暮らしが増えていくと、こうしたシェアハウスの利点に価値をおく人が増えるはずである。実際シェアハウスに住みたいという人は若い人だけでなく、中高年の未婚・離別・死別者、あるいは新婚や子供のいる人でも増えている。高齢者と若い世代が一緒に住むシェアハウスもできた。高齢者は若い人から刺激を得るし、若い人は高齢者から知識と経験を学べる、これからの時代に増えるべき住み方である。部屋数の多い家に1人か2人で住んでいる高齢者が、空いた部屋を貸しに出すホームシェアという活動も増えてきた。それにより家賃収入が入るだけでなく、若い人との交流、コミュニティが生まれることがホームシェアのメリットである。このようにこれからの日本の住まいは、超高齢社会、特に高齢の単独世帯が増えることを大前提としながら、狭義の福祉政策に依存するのではなく、家族以外の人々があまりお金をかけずに、相互に助け合い、刺激し合いながら暮らすための都市づくり、コミュニティづくりを考えていくべきなのだ。
・そのとき重要なのはお互いに手を貸す、知恵を貸す、という関係づくりである。これについては「これからの日本のために「シェア」の話をしよう」で「時間貯蓄」という試みを紹介した。これは上海の高層マンションでの取り組みであり、住民が自分のスキル(料理が得意とか、英語が教えられるとか、大工仕事ができるとか)を住民全体に公開し、そのスキルを時間単位で交換するのである。たとえば英語を1時間教えると時間貯蓄の通帳に1時間分が増える。その1時間を使って部屋の修理を1時間頼むという仕組みである。これと同じ取り組みは、茨城県の井野団地でも行われており、団地の住民が自分が得意なことを貯蓄するので「とくいの銀行」という。
・今後一人暮らしの老人が増え、空き家が増える郊外ニュータウンに、空き家を活用して「コムビニ」をつくることを提案した。コムビニとは全国一律の消費空間としてのコンビニエンス・ストアではなく、地域ごとに住民のニーズを満たすコミュニティ・コンビニエンス・プレイス(=コムビニ)である。学問的にはコミュニティリビングというらしい。家の中にリビングルームがあるように、地域社会の中にコミュニティリビングがあって、地域の人々が集まって話したり、食べたり、学んだりするのだ。コムビニは、駅前や繁華街にあるのではなく、またコンビニのように道路沿いにあるのでもなく、高齢者が簡単に行けるように、3分も歩けば着けるような住宅地の中につくられる。そこには日常最低限の必需品買える小さな店があり、その他にも特に用事がなくても住民が気軽に集まれる場所にするため簡単な飲食店が併設される。いつも一人で食事をしがちなおひとりさまが、気軽に立ち寄れる地域内の飲食店、簡単な定食屋のたぐいである。夜は少しお酒も出る。店舗は企業が経営しても住民やNPOが経営してもよい。コムビニの庭にはイスとテーブルがいくつか置いてあり、売っている食品をそこで食べるこおもできる。さらにマッサージを受けられるとか、インターネットを通じた簡単な診察ができるとか、ペットのトリミングスタジオがあるとか、理髪店、美容室などが出張に来るとか、カルチャー教室があるなどの各種のサービスが提供される。それから便利屋が必要だ。高齢者になると電球を替えるのでも、ちょっと重い物を動かすのでも一苦労である。だから家事を含めた日常生活全般の困ったことを解決する便利屋にコムビニからいつでも仕事が頼めるようにしておく。2階はシェアハウスかシェアオフィスにする。社会問題解決型団地と同様、シェアハウスの家賃を安くして、そのかわりに1階の店舗などで無償または安価で働くようにしてもよい。このようにコムビニは、単に物を買うだけでなく、むしろい生活に必要な最小限のサービスを提供する拠点であり、住民が老いも若きも一人暮らしも子供連れも一緒に集まり、一緒に食べ、くつろぎ、教え合い、学び合う場所である。「共食」と「共学」によってコミュニティの質が高まっていくのである。実際コムビニ的な活動は増えてきたし、シェアをコンセプトとする場所づくり、シェアタウンづくりも増えている。
・地元の仲間と一緒に商店街の活性化イベントという位置づけで助成金をいただき、2013年の夏に「阿佐ヶ谷もちより食堂」を開催しまsた。商店街の空き店舗を使わせてもらい、商店街で買ってきたものを持ち寄って食べるイベントです。キッチンはなかったのでテイクアウトのみでしたが、商店街で買ったものを持参してみんなで食べました。その後、商店街にたまたまキッチンスタジオがあったので助成金でスタジオを借り、トライアルとして4回、そこでみんなでつくって食べる「阿佐ヶ谷おたがいさま食堂」をやりました。なぜこうした活動を始めたのかといえば、「そういうものがある暮らしが楽しそうに思えたから」ということにほかなりません。助成期間が終わってからも「次はいつですか?」と問い合わせがあり、だったら続けてみようかということになりました。初回は私の知り合い12人でしたが、次第にみんなが知り合いを呼んできて参加者が増えていきました。活動をしてみてわかってきたことは、「多様性に出会うことは楽しいし、案外多様性を楽しむことができるもんだ」ということ。「仲良くなろう」とか「同じ仲間じゃん!」と考えれば考えるほど、居心地は悪くなる。それぞれが違っていていい。自分が思っている「楽しい」が、ほかの人と同じとは限らない。阿佐ヶ谷おたがいさま食堂の目的うんぬんではなく、参加者それぞれ違った目的で来てかまわないというのが居心地の良さになっていると思います。
・阿佐ヶ谷おたがいさま食堂の活動をした経験から、齊藤さんがポイントだと感じたことのひとつに「苦手」なことをやる。自分の得意なことからスタートしなくてもかまわない、「苦手」を差し出すと、誰かの「得意」を引き出せることがあるということがあるそうだ。これは私がかねがね考えてきたことに近い。高齢者、特に男性がリタイヤ後、地域社会に入りにくいことは明らかになったが、その理由のひとつも、男性が自分が一番得意なことを武器にして地域に入ろうとするからだろうと私は思う。男性は得意なことを自慢したがるので、煙たがられるのだ。そうではなくて二番目に得意なこと、好きだけどまだ得意ではないこと、関心はあるけどよく知らないことを契機にしたほうが他者とつながりやすいのだろう。
・okatteにしおぎは、本格的なキッチン・土間・板の間・畳のコーナーがあるコモンスペースを有する「食」をテーマとした会員制パブリックコモンスペースとして開業しました。ここは街の人が共に食卓を囲む「まち食:を常に行える場であり、食関連のスモールビジネス(料理教室、ワークショップ、ジャムづくり、東北食材ネット通販など)のスタートアップの場所でもあります。また2階はシェアハウスとして3組が入居し、1階の1部屋はオフィスとして使用されています。会員は月会費1000円。コモンスペースを予約利用(有料)してイベントや食事回を開いたり、平日の夕方には、皆で食事をつくって食べる”okatteアワー”に参加したりします。運営管理は自分たちでおこないます。また会員の中の小商いメンバーは、追加の会費を払うことで、毎月決まった時間、営業許可のあるキッチンを使うことができます。
・シェア金沢は2014年3月にオープンした。サービス付き高齢者住宅、障害児の入所施設のほか、一般学生向けの住宅、美大生のためのアトリエ付き住宅などからなり、テナントとしてデザイン事務所、ボディケアの店、飲食店、ライブ演奏のできるバー、料理教室、売店などが入居したひとつの「街」である。売店、飲食店、クリーニング取次店などでは障害者や高齢者が店員や仕入担当として働き、本館の中でも障害者がお菓子箱づくりなどの仕事をする機会をつくっている。学生や美大生は相場より安い家賃で住めるかわりに、障害者や高齢者のために月30時間働く。ある美大生の場合、やる気満々でみんなのお世話をしようと入居したが、実際はみんなからおかずをもらったりとかえって世話をしてもらっているという。
・結論は、「下流幸福老人」は、自分だけでなく他人の幸福を考える人、「下流不幸老人」は、お金が欲しいと言い続ける人、「上流不幸老人」は、夫婦や子供との関係が悪い人でした。
・本書を若い人に読んでもらいたいのは、会社だけですべて完結するという生き方になってしまったら、会社が終わった瞬間にすべて断絶するわけです。終身雇用で1社だけで働いてきた人ほど、その後、まったく使い物にならないということになりがちです。だから社内だけではなくて、広く社会にネットワークを持って、いろいろな関心を持ち、チャンスを広げていくという生き方でないとだめです。
・実際に僕自身がやっていることで一番成功したのが「ツイッターピイアノの会」、略称「ツイピの会」です。今や日本最大のピアノのサークルの一つになっています。私が発起人で始めたんですが、ツイッターで集まった数名でピアノの弾き合い会を始めたんです。僕は昔からピアノをやっていて、それで数名で始めたところ、だんだんそれが増えてきて、評判になっていった。名古屋ツイピから関西、福岡、札幌と今、全国20カ所ぐらいで定期的なピアノの弾き合い会をしています。今はツイッターよりもフェイスブックのほうが便利なので、フェイスブックのグループの中で10代、20代の子から70代の人まで参加しています。わりと年齢層の幅が広い。どちらかというと女性が多いですね。そういうネットワークができて、どんどん増殖しています。そうしたら、当初まったく意図していなかったんですが、そこで出会った男女がたくさん結婚したんですよ(笑)。ピアノをやっている人たちというのは、どちらかというとシャイな人たちなのですが、こういう人たちが集まると、ベートーベンはこうやって弾くんだよとか、ショパンは小指が大事とか、そういう話で盛り上がる。一般社会ではちょっと痛い人になって(笑)、普段は隠していたりするのが、ツイピの会では尊敬の目で見られる。尊敬って愛情に変わりますから、それで少なくとも12組ぐらい結婚しました。
良かった本まとめ(2016年下半期)
<今日の独り言>
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