A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

鼠派演踏艦Ω公演・宮下省死「人間・魔苦辺主」@目白庭園内・赤鳥庵 2012.5.6 (sun)

2012年05月08日 00時42分58秒 | アート!アート!アート!


昨年12月に続く鼠派演踏艦Ω-舞踏シリーズ・百八の煩悩ソノ弐-「人間(ひとま)・魔苦辺主(まくべす)」(赤鳥版)。
61歳の舞踏家、宮下省死さんの108回予定されているシリーズ公演の第2回目である。原作はウィリアム・シェイクスピア、音楽は何と阿部薫だという。フライヤーによれば宮下さんが土方巽さんのもとで舞踏を始めた19歳の頃、街路で踊っていた時に阿部さんと知り合い、20歳の時早稲田大学の屋上で阿部さんがバスクラリネットを吹き、牛の生首を背負って踊ったのが宮下さんの最初の公演だったという。写真は1971年の三里塚幻野祭で阿部さんのハーモニカ演奏中に牛の生首を背負って舞台で踊る宮下さんである。終演後宮下さんに聞くと、三里塚でのパフォーマンスは予定されていたものではなく、知り合いだった阿部さんのステージに飛び入りしたのであり、この写真も宮下さんとは知らず撮影されたものだそうだ。このフェスティバルの模様を収録した『幻野 幻の野は現出したか~’71日本幻野祭 三里塚で祭れ』というアルバムには阿部薫の名前はクレジットされているが演奏は収録されていないのでこの写真だけでも日本のロック/ジャズ史上とても貴重なものである。

シェイクスピアの四大悲劇のひとつである「マクベス」は勇猛果敢だが小心な一面もある将軍マクベスが妻と謀って主君を暗殺し王位に就くが、内面・外面の重圧に耐えきれず錯乱して暴政を行ない、貴族や王子らの復讐に倒れる、というストーリー。宮下さんの演出はマクベスの人間的な内面に焦点をあてており、その心境の変化に応じて阿部さんの7種類の楽器の即興演奏が使い分けられ、衣装もその度に着替える。前回の同じくシェイクスピア原作による「瓦礫の森のリア」では石と木の枝と急須を小道具に使った舞台だったが、今回は仮面と刀がマクベスの狂気の象徴として使われた。場面展開のための着替えもうすら赤い光の中で観客に見せるという曝け出し方が宮下さんらしい。最後に閉めてあった雨戸を全開にし、まぶしい陽光の中断末魔の絶叫を聞かせるシーンでは例えようも無いカタルシスに恍惚となった。



マチネとソワレの昼夜2回公演で私が観たのはマチネだが、夜はまた違った感動のある舞台だったに違いない。私はそのまま新大久保で灰野さんの出演するイベント(明日のブログでレポ予定)ヘ行ったのだが、宮下さんと阿部さんと灰野さんという同時に幻野祭に出演していた三者を一日で体験するのも何かの符号だろうと思い感慨ひとしおだった。

四十年
踊り続けて
留まらぬ

宮下さんの次回公演は11月に「子規の四季の死気と、S骨とM肉の奇妙なる恋愛関係。」というタイトルのオリジナル舞踏になるとのこと。



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