毎年恒例の灰野さんのバースデイ・ライヴ、今年は還暦（60歳）という一区切りの記念である。Facebookの「ロックっていいね！倶楽部」というコミュニティで灰野さんと阿部薫さんの誕生日を記念して「アングラ祭り」を企画しその両者は勿論、様々な日本のアンダーグラウンド・アーティストの動画を投稿して気分を盛り上げる。伊藤まく氏主宰の「JAPANOISE ジャパノイズ」コミュにもライヴ告知を投稿。
開場17:30／開演18:00と早めのスターとだったのでかなり長いライヴになると予測。小雨降りしきる中、開場1時間半前に行くとまだ誰も並んでいなかった。サウンドチェックの音が漏れ聴こえてくる。ハーディガーディと哀秘謡の歌。次第にひとりふたりとお客さんが増え、開場時間には階段の外まで長蛇の列が出来た。
この日はJ・A・シーザー氏のリサイタルも開催されておりそちらに行った方とTwitterで状況を報告し合う。ホントにSNSは便利だ。
30分押しの18:00に入場開始。難なく最前列を確保。会場の2/3くらいに椅子が並べられていて後ろは立ち見だったが、立ち見席まで満員。先日のSuper Deluxeの「ド・ノイズ」の時同様、ここ数年途絶えていた外国人ファンの姿も見られる。ステージ・セッティングは左から譜面台とマイクが2本、エアシンセのブーム・スタンドが3台、ドラムマシンや発振器を乗せたテーブル。アンプはベース・アンプ、フェンダー・ツインリバーブ、ローランド・ジャズ・コーラス×2の計4台。
ソロ公演の定番ヴァイオリンのSEが流れる中、18:50に灰野さんが登場。メタル・パーカッションとシンバルを叩きながら絞り出すようなヴォイス・パフォーマンス。続いてエアシンセの演奏。以前はテーブルの上に並べて魔術師が呪いをかけるような動きで演奏したが、先日の秋葉原Club Goodmanでの美川氏＋ドラびでお氏との共演から一台ずつブーム・スタンドに取り付け、両腕を広げて踊るようなアクションで鳴らす奏法に変わり、よりダイナミックな演奏を見せるようになった。40分の耳をつんざくエアシンセ演奏に続き、SGを構え轟音ギターの弾き語りに突入。「暗号」「あっち」「ここ」「ふわふわ」「うまくできない」など往年のナンバーも含め途切れることなく歌を紡ぎ出す。とても1台のギターから発せられているとは信じられない重厚なサウンドの轟音の連続から一転してヴォリュームを絞った繊細な弱音に変わる抑揚のある演奏に時間が経つのを忘れて没入してしまう。不失者時代からエンディング・テーマとして演奏されてきたメロディが静かに奏でられ終了するまで2時間45分。これで第1部の終了である。
20分の休憩中にお香が焚かれ儀式的な雰囲気が高まる。改めて客層を見ると毎回若返っているようだ。とてもいい兆候。
第2部はドラムマシン＋フルートの吹き語りでスタート。エスニックなリズムに木製の縦笛、一転して民俗弦楽器ブルガリによる「いみくずし」。発振器～フレットレス・ギター～ハーディガーディ～シンセサイザー～SGと第1部に比べて多彩な楽器を演奏するが常に歌がリードし灰野ワールドを拡張していく。最後の曲は「始まりに還りたい」。アンコールでは「あっち側からこっちを見ろ」の激しい演奏。2時間の演奏。拍手が止んだ時に時計を見るとちょうど深夜0時だった。のべ4時間45分の演奏。しかも激しいアクションと魂を振り絞る情念のヴォーカル。とても還暦とは思えないこのエネルギーは何処からくるんだろうか。
楽屋へ挨拶に行くと毎度のことながら長時間演奏の疲れも見せず機嫌良く応対してくれた。会場で購入した不失者のニュー・アルバム「光となづけよう」にサインを頼むと一度書いて「失敗した」ともう一回書き直してくれた。旧知の知り合いの方々が次々訪れ誕生日プレゼントを渡す。何のプレゼントも用意してなくて申し訳ありませんでした。その後ホールにテーブルを並べケーキの蝋燭に火をつけ誕生パーティを行うが私は終電時間なのでケーキを一口いただき失礼した。終電を逃して帰れなかった人も多かったに違いない。
還暦に
何も変わらぬ
灰野節
会場で配られたフライヤーによると映画「ドキュメント灰野敬二」は7月7日（土）よりシアターN渋谷にてモーニング＆レイトショーとのこと。出演：灰野敬二、不失者（灰野敬二＋亀川千代＋Ryosuke Kiyasu／高橋幾郎／ナスノミツル／工藤冬里）、監督・編集・撮影：白尾一博、配給：太秦、95分。近々オフィシャルHPがオープンする予定。
さらにリリース情報。Oren Ambarchi＋灰野敬二＋Sunn O)))のコラボ作『Nazoranai』が7月発売とのこと。
