ENDON主催TOKYODIONYSOS 2012
初めてENDONを観たのは約1年前震災の2週間後同じEarthdomで開催された「Between Silences」というSutcliffe JugendやPainjerkが出演したノイズ系イベントだった。ステージにTVセットで壁を作り、凄まじい轟音ノイズとスキンヘッドのヴォーカリストの客をどつく暴力パフォーマンスが展開され、最後はTVを全て破壊しステージが瓦礫の山と化す、という傍若無人ぶりは、震災の後遺症が色濃く残る中、不謹慎極まりなく痛快なものだった。
ENDONはエフェクター・メーカーM.A.S.F.に関わっており、そのエフェクターを灰野さんが使っている縁で、昨年末のオールナイト・ライヴを観に来ていた。暴力ヴォーカル氏と知り合いENDONの初CD「ACME APATHY AMOK」をいただいた。その音は彼らのライヴそのもののノイズ/グラインドコア/ハードコアが混ざり合った超弩級の激音ノイズだった。その後もヴォーカル氏は灰野さんのライヴに現れ、TOKYODIONYSOS 2012への出演交渉をしていたようだ。
そのGW最終日のイベントには来日中のスイスのノイジシャンを加えた7組が出演。この前に目白で宮下省死さんの舞踏公演を観たので、最初のバンドJADOO は観れず、2番目のRUNZELSTIRN&GURGELSTOCKからの観戦。名前からてっきりデュオだと思ったらソロで、長髪の男性が手にコントローラーを兼ねたグローブをはめ、椅子に座ってパソコンの音源を操作する。手の動きでサウンドが変化する。最後は立上がって激しい身振りで爆音を響かせる。会場で会った知人に聞くと彼はハナタラシとの共演LPも出しているRudolf EB.ER氏その人でここ10年間京都に在住しているとのこと。長髪はかつらで実はスキンヘッドだという。
3番目はSWARRRMという日本人4人組グラインドコア・バンド。比較的コード進行のはっきりしたサウンドとデス声で絶叫するヴォーカルは悪くない。この日の出演陣の中では最も聴きやすいバンドだった。
4番目がENDON。ds,g,noise×2,voの5人組。ギタリストの目の前で観ていたのだが、前髪をたらしたシューゲイザーっぽいルックスにも関わらず演奏が始まるとド派手なアクションで容赦ないノイズを巻き散らす。”容赦なし”というのが彼らの特徴で、ドラムはハードコア風、ギターはグラインドコア風、ノイズの二人はインキャパ/メルツバウ直系、ヴォーカルはヴァイオレント・シャウターだがこれらが渾然一体となって混じり合ったサウンドは過激な騒音の塊である。ヴォーカル氏は前回程暴力的ではなかったが、最後に一番前でノッてた客につかみかかり客席で乱闘するという挙に出て面目躍如。やられた客がどつき返すやりあいは果し合いの様で面白かった。若い女性客が数人最前列で踊っていたのが意外だった。
続いて灰野さんとGUAZEのドラマーHIKO氏のデュオ。灰野さんとHIKO氏の共演は昨年1月亀川千代氏を加えたトリオ編成で観ているが、今回は完全なガチンコ勝負であり、ハードコア・ドラムに真っ向から挑む激しいギタープレイが炸裂。アクションも3日前の生誕記念公演の時より数段激しく、突っ走りまくりの演奏に惚れ惚れした。灰野さんの世界にどっぷり浸れるソロや不失者は最高だが、このような、特にハードコア系のミュージシャンとセッションする時の灰野さんの気合いの入り方は尋常ではない。殺気漲る演奏は世界中の意識的なミュージシャンからリスペクトされる所以である。共演したミュージシャンが口を揃えて「Hainoは凄い」と言うのはこの一発触発の気合い故なのだろう。先日の非常階段との共演の時にも感じたが、HIKO氏のドラムは共演者の本気を引き出す誘発力に満ちているため、灰野さんの意識はいつも以上に研ぎ澄まされたに違いない。素晴らしくシャープで緊張感に溢れた30分間だった。このデュオはいつかまたもっと長い時間観てみたい。
次はSDLXの「ド・ノイズ 5」にも出演したスイスのFRANCISCO MEIRINO aka PHROQ 。照明が真っ暗になりラップトップ・ノイズが流れ出す。FRANCISCOは時々客席へ降りてきて出音を確かめているのか、自分の音に聴き惚れているのか、その表情からは何とも読みとれない。
トリは同じくスイスのDAVE PHILLIPS(ex,FEAR OF GOD)。「ド・ノイズ 5」ではASTRO氏とデュオで演奏した人だ。スクリーンに日本語の警告と動物虐待の映像を流し、その中で電子雑音を奏でながら息の音や囁き声、絶叫と電気加工されたヴォイスが響く。映像とのコラボレーションがピッタリでまるでノイズ版ドラびでおといった風情が興味深かった。
ノイズ・イベントとはいってもバンド有りセッション有りピュア・ノイズ有りの楽しめるイベントだった。ENDONの企画力/プロデュース能力には今後も注意を払っていきたい。
暴虐の
果てに見えるよ
永遠の光
ドリンク・カウンターのある別室では各アーティストが物販を行っており、じっくり見たかったが、喫煙室でもあるのでタバコ臭くて耐えられないのが辛い。