JOJO広重さんを最初に観たのはいつだったか記憶を紐解いているのだが定かではない。
初めて挨拶したのは2003年6月代官山クラシックスでJunkoさんとのデュオを観た時である。買ったばかりのMDで初めてライヴを録音したのがそのデュオだった。そのころ既に坊主頭にがっしりした身体で近寄りがたい雰囲気を持っていたJOJOさんに恐る恐る「相談があるので連絡先を教えて下さい」と声をかけたところ、快くメールアドレスを教えていただき感激した覚えがある。
同じ年の8月に吉祥寺Manda-la2でJOJOさん+故・小沢靖さん(不失者)+トシさん(頭脳警察、Vajra)のセッションがあるのをたまたまメルマガで当日知り会社を早退して観に行った。当時はTwitterなどSNSはまだなかったのだ。小沢さんが不失者以外でベースを演奏するのは初めて、という貴重なライヴだった。三つ巴の硬派なインスト即興に大いに感銘を受けた。
ソロで一番印象的だったのは2005年11月の東京大学駒場祭での野外ライヴだった。焼きそばやクレープの屋台が並ぶ中メイン・ステージに現れたJOJOさんは、それまで学祭で何度も揉めてきた思い出を語った後、轟音ノイズ・ギターに「生きている価値なし」「みんな死んでしまえばいいのに」「俺も死ぬから君も死ね」などという絶叫ヴォーカルを大音量で演奏し、平和ボケした大学祭の空気を暗黒の混沌に塗り替えた。隣で観ていたサックス奏者の浦邊雅祥氏がしきりに「ジョー!」っと掛け声をかけていたのを覚えている。学生有志の企画で開催された第1回のイベントだったが残念ながら第2回が開催されたという話は聞いていない。
その後もいろいろなイベントで非常階段以外のJOJOさんの演奏を年に数回のペースで観てきた。最後に観たのは昨年末新宿ピットインでの大友良英氏とのデュオだった。
非常階段での鬼畜演奏に比べ、ソロで歌ものを聴かせるJOJOさんはホントに気のいいおっさん(失礼!)という風情で、単行本「みさちゃんのこと-JOJO広重ブログ2008-2010-」としてまとめられた彼のブログやTwitterのつぶやきでイメージされる優しい雰囲気そのままである。非常階段ではいつも途中でギターを放り出して客席へ突入してしまうので、JOJOさんのギター・プレイを落ち着いて聴けるのも嬉しい。
今回はJOJOさんがプロデュースした女性アーティスト・コンピCD「日曜日のうた」で紹介された穂高亜希子嬢との2マン・ライヴである。私のライヴ友達には穂高嬢のファンが多く、皆からいいから聴いてみろと言われていたのでいいチャンスだった。案の定会場には熱心な穂高ファンの知人が数名来ていた。観客は10名程度で真正面でゆっくりと観ることが出来た。二人の椅子が並んでセットされているのでデュオをやるのかと聞いたら最後に少しやるとのことだった。
最初にJOJOさん。Bar Issheeは2度目の出演で、マスターのイッシーさんと昔のロックやプログレのレコード話が弾んだと言う。レナード・コーエンの「ハレルヤ」からスタート。生音に近いサウンドだったのでこの会場ではノイズ・ギターはやらないのかと思ったら途中でファズを踏み込みかなりの音量の歪んだギターを聴かせる。譜面台の歌詞の束からランダムに選びだして唄う。先週ライターの岡村詩野さんのラジオに出演した時、JOJOさんの女性の好みが昔から変わっていないことを指摘されたという。森田童子、佐井好子、エンジェリン・ヘヴィ・シロップ、Doodles、とうめいロボや穂高さんまで一貫してブレがない。そんな話をしながら森田童子の「淋しい雲」「逆光線」を、昨年名古屋で早川義夫さん(+山本精一氏)との共演の夢が叶ったと語り早川さんの「サルビアの花」を、自分の曲とコード進行が同じことに気が付き驚いたという山本精一氏の曲のさわりを、と次々カヴァーを披露。後半は新曲を含む自作曲を聴かせ、最後はINU(町田町蔵)の「メシ喰うな」に続けてオリジナル「神を探しに」という圧巻の流れで1時間強の演奏は終了。かつてJOJOさんを始めとするアルケミー・レコードの作品をメジャー発売したテイチクのディレクターが久々に連絡をくれたので年内には7年ぶりの新作をリリースするかもしれないとのこと。
続いて穂高亜希子嬢。フォーク・ギターで静かな弾き語り。とうめいロボの近藤千尋嬢に似た儚げながらしっかりした歌を聴かせるところがJOJOさん好み。その清浄なメロディと歌声は工藤礼子さんや渚にての竹田雅子さんを思い出させる。穂高嬢も2度目の出演だがBar Issheeはとても雰囲気が良く演奏しやすいと語る。お疲れの方もいるから短めに、と言いながらも新曲を含む1時間の演奏。皆がいいというのが十分納得できる素晴らしい演奏だった。今週土曜日には四谷喫茶茶会記で石橋英子嬢との2マンでピアノの弾き語り。昭和初期のムードたっぷりの古風な会場で聴くとまた違った魅力が味わえるに違いない。そういえばピーター・ハミルもギターよりもピアノの弾き語りの方が味があったなぁ。お時間のある方はぜひ足を運んでみてはいかがか。
そのままJOJOさんが加わりデュオ演奏に。森田童子の「みんな夢でありました」、続いてアンコールに穂高嬢のオリジナル「いつか」の2曲を演奏。穂高嬢の天使の歌声に絡みつくノイズ・ギターが聴く者を天上へ導くような極上のデュオだった。
美女と野獣
そのままかもね
今宵のふたり
4月のJAZZ非常階段が好評だったので9月に再び新宿ピットインへの出演が決まったらしい。さらに強力なゲストが参加するようなので大期待。3列目だけは避けて(笑)観戦したいと思う。4月のライヴCDと非常階段としての新作も合わせてリリース予定。ますます盛んなJOJOさん周辺の活動から目が離せない。