グローバルネイチャークラブのガイド日記

グローバルネイチャークラブ(旧グローバルスポーツクラブ)のガイド仲間が観察した伊豆大島の自然の情報を中心にお届けします。

「伊豆アイランドツーリズム研究会ミーティング報告」最終回。

2015年03月10日 | 火山・ジオパーク
2月26日のミーティングの報告は、午後の3回目の講演から。

講師は島しょ農林水産総合センター八丈事業所の堀井善弘氏。
「泳いでいないと生きていられない魚と同じような方」と八丈島の人々から評されるほどのアクティブな人だそうです。


「日本の海の広さは世界6位、陸の広さは世界60位。島があるからこそ広い海を日本が持っていると言える。太平洋プレートの沈み込みでできる海底火山がいっぱいあるのが特徴で、海の中の火山を渡っていけばグァム島まで行ける」by堀江氏。

なるほど!
・・・なんともダイナミックな話です。

「海溝は9.000mの深さがあり、伊豆諸島で一番高い八丈島の山の標高は800m、標高差10.000mの火山が連なっている」by堀江氏。

こうしてみると、海面に見えている伊豆諸島は、海底の巨大山脈のごく一部なのだと良くわかります。

黒潮の過去の流路を描いた図も、紹介してくれました。

黒潮の蛇行の幅がスゴイです。

そして「伊豆小笠原諸島における漁獲量の推移」が衝撃でした。

大島ではタカベが激減しているとのことです。

漁獲量は八丈島がダントツ多いですが、それでも減っているとのこと。


一方、貝類がとれるのは大島、利島、新島までのようで・・・


それより南の海で、貝がとれなくなった原因として、海藻の減少があるようです。

「原因としては水温上昇や汚染による栄養塩の上昇などが考えられるのかも?」というお話でした。

カツオの漁獲量も激減しているそうで、八丈島の例を取ると・・・


カツオは黒潮の流れに乗って回遊すると思っていたら、その回遊ルートは複数あるそうです。


でも、どのルートも赤道域が産卵域とのこと。


昔はその海域では竿による一本釣りが主流だったのが、近年になり巻き網で、魚のサイズに関係なく一網打尽にする漁法が増え、漁獲量が増加。


ツナ缶、猫缶の原料としての需要が背景にあり・・・


まだ小さなカツオが鰹節として加工されていたりするとのこと。

この映像は、結構衝撃的でした・・・。

次に伊豆諸島の漁業に共通する魚、キンメダイです。

伊豆諸島より、静岡県(伊豆半島?)の方がとれているのですね!
知りませんでした~。

キンメダイは長い間、どこで繁殖しているのかが謎だったそうですが、最近になって伊豆諸島海域が重要な産卵場であることがわかったのだそうです。

卵は浮いて海面を漂い、成長にともない体重が重くなって沈んでいくとのこと。

まとめとして・・・

「今日を『伊豆諸島比較海洋生物学』事始めとしたい。」とのことでした。(拍手!)

3つの講演終了後、全員がグループに分かれ、グループ討議を行い「この日学んだこと」や「これからしたいこと」を話しあいました。本当に様々な意見が出ました。

たとえば・・・
「マグロ、カツオの資源減少。東南アジアでのトロールは中止になったが、巻き網は中止になっていない。声あげるべき。」

「どの島も貝類減少している。栄養分のある石などで海藻を増やすという方法を聞いたことがある。環境を変えてしまうのも人間だが、再生できるのも人間かなと。」

「伊豆諸島って、みんな自分の島のことを考えているが、一致団結して全体を考えないと行けない時期に来ている。ひとつの島ではなく、守っていく方向を作れたら良い。」

「伊豆諸島が共通で動けるキーワードは何か?」
「伊豆諸島ジオパーク」→「ジオパークは競争ではなくネットワークで、みんなでやっているのが良い点」
「伊豆諸島国立公園」
「伊豆諸島博物館 」など

「大型船で全島回れるクルーズがあれば・・・」→「クラブツーリズムがヘリで全島回るツアーやっている」
「全部いっぺんにできなくても、一度に複数の島を回るのはどうか?」
「船に研究者を乗せて行くツアーも良い」
「伊豆諸島には文化があるのだからそれを売り物にしたら? 」
「それぞれの島が何を売りにしているかコンテンツを明確にし、竹芝などでも売り出せるかも。」
「他の島をどれぐらい知っているか、他を知ることで自分が見えてくるのではないか?」
「船の航路をいかに有効に使うか?」

「海が荒れて船で帰れないのはデメリットだが、延泊したらお得と見せていくことはできないか?」→「八丈島では2日間丸々欠航したら、『流人の宴』を開いて、みんなで接待している。『欠航して良かった』という発想をもってもらえたし、島のPRもできた。」

伊豆諸島のみんなで語りあったフォーラム。午前で帰られた伊藤和明氏の他にも、東海汽船、三宅支庁、大島支庁、JGC中川氏、火山大好き漫画家の鈴木みきさん等、さまざまな人が参加してくれました。

来年も各島代表のミーティングを重ね、もう少し規模の大きいフォーラムをしようと話しています。皆で今回の出会いを、どのように発展させていけるか楽しみです。

ということで、かなり遅くまでかかりましたが、全3回の報告を終わります。

ちなみに、鈴木みきさんもブログに、この日の報告をあげてくれています。
http://ameblo.jp/suzukimiki/entry-11994927444.html
彼女の夢のひとつは、伊豆諸島の7つの山を登り「セブンサミッツ」を制覇することなのだとか。海底から考えると高い山が多いから、それってなかなか良いかも!

(カナ)
コメント
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