グローバルネイチャークラブのガイド日記

グローバルネイチャークラブ(旧グローバルスポーツクラブ)のガイド仲間が観察した伊豆大島の自然の情報を中心にお届けします。

「2020世界災害語り継ぎフォーラム」1日目

2020年01月28日 | 火山・ジオパーク
今日から数回に分けて、私が「2020世界災害語り継ぎフォーラム」に参加して印象に残った話や発表を綴ろうと思います。(「ジオパークと語り継ぎ」の分科会座長をされた時事通信の中川和之氏のメモを参考に、まとめさせていただきます)

まずは、1月24日(金)の公開シンポジウムの様子から…。

(写真は開始時間前)

堀内正美氏(俳優、神戸市在住)の基調講演
実体験を通しての語りは、当時の光景が目に浮かぶようで惹きつけられました。その中でも震災の後、瓦礫の街と化した風景に呆然としていた時、神戸大空襲を経験した人から「全てなくなってはいない、まだ残っているものがある」と言われた…という話が印象的でした。冷凍庫に残っていた食材を使って雑炊を作り、自分たちでできることをやろうという知恵が出てきた。生き残った人たちで支え合ってきた…とのお話でした。

ブルームワークス(歌手)のパフォーマンス
歌手の2人のうち1人は防災士、1人は大学院で防災の研究をしている研究者。
学校や地域で音楽を交えた防災講演を多数実施しているそうです。

「試着室に行って悲しいのは裾上げをしてもらう時」の歌詞に最初「?」と思いましたがそれは…

身長171cmの彼氏の気持ちから日本人男性の平均身長へ、そして災害ダイヤルに繋がっていきます。


若者が集まる彼らのイベントでは…

91%が「防災意識が向上した」という結果が出ているそうです。

彼らは「ポップでキャッチーで365日聴ける歌を作ろう」と心がけ、歌を通して震災を知らない人、関心のない人にもメッセージが届くように活動しているそうです。

真面目で楽しい若者たちのチャレンジに感心しました。
(ブルームワークスについてもっと知りたい方はこちら

加川広重氏(画家 東日本大震災の記憶を絵画で語り継ぎ)の作品展示とトーク


迫力のある壁一面の絵が、映し出されました。

「雪に包まれる被災地」の絵です。
いつかぜひ、本物の絵を見てみたいと思いました。
(加川氏についてくわしく知りたい方はこちら

パネル討論
河田惠昭氏(座長)(人と防災未来センターセンター長)
「25年を迎え、これから語り継ぎは大変難しい。世界各国から語り継ぎ活動の情報もあるが、継続するにはどうすればいいか?」

深澤良信氏(世界災害語り継ぎネットワーク事務局長、元人と防災未来センター副センター長)
「心に響く語り継ぎ、感動を呼ぶ語り継ぎが心に刺さって、記憶に残り、伝わっていく。人防の800点の展示物は一つずつ大事なもの。私のお気に入りはペットボトル2つ。震災の翌日に、友達がバイクの後ろに2カートン乗っけて届けてくれたものの残り2本だという。被災地の人が水を届けてくれて嬉しいという気持ち、感謝が展示されている。それが私には深く心に響く。ペットボトルですら媒体になる。アート、絵画、音楽も。災害体験を“我が事”につなげたい」

シティ・マグフィラ氏(アチェ晃月学校協会)
「2004年12月の津波で2000人以上の方が亡くなったアチェ州のセミル島。震源地のそばの小さな島でだったが、犠牲者は6人のみだった。なぜなら1907年の津波の語り継ぎをやってきたから。津波の歌(祖父母から聞いていた)、紙芝居、映画や劇を通して語り継ぎ。子どもに教訓を伝えていくことが重要。我々が経験したことを彼らに経験させてはいけない」

坂口奈央(東北大学大学院文学研究科)
「岩手県の震災記録誌『いきるあかし』のお手伝いをした。250ページの中に『町民の声』を100人以上載せた。大槌高校の高校生が13名参加し、大人の聞き取りをした。震災時には8-9歳だった高校生たちは2011年の記憶が失われかけていたが、1日3-4組に聞き取りをする中で意識に変化が見られ、自分たちで考えて質問するようになった。大人たちは自分たちのやってきたことを振り返る場にもなった。震災からかけ離れた場に居た大学生にも手伝ってもらい、インタビューが伝承の場になった」

イブラヒム・コモオ氏(世界ジオパークネットワーク副会長)
「ジオパークは2000年に始まった非常に新しい取り組み。ジオパークの多くは災害に関係しており、どこのジオパークにも解説看板があって災害のストーリーも知ることができる。解説看板は、科学者に対してではなく一般市民のためのもの。教育も重視しており、子どもたちや観光客が学ぶことが出来る出版物もある。ジオツアーとして伝える場を作り、コミュニティが観光資源になっている。多くのジオパークには、アートや文化的な活動がある」

西野恭子氏(独立行政法人国際協力機構関西センター(JICA 関西)所長)
「HAT神戸に拠点があり国際協力を行っている。兵庫県と共同で国際防災センターを維持し、121カ国から3000人が学んでいる。阪神だけでなく日本の災害の教訓を共有、参加した国同士も繋ぐ。研修ででかける気仙沼市の震災伝承館では、中学生の語り部から学び。中学生自身が「世界に役立つ」と体感する機会にもなっている。資料や映像で知ることは出来るが、生の声を聞くことに意義があるという声が多い。青年海外協力隊の事業でも防災啓発の教材を使って、わかりやすく楽しく伝える活動をしている」

以上のような様々な取り組みの発表の後「これからどう継続させるか?」が話し合われました。

そして河田氏から具体的な提案がありました。

「始めに小さい運動でも育てていけば必ず大きくなる。語り継ぎは当面は文章、それを審査して発表会をしてはどうか。絵本にして幼児教育にいかす。各国語に訳し、子どもたちが大人になっても忘れないようにする。5年に1度は世界災害語り継ぎフォーラム。教訓をいかに後世に伝えて活かすか」

これに対し、パネラーの皆さんからは
「子どもを通じて周りのコミュニティにつながる。絵本の話が具体化したら、青年海外協力隊の活動の中で使って、地域の皆さんに防災の教育が出来る。100カ所ぐらいの事務所があるので、現地に拡げることは出来るのでは」
「ユネスコ世界ジオパークで協力できる。41の国に147のジオパーク。絵本を展開できる。協力して行ければと考える」
「提案だが、審査をする人が中高生がやったらいいと思う。審査をすることで興味を持つ。青少年記の体験は将来を左右する。中高生なら刺激的な感性でモノを見抜くのでは。そこを挑戦的にやってみてはどうかと思った」
「絵本に於いては、たくさんの場所、被災地の経験が共有できるものになれば。子どもが登場して、子どもたちが理解できるようになればいい。アーカイブのようになってしまうと、どうかとは思う。ストーリーを伝えるようなものになればいい」
「日本で始めてもいいが、国際展開を念頭に始めるべき。テルネットの代表としては、他の国の方もそれぞれの国で同じようなことをやって欲しい」
などの意見が出ました。

最後に河田氏から以下のメッセージがありました。
「続けなければいけない。次の語り継ぎフォーラム、2025年を目標にやりたい。目標を持たないと行けない。将来にどうつなげるかを念頭に議論していただきたい。絵本だけ残ってはダメ。絵本はきっかけと考えている。殺伐とした話だけだと暗くなる。文化にしないといけない。その可能性を追求しながら輪を拡げないと。楽しく生きたいので、ネガティブなことを忘れたいのが人間の本能。風化が進むのは当たり前。新たな教訓を自分のモノにするために、テルネットの努力がつながって行けば嬉しいと思う」

今回のフォーラムの様子は、3月14日午後2時からeテレで、放送されるそうです。

今回私がまとめたものは、ほんの一部。
詳しく知りたい方は、ぜひ番組をご覧ください。

(かな)
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