グローバルネイチャークラブのガイド日記

グローバルネイチャークラブ(旧グローバルスポーツクラブ)のガイド仲間が観察した伊豆大島の自然の情報を中心にお届けします。

サクユリ写真展と、サクユリの物語

2023年09月12日 | 植物
岡田港2階にある「ジオステーション岡田」で、サクユリの写真展が始まっています。

(サクユリを守る会主催・伊豆大島ジオパーク推進委員会協力。9月27日まで)

サクユリ は、伊豆諸島にのみ自生している固有のユリです。

大島ではウイルスやキョンの食害、人による盗掘で数が減っているとのことで、2018年から「サクユリ を守る会」が活動を続けており

その活動も報告されていました。

今年7月の観察会は、大島町の広報誌にお知らせが載っていたので、私も途中参加で見に行きました。
別の植物も観察したかったので、皆さんとは別のルートから歩き始めたのですが、

花はまさに最盛期。
溶岩地帯に咲き誇り、

マグマのしぶき(スコリア)が積もった、比較的フラットな地面にも咲き誇り、

他の草よりも、ひときわ高く伸びたた茎のてっぺんに、大輪の白い花をたくさん咲かせた個体は、神々しいほどでした。

場所によっては、ウィルスにやられて弱ってしまったのか、蕾のまま花が咲かずに萎れているものもありましたが

でも、たくさんの見事な花を、楽しませてくれました。

植物がほぼ生えていない場所を抜けて、観察会が行われていた「白石山」の麓に向かいました。


1km以上歩いて、観察会地点に着いた時には、柵の中の株を皆さんで数えている最中でした。

サクユリを守る会の方々が、環境省の協力で、種子を撒き、柵をして、キョンの食害からサクユリ を守りつつ、観察を続けているのですが

この日は、まだ小さな株が多く、花はあまり目立ちませんでした。

そして柵の外の株を数えていたジオパーク事務局のUさんが、衝撃的な事実を教えてくれました。
なんと「柵の外は全て、キョンに蕾を食べられてしまっている」というのです!

それを聞いて私も周囲を観察してみましたが、確かに茎の先端は見事に無くなっていました。

花がたくさん咲いている場所と、花が無くなった場所の違いは何なのでしょう?

花が見られなくなった原因をキョンの気持ちになって考えてみると、観察会の場所近くは草丈が延びていて、斜面を駆け上がれば「白石山」という緑の山があるので隠れやすい、ということなのかもしれません。
警戒心の強いキョンは、わざわざ危険を犯して、食べ物のない場所には来ないのかも?

それとも、いつか強者のキョンが、黒い大地を横断して、このサクユリの花を、全て食べてしまう日が来るのでしょうか?

それとも、キョンの食害どころではない”噴火”という大きな出来事で、あたり一面が焼き払われる日の方が近いのでしょうか??


2023年の花の時期は、もう終わってしまいましたが、岡田港でサクユリの写真を眺めつつ、伊豆諸島でしか見られない美しいユリの未来の物語に、思いをはせてみてはいかがでしょうか?

(今日の岡田港での展示写真は全て、ジオパーク事務局のUさんからいただきました)

(かな)

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