日本外国特派員協会での記者会見。なぜ東京オリンピック・パラリンピックが止められるべきか、その理由を女性たちが明確に伝える。
日本は企業優先社会である。民間企業は「悪」のし放題である。政府や自治体は、その「悪」を規制しようとは思わない。首長や保守系の議員が企業とつるんでいるからだ。それに新自由主義的経済政策により、民間企業への規制は「緩和」「撤廃」されていったからでもある。
熱海の土石流被害も建設残土の問題でもある。この問題を規制しなければ同じようなことが起きる。
政府や自治体は住民の味方ではないのだ。
土はどこから
変わらない日本の社会が変わるためには、男性優位主義=マチズモが消えなければならないと思うようになった。 ちょうどそれにふさわしいような本が発売された。武田砂鉄の 『マチズモを削り取れ』(集英社)である。早速それを読んだ。
武田の文章はネチネチしていてあまり好きではなかった。『日本の気配』は、だから中途でやめた。しかし本書は、なかなか面白かった。
構成は 1自由に歩かせない男、2 電車に乗るのが怖い、3 男女という区分、4 それでも立って尿をするのか、5 密室に他人が入り込む、6なぜ結婚を披露するのか、7 会話に参加させろ、8 甲子園に連れて行って、9 体育会という抑圧、10 寿司は男のもの、11 カウンターと本音、12 人事を握られる、である。いずれも『スバル』に、2018年から2020年まで連載されたものを単行本化したものである。
女性の独り歩きが安心できないこと、痴漢行為があるために電車に乗るのが怖いこと、それが1と2である。日本は安全な社会だとは言いながら、女性にとっては常に緊張が強いられる。駅構内を歩いていれば、ぶつかり男にぶつかられる。電車には痴漢がいる。読んでいて、電車については、これは都会の話であると感じた。コロナ禍のもと、電車には乗らなくなったが、静岡県内の電車は朝の通勤時間を除き(といっても東京の混み方とは異なる)、空いているので、痴漢はありえないだろうと思う。
なるほどと思ったのは、4である。立って放尿するだけで、尿は周辺にまき散らかされるという実験結果が記されていた。ならばやはり坐っての放尿があるべき姿なのだと思った。公衆便所の男子トイレには、よく「一歩前へ」と記されているが、確かに便器の前は尿で汚れているところが多い。気を付けなければならないと思った。
結婚披露の問題。私は20代の頃、友人の結婚式に出席した。そこで友人と奥さんが相合い傘で高いところからゴンドラで降りてくるという仕掛けを見た。それをみて私は結婚式はやらないと決め、それを実行した。あんな馬鹿らしいことはすべきではないと思ったからだ。学生時代に出席した結婚式は会費制であった。あれはよかった。友人が結婚するというので、会費制の結婚式を企画したことがある。業者が企画する結婚式は、少なくともすべきではない、というのが、私の結論である。
8,9は学校の部活動の問題である。部活動は「封建制」が生き続けている。もちろんマチズムは大手を振っている。本書では「女子マネージャー」問題を扱っているが、本人達は好きでやっているというが、あれはひどい。洗濯から何から何まで、本来自分たちがすべきことを女子マネにやらせている。男は外、女は家で家事育児というパターンをなぞっているように見えた。それ以外に、「先輩後輩」の関係、指導者と被指導者の関係、いずれも強烈なタテ関係、上意下達が貫かれる。日本をダメにしている原因の一つが、この部活動である。このタテ関係で生き抜いていた男性を、企業は好む。高校や大学への進学に、「スポーツ推薦」があるように、企業でも「スポーツ枠」というものがある。学校で徹底化されたマチズムや上意下達が、企業でも「有効利用」されるのである。
10は寿司屋の話。確かに寿司を握っている人のなかに女性を見かけたことはない。また私は寿司屋に行ったことはあるが、ものすごく高価な「お任せ」を注文したことも一度もない。もちろん仕事の関係での接待みたいなものも経験がない。だからここで描かれた世界を、私は知らない。本書によると、寿司職人の世界も部活動なのだそうだ。上意下達、「上官の命令は天皇陛下の命令と心得よ」と、理不尽な命令も「承詔必謹」の世界のようだ。そして寿司屋の客も、マチズム。女性が来ても、男性に連れられて来ている、そして男性社会の脇に置かれた一輪の花の役割しかなく、男どもの会話には入れない。男の自慢話を聞くだけ?
11はスナックのはなし。これを読んでいて、私とは関係のない話だなあとつくづくと思った。酒を飲めない私は、酒を飲む場に参加しない。本当にやむを得ない時だけだ。スナックなんかもほとんど行ったことがない。バー、キャバクラなどというところには行ったことがないので、私自身は男世界から離れて生きてきたことを納得した。著者の武田もそういう人物のようだ。
12の人事の話は面白かった。考えてみれば、在職中同僚が管理職などと酒をのみに行くという話を何度も聞いていた。私は行かない。私は酒を飲めないし、歴史研究を仕事の傍らでしていたので、そんな時間があれば本を読むことにしていた。それに分担していた家事もあったから、勤務時間外に家の外にいることは少なかった(大規模な歴史編纂事業に参加したときには、よく二泊三日で史料調査に参加することはあったが、それだけだ)。この項目の中に、「男性が出世しやすいのって、ずっと、そこにいてくれるからなんです」という文言があった。なるほど、管理職といつも、勤務時間外も含めて一緒に「いる」人が、確かに管理職へと進んで行っている。
「どんな仕事をするかではなく、どのように仕事場に「いる」かを優先させれば、労働生産性なんて高まるはずがない」という文言もあった。納得である。私は早く帰宅するために仕事をさっさと片付けていったが、そうでない人も多かった。勤務時間が終わっても帰らずにだらだらしていた。たしかに労働生産性はあがらない。
さて男性優位社会の断面は、本書には書かれていた。だがその社会を理論的に説明し、その社会からの離脱の方針はほとんど記されていなかった。男社会に混じらなかった私は、描かれている断面に素直に驚くと同時に、記されていることに同感するところが多かった。
男性優位社会が崩れるところに日本の未来は拓かれていくという私の思いは、さらに強くなった。
おもしろい本であった。ある意味で入門書というところかもしれない。
「僕のウイルスは変異株ですか?」という記事に驚いた。まだウィルスの型を調べてないんだ。
しかし、国会答弁で4月に、調査件数の割合を引き上げるとスカは言っていたのに。
この事態を招いたのは、厚労省の医系技官、それにつらなる者たちだ。彼らの無為無策を、政治は変えられないでいる。
このまま地獄へ進むしかないようだ。