浜名史学

歴史や現実を鋭く見抜く眼力を養うためのブログ。読書をすすめ、時にまったくローカルな話題も入る摩訶不思議なブログ。

行政の怠慢

2022-05-06 18:25:29 | 社会

 知床の観光船事故、その船を運航していた会社の問題が次々と明らかになっている。通信設備の不備、運行記録をきちんと記していない、運航管理者である社長にはその資格がなかった・・・・・などなど。

 しかしそういう杜撰な経営をしていた会社に対して、行政はきちんと監視していたのか。無線通信が使用できない状態のなか、監督官庁は携帯電話でもOKと許可した。監督官庁は携帯電話がきちんと通話できるのかどうかを確認せずに許可した。海上保安庁は、きちんと点検し監督していたのか、私はしていなかったと思う。「なあなあ」路線で、点検もせずにゴーサインを出していたのではないか。

 それは熱海の土砂災害でも言える。熱海市や静岡県は、土砂を持ち込んでいた業者に対して厳しい指導をしていなかった。

 まあ熱海の場合は想像できる。公務員の転勤は3年ごとくらいにおこなわれる、その3年間を無難に勤め上げることが公務員の習いである。業者に厳しい指導を行えば、後任の公務員もそうしなければならなくなる、それはやめたほうがよいだろう・・・波風を立てずに3年間を過ごす、後任のためにも仕事を増やさない、ということが習性となっている。

 そして公務員は、新自由主義的「改革」のなかで大きく数を減らしている。

 次々起きる事故の背後にあるものをきちんと是正しないと、同じような事故が起きるだろう。公務員を増やし、仕事をきちんとやらせることが事故を防ぐことになるはずだ。

 

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何を基準に考えるのか

2022-05-06 09:36:57 | 国際

 戦争に至るプロセスには、当事国同士とその関係国をめぐる経緯が含まれているはずだ。そのなかには欺罔や策略など不当なことも含まれていることだろう。したがって、後世において、なぜ開戦に至ったかということは様々な資料を照合させながら解明されていくことだろう。

 今回のロシアによるウクライナ侵攻にも、そうした経緯がある。だから論者にとっては、ロシアに開戦を決意させる何ごとかがあり、またウクライナ側にも攻撃される何らかの原因があるという説、あるいはロシアが侵攻してきたときには殺戮と破壊を防ぐためにロシアの要求を呑み戦闘を避けるべきだという説などが飛び交っている。

 私はそうした説の存在を無下に否定するわけではないが、しかしこれだけははっきりさせておかなければならないと思う。

 いかなる理由があったにせよ、ロシアによるウクライナ侵攻は侵略であるということだ。それは国際法を踏みにじる行為である。

 国連憲章第2条の4には、「すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない。」とあり、ロシアの軍事侵攻は、即アウトである。

 そして1974年、総会の決議(3314)がある。やむを得ず、ウィキペディアを使う。

第3条

(侵略行為)

次に掲げる行為は、いずれも宣戦布告の有無に関わりなく、二条の規定に従うことを条件として、侵略行為とされる。

(a) 一国の軍隊による他国の領域に対する侵入若しくは、攻撃、一時的なものであってもかかる侵入若しくは攻撃の結果もたらせられる軍事占領、又は武力の行使による他国の全部若しくは一部の併合

(b) 一国の軍隊による他国の領域に対する砲爆撃、又は国に一国による他国の領域に対する兵器の使用

(c) 一国の軍隊による他国の港又は沿岸の封鎖

(d) 一国の軍隊による他国の陸軍、海軍若しくは空軍又は船隊若しくは航空隊に関する攻撃

(e) 受入国との合意にもとづきその国の領域内にある軍隊の当該合意において定められている条件に反する使用、又は、当該合意の終了後のかかる領域内における当該軍隊の駐留の継続

(f) 他国の使用に供した領域を、当該他国が第三国に対する侵略行為を行うために使用することを許容する国家の行為

(g) 上記の諸行為に相当する重大性を有する武力行為を他国に対して実行する武装した集団、団体、不正規兵又は傭兵の国家による若しくは国家のための派遣、又はかかる行為に対する国家の実質的関与

 以上のように「侵略行為」は明確に定義されていて、ロシアの軍事侵攻はまさに「侵略行為」である。プーチンと一緒に未来をみつめていたもと日本の首相アベは、2003年、「侵略の定義は定まっていない。国と国との関係で、どちらから見るかで違う」と答弁したが、なるほどプーチンと仲良しであるはずだ。ロシアは、国際法的には「侵略」そのものを「侵略」とは認めないだろうから、アベとプーチンは足並みを揃えているともいえよう。

 ロシアのこの侵略は、現代において最悪の行為である。戦争をやめさせるために先ず必要なことは、ロシアが戦闘行為をやめて軍隊を引き揚げることである、これがまず先行されなければならない。これがあってはじめて停戦は可能になる。この一点に向けて国際世論はまとまらなければならない。

 ロシアの軍事侵攻の原因をあれこれ論ずるのは停戦になっでからの作業であろう。侵略の前であれば議論は可能だったが、しかしすでにロシアは国際法を破って侵略に走ったのだ、ウクライナ側に問題があったと論じて、いったいそれが何になるのか。

 またロシア側の要求を呑んでウクライナは抵抗をやめるべきだという提案もあるが、それはウクライナとその国民が決めることである。なお侵略に対する自衛権は、国連も認めていることである。

第51条

この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。この自衛権の行使に当って加盟国がとった措置は、直ちに安全保障理事会に報告しなければならない。また、この措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持又は回復のために必要と認める行動をいつでもとるこの憲章に基く権能及び責任に対しては、いかなる影響も及ぼすものではない。

 今回のロシアによる軍事侵攻は、当初からウクライナ市民の殺害、生活の場の破壊から開始された。軍事施設のみへの攻撃だけであったなら、こうした激しい抵抗は起きなかったかも知れない。ウクライナの激しい抵抗は、ロシア側が招いたともいえよう。

 以上のことは、このブログで何度も書いてきた。こうした事件を考えるに際しては、厳密に国際法にもとづいて考えられなければならない。「どっちも悪い論」、「早期降伏論」は、原理原則に基づかない議論であると思う。いろいろな議論はなされてもよいが、しかしロシア=プーチン政権のウクライナ侵攻は暴挙そのものであり、即刻停止されなければならない事態であることを前提に組み立てられなければならない。

 「ロシアによるウクライナ侵攻」に一定の理解を示す者がいるが、私はその人には、「だまれ!!」というしかない。

 

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