『現代思想』に収載されている論攷をほとんどすべて読み終えた。2月24日にロシアによるウクライナ侵略が始まり、この特集を企画したのだろう、執筆者の執筆時期は4月20日前後が多い。この短期間にこれだけの原稿を集められたことに敬意を表したい。
数編だけ冗長なものがあったが、多角的な視点からこの侵略を捉えようとしていて、とても参考になった。
この本がどれほど売れているかはわからないが、これを多くの人が読むことは、この侵略を理性的に把握することに大きく寄与すると思う。
ここには、れいわ新選組のように、バイデンが戦争をながびかせているというような憶測に基づく論攷は見当たらない。またどっちもどっちという無責任な論攷もない。「代理戦争」ということばは、青山弘之氏の「シリアとウクライナ」の文にはあったが、シリアとの関係からの主張は理解できるもので、無責任な放言を繰り返している方々が語るような内容ではなかった。それはそれで考えさせるもので、シリアにおける戦争がウクライナにおける戦争と連動する動きは警戒しなければならないと思う。
私たちは、侵略という暴力に対して、暴力を以て対応するのではなく(ウクライナの人びとが武力で抵抗するのは理解できるが)、ことばをもって闘うことが大切だと思う。侵略という暴力、この場合はロシア=プーチン政権による国際法違反の暴力を徹底的に批判すること、これである。
そして私たちは、このような非道な暴力を振るう、ロシアやプーチン政権なるものを理解しなければならない。理解する、それはことばによってなされる。
この『現代思想』はそうしたことを試みている。収載された論攷を前に、私たちは脳を活発化させるのだ。