『世界』3月号の、「原発事故12年後の「子どもたち」」を読んだ。吉田千亜さんが書いている。長く原発事故を取材している吉田さんが大学で原発事故について話したあと、学生のレポートを読みその特徴を挙げている。1つは「国やメディアを疑ったことがなかった」という感想、それが半分以上あったことである。これほど国が悪事を働き、それをメディアが忖度して報じているのに、それが学生たちにはわかっていない、ということである。国の悪事はボーッとしていては伝わってこない。『東京新聞』や『週刊金曜日』、『世界』などを読まないとわからない。テレビは言うまでもなく、『読売』、『朝日』などの新聞からは真実は伝わらない。
こういう学生たちが成長する過程で、学校教員から国の悪事が教えられなかったのだろうか。歴史的に見ても、国は悪事を働く、その例は無数である。歴史を教えるということは、国の悪事を教えることでもある。そういう教員がほとんどいなくなっているということでもあろう。
もう一つの特徴は、「甲状腺がんの同年代の人たちが苦しんでいることを全く知らなかった」ということであるが、これも大手メディアが伝えないからである。私は長い間若者をたくさん見てきたが、一人として甲状腺ガンとなった者を知らない。しかし福島では、原発事故以後甲状腺ガンになった子どもがたくさんいる。しかし、国、福島県などは原発事故が原因ではないと言い張る。それにお墨付きを与えていた者が国会議員に当選している。なんてことだ。
原発事故による被害なんかない、というようにしたい国などが多額の税金を投下した「風評払拭・リスクコミュニケーション強化戦略」なども展開されたという。司法も事故を起こした責任者の責任を免罪する。何という国だ。
吉田さんはこうも記している。
いま、福島県内外の高校では、経産省や復興庁が「福島の今」や汚染水の海洋放出に関する「出前授業」も行っている。言わば「官製」の原発事故の伝承や教育は、冒頭にふれた2017年よりはるかに進んでいる。
なんてことだ。原発政策を推進してきた者どもが免罪され、事故がどれほどの被害を生みだしたのかを隠蔽するために、事故の被害実態を消しゴムで消すように、国や県が奔走している。
真実は伝えられていない。真実を隠蔽する作業は、国や県により積極的に展開されている。「そんなやつらに負けるわけにはいかない」という気持ちで、福島原発事故により起きた様々な「不都合な事実」を私は発信していきたいと思う。吉田さんのように。