10月5日と6日の2日間、株式会社トランスエージェント主催の「交渉戦略研修」に参加してきました(本記事掲載の写真は「NPO法人日本交渉協会」提供によるものです)。
講師はNPO法人日本交渉協会専務理事、名古屋市立大学大学院経済学研究科教授の奥村哲史先生。アメリカの大学院で使われているようなケースを使い、2日間に渡りロールプレイ方式でそこに含まれる交渉理論を学びました。
簡単な自己紹介を済ませると、早速ケーススタディに入りました。午前と午後でビジネスシーンで最も一般的な取引型交渉を2つ行いました。お互いからどれだけ情報を聴き出すことができ、かつそれを双方にとってより良い成果のために活用できたかが交渉のポイントでした。一見自分にとって不利と思われる情報も、交渉次第で有利な情報として利用しうるということ、そうした可能性をお互いがどれだけ引き出すことができるかが、大切であるということを学びました。それなりにやれたと思っていたのですが、解説を聞いて、まだまだ可能性があったと思いました。
また、お互いが最も重要と考えている交渉のポイントをトレードすることにより交渉の可能性を大きく広げることができるということも学びました。しかしながら、多くの交渉者は既定の枠組みにとらわれ、相手から有効な情報を得るために率直な質問をしていませんでした。これは、初めから交渉のパイの大きさは決まっており、それをどう奪い合うかに過ぎないという思い込み、相手の提示条件に引きずられてしまうなど、可能性の掘り起こしを妨げる様々な認知バイアスが働いてしまうためです。さらに、パイを大きくした後もさらにそれを分配する「奪い合い」は厳然として存在する、この点が意外と盲点だと感じました。
2日目は、紛争解決交渉と三者間による提携や同盟のための交渉についてケーススタディを行いました。さらに、ある映像から、そこにどのような認知バイアスが隠れていたかについて議論しました。
この日は利害だけでなく、構造的な問題、さらには感情が絡むという点が昨日とは違ったところでした。しかし、ここでもやはり互いの要求をぶつけ合いながら、埋もれている可能性を掘り起こし解決に結び付けていくことができるかが大切だと感じました。また、逆にこの日のようなケースでは、第三者的立場をとれる人の役割が非常に重要となるということを学びました。
また、利害関係がはっきりしており、互いの力関係は不均衡、それでいて相互依存関係にあるケースでの交渉では、実際の国際社会でも見られるように、客観的な力関係に勝る者が常に交渉でも有利とは限らず、場合によっては誰も望まない「囚人のディレンマ」ゲームのような結果を生むこともさえあり得るということを体験しました。
そして、今回の研修の最後に、ある交渉事例の映像を観て、そこにどんな認知的バイアスが隠れていたかについて議論しました。認知的バイアスの厄介なところは、それが無意識に働き判断に影響するという点です。こうして結果論として色々指摘することはできるかもしれませんが、いざ当事者となった場合、どれだけ自分の判断や行動にバイアスがかかっていないかを見極めることができるか、非常に難しいところだと思いました。
【今回のおすすめ書籍】
マネジャーのための交渉の認知心理学―戦略的思考の処方箋 | |
クリエーター情報なし | |
白桃書房 |
「話し合い」の技術―交渉と紛争解決のデザイン | |
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白桃書房 |
影響力のマネジメント | |
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東洋経済新報社 |
交渉の達人 | |
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日本経済新聞出版社 |
信頼の構造: こころと社会の進化ゲーム | |
クリエーター情報なし | |
東京大学出版会 |
繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
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