窪田恭史のリサイクルライフ

古着を扱う横浜の襤褸(ぼろ)屋さんのブログ。日記、繊維リサイクルの歴史、ウエスものがたり、リサイクル軍手、趣味の話など。

第18回燮会(やわらぎ会)に参加しました

2014年09月21日 | 交渉アナリスト関係


  9月20日、NPO法人日本交渉協会の第18回燮会に参加してきました。

  今回は交渉アナリスト1級会員の末永正司さんより、「駆け引きと交渉について」と題し、二部構成でお話いただきました。

  始めに、講師より「詐欺は果たして交渉と呼べるのか?」との問題提起がありました。交渉の概念は多岐にわたりますが、広義に捉えると詐欺師を含め、スポーツ選手や、調教師、狩人などの行為も交渉であるとしているものもあるようです。



  交渉アナリストが学ぶ交渉の定義は、「話し合いによって問題を解決すること」となっています。しかし、この定義によっても、少なくとも被害者が騙されたと気づくまでは、詐欺行為そのものは交渉の範疇に含まれることになってしまいます。そこで第一部では、交渉の成立要件である「話し合い」、即ち言語を介した意思疎通に加えて、「その行為がフェアであるか否か」という新機軸を設けることによって、「交渉」の定義をより限定するという試みがなされました。

  「言語」と「フェア」の二軸で広義の交渉を捉え、その行為が言語かつフェアであることを交渉の定義とするならば、先に挙げた詐欺師、スポーツ選手、調教師、狩人らの行為は交渉ではないということになります。では、これらを交渉と区別して何と総称するのか?ここでは「駆け引き」と呼ぶことにしました。狭義の交渉定義にある「話し合い」は、これら駆け引きを交渉へと移行させることを可能にするものです。

  そして、「言語」と「フェア」の二軸で分類された交渉と駆け引きのうち、社会的に望ましいと考えられるのは、「言語+フェアである(狭義の)交渉」と「非言語+フェアの駆け引き」の二つになります。細かくは、何を以てフェアとするかという「フェア」の定義もなされなければならないのですが、時間の制約上、それは改めてのテーマということになりました。



  続いて第二部。第一部で望ましいとされた「言語+フェアである(狭義の)交渉」と「非言語+フェアの駆け引き」ですが、それらにも「質」の違いが存在します。より質の高い交渉や駆け引きが望ましいことは言うまでもないのですが、何を以て質が高いとするのか、とした場合、ここでは利害関係者(自分・相手・直接的利害関係者・間接的利害関係者・将来にわたる利害関係者)を満足させることであろうということになりました。

  交渉アナリストが学ぶ交渉では、自分と相手にとって利益となる「統合型交渉」が望ましいとされますが、同じ統合型交渉でも自分の利益(ここでは、自分が見積もった「評価利益」とします)が相手の利益より低かった場合、利益はあっても不満足と言うことが生じえます。したがって、より望ましい交渉というのは、常に自分の評価利益が(自分が見積もった)相手の評価利益よりも高い状態であり、同様に相手も自分の評価利益がこちらの評価利益よりも高いと見なしている状態、双方が満足している状態であるということになります。

  つまり、双方が満足する真のwin-win交渉とは、常に相手の評価利益も見積もりながら交渉することというになります。もちろん、自分と相手との間には情報の非対称性が存在するため、相手の評価利益はあくまで推測にならざるを得ないという限界はあります。

  さらには、それを交渉当事者の二者間だけではなく、前述の利害関係者にも適用していくことでより質の高い交渉が可能になります。駆け引きについても同様です。

  短い時間の中での検討でしたが、今回の「言語」と「フェア」の二軸による分類や、利害関係者の拡大、評価利益を考慮することでより質の高い交渉を目指すという考え方は、大変勉強になりました。

  最後に、11月8日(土)に開催される、第8回ネゴシエーション研究フォーラムでご講演いただく、松浦正浩先生の御著書を紹介させていただきます。

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筑摩書房


繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした

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