「日本画で歌を詠む」 山種美術館 7/30

山種美術館(千代田区三番町)
「日本画で歌を詠む -日本の詩情- 」
7/2~8/21

山種美術館で開催中の「日本画で詩を詠む」展を見てきました。この展覧会は、日本画と詩を並べて鑑賞しながら、様々なイメージを膨らませようとする、「詩と日本画の共演」とでも言えそうな企画です。意外と言葉と絵画を合わせ見ることは難しいのですが、何はともあれ、この美術館の充実したコレクションを見せてくれる機会です。「日本画ファン」にはたまらない展覧会でした。

ポッと明かりが照っているような巣の中で、クモが可愛らしく佇んでいる様が見事な速水御舟の「昆虫二題 葉隠魔手」(1926年)と、黄色い爽やかな色合いの花をアクセントにしながら、二羽の鳥が凛として歩く様を美しい上村松篁の「千鳥」(1976年)、または、露にしっとりと濡れた木の幹を大胆に描いた山口華楊の「木精」(1976年)などは、どれも大変に味わい深い作品です。特に、速水御舟の「昆虫二題」は、もう一方の作品もあるとのことで、そちらも是非拝見してみたいと思いました。(図版で見る限りは、日本画離れしたような強烈な構図感を持つ作品でした。)

最も多く出品されていたのは、先々月の「広がりのある日本画」展で展示されていた「鳴門」の素晴らしさが、今も頭から離れない奥村土牛の作品です。(その時の記事はこちらです。)作品数は全部で五点。そしてその中で最も印象的なのは「蓮」(1961年)でした。蓮の花が控えめに柔らかく桃色がかって光る様も見事ですが、花の後ろに控える蓮田の深い緑色の表現も、どこか「鳴門」を思わせるような筆の運びで、その奥深い質感に大変魅せられます。大小二つの壷が軽いタッチで描かれた「三彩鑑賞」(1966年)と合わせて、今回の展示のハイライトでもありました。

山種美術館へは最近出向くようになりましたが、1800点余りもの日本画を所有しているという充実したコレクションの割には、どうしても設備面が気になります。この貴重な作品群を、何とかもっと良い形で公開出来る手立てはないものでしょうか。いつも「良いもの」を見せてくれるだけに、今回もまた改めてその思いが募りました。
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