「絵のなかのふたり」 ブリヂストン美術館 8/6

ブリヂストン美術館(中央区京橋)
「絵のなかのふたり -シャガールから靉嘔まで- 」
7/16~9/11

主にブリヂストン美術館の所蔵品から構成された、とてもコンパクトな展覧会です。展示のコンセプトは極めて明快で、美術作品の人物表現に見られる「ふたり」、つまり男と女や母と子、または性差にとらわれない関係を持った「二人の人間」を概観しながら、その間の物語を読み取っていくという内容でした。肩の力を抜いて楽しむことができます。

セクションは、「恋人たち」や「アトリエ作家とモデル」など、全部で5つに分かれていました。作品そのものよりも、総じて美術館による「見せ方」の面白さが優位に立つ展覧会とも言えるでしょう。靉嘔(Ay-O)による鮮やかな「虹のグラデーション」が目に飛び込む「アダムとイヴ」(1963~67年)と、エッチングによって聖書の原罪のシーンが描かれたマーチンの「楽園追放」(19世紀)、または、ピカソと藤田嗣治の「二人の裸婦」(同じタイトルです。)などを並べて展示させることで見えてくるもの。意外な場所に不思議な接点を感じさせます。

作品には「小品」と言えるものが多く、深く印象に残るものが少なかったのも事実ですが、タイトルにもあったシャガールの作品にはやはり強く惹かれます。パンフレットにも載せられている「ヴァンスの新月」(1955~56年)は、シャガールならではの鮮やかな美しい赤色をベースにしながら、夢見心地の安らぎの境地にあるような男女が、大空を寄り添いながら流れるように駆けています。また、底抜けの青が詩情を思わせながらも、どことなく不気味さを匂わす「枝」(1956~62年)と、華やかな黄色が輝かしい「恋人たちとマーガレットの花」(1949~50年)は、それぞれ「赤・青・黄」の世界に住む二人の男女の幸福感を思わせる作品で、並べて鑑賞できる嬉しさと相まって、大変に魅了されるものを感じました。シャガールは私が美術を見始めた頃から好きになった作家です。改めてこういう形で見せられると、彼の作品の素晴らしさを再認識できます。

この企画展に続く常設展の、各々重厚な作品群に押されてしまいそうな展覧会ではありましたが、コレクションを、一定の視点から切り込んで再構成しながら見せる企画は大歓迎です。9月11日までの開催です。
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