「フォロー・ミー!:新しい世紀の中国現代美術」 森美術館 8/10

森美術館(港区六本木)
「フォロー・ミー!:新しい世紀の中国現代美術」
7/2~9/4

「中国 美の十字路展」と同時開催中の展覧会です。隋や唐など、古の品々が並んだ展示室から続く「フォロー・ミー!」の会場には、突如、中国の現代美術によるパワフルな世界が出現します。まさに「千年以上のタイムスリップ」とも言えるでしょうか。ただ、両展覧会の接点はかなり希薄です。(美術館によれば『漢から唐と現代中国には『異文化の流入』という共通の鍵がある。』とのこと。)全く別個の展覧会と考えて良いかと思います。

全体の作品数は多くありません。それこそ「美の十字路展」の三分の一以下の分量でしょうか。ビジュアル的なものや、取っ付き易い体験型の作品が目立ち、入場者の気を惹く工夫が随所になされていましたが、その反面、質感一本で勝負するような作品は殆ど見られません。どれも、現代中国の凄まじい発展ぶりと、それに伴う混沌や矛盾点をストレートに提示してきます。その溢れんばかりのエネルギーは十分に伝わってきました。

しかしながら、様々な意味で「分かり易い」ものが多いので、そこに一定の面白さは見出せるにしろ、全般的に物足りなさが残るのも事実でした。世の「矛盾」や「混沌」などを、美術としての「形」で見せるもの。または、世相をえぐりとった先に指し示すことが出来る方向性。このような期待を抱いて鑑賞すると、どうしても「もう一歩。」という印象が付きまといます。半ば無造作に並べられたこれらの作品を見ていると、不思議と「美の十字路展」で惹かれたガラスの器や、美しい棺の装飾が目に浮かんできました。これは非常に残念なことです。

現代中国の激動から新たな価値を生み出すという、この展覧会の明確なコンセプトは良いと思います。ただ、同じく中国の現代美術の作品では、以前この美術館で開催された「秘すれば花 東アジアの現代美術」と比べても、かなり見劣りしていたのではないでしょうか。(個人的には「秘すれば花」もイマイチでしたが…。中国の現代美術でなかなか面白いものに出会えません。)消化不良気味の展覧会だったかもしれません。
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