「きらめく女性たち」 ホテルオークラ東京 8/13

ホテルオークラ東京「平安の間」
「第11回秘蔵の名品 アートコレクション展:きらめく女性たち」
8/6~25

ホテルオークラ東京が毎年夏に開催する「秘蔵の名品アートコレクション展」。第11回を迎えた今年のお題は「きらめく女性たち」です。ルノワールを始めとする西洋画から、藤田嗣治や岸田劉生の近代日本洋画、さらには伊東深水や上村松園などの日本画まで、多様に美しく描かれた女性の供宴です。

約25点ほど展示されていた西洋画の中で最も印象に残ったのは、ドニの「赤いベットに横たわる裸婦」(1898年)です。その名の通り、真っ赤に彩られたベットの上に、豊満な体の女性が一人横たわっています。構図的には非常に安定した、落ち着きのある作品ですが、パッと目に飛び込んでくる「赤」が鮮烈で、それがまた横たわる裸婦を浮き上がらせます。ドニが一時影響されたという古典主義の元に描かれた作品とのことですが、鮮烈な「赤」をこの女性へ与えた彼の表現力に驚かされました。

クールベの「眠る草刈り女」(1845年)は、彼の美しい風景画で見せるような、端正でありながらもどことなく荒々しい筆の魅力を感じさせる作品です。私は今回、クールベのいわゆる人物画を初めて見たと思うのですが、画面の手前で眠る女性に与えられている丁寧でハッキリとした色遣いと、背景のややぼやけたような暗いタッチの対比が実に見事です。写実的でありながらも、何やらギリシャ神話の女性を描いたような壮大な物語性を感じさせます。他にも、初期のルノワールによる、その後の画風からは姿を消したような細かくクッキリとしたタッチが興味深い「牛と羊をつれた羊飼いの少女」(1886年)や、独特な哀愁の表情を見せるモディリアーニの「若い女性の肖像」(1918年)などが印象に残りました。

さて、展示の後半を占めていた近代日本洋画と日本画では、何と言っても伊東深水の「夕涼み」(年代不詳)でしょうか。伊東深水はこの他にも6点出品されていて、丹念で精緻な衣装の塗りが美しい「春宵」(1954年)なども素晴らしいのですが、「夕涼み」で見せた官能的な女性の表情の柔らかさは、頭一つ抜きん出た表現力を感じます。後ろへやや傾くように舟に腰掛け、川で涼をとる女性のうら寂しい姿。少しはだけた様に見える着物の味わいにも「涼」を思わせますが、あらぬ方向を見ているような女性の視線には儚さすら感じさせます。私がこの展覧会で最も記憶に残った美しい女性の姿がここにありました。

他の日本画(洋画も含む。)では、「白」の美しさを上手く使って、颯爽な雰囲気を漂わす藤田嗣治の作品や、丹念で清潔感のある描写と艶やかさも併せ持つ鏑木清方の「七夕」(1929年)、または黒い着物の意匠と姿勢を正した女性の様の構図感が素晴らしい奥村土牛の「舞妓」(1954年)などに魅せられました。西洋画と日本画を問わず、どの作品からも女性への温かい眼差しが深く感じられます。

この展覧会のチケットで、ホテル前にある大倉集古館とその分館にも入場することができます。そちらの方は今回時間切れで行かなかったのですが、是非別の機会に見てきたいと思いました。展覧会は25日までの開催です。
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