「中国 美の十字路展」 森美術館 8/10

森美術館(港区六本木)
「中国 美の十字路展 -後漢から盛唐へ- 」
7/2~9/4

悠久の歴史を誇る中国から出品された「至宝」の数々。後漢から唐にかけての多様な文物を一挙に公開する博物展的な企画です。初期仏教美術や、シルクロード以降の東西交流、それにインドなどの影響を受けて制作された品々など、かなりボリュームのある展覧会でした。

この辺りの中国史に詳しければ、それだけで大変に面白い展覧会になるのかと思いますが、歴史への前提知識が少なくとも、美術品自体の凝った装飾などに目を奪われて、実に興味深く拝見することが出来ます。展示品には、中国各地で出土されたという様々な「俑」が多く並んでいましたが、その中でも、人々のユーモラスな表情が楽しい「雑技俑」(北魏386~534年)は、これぞ「中国雑技団の元祖」(?)とも言えそうな雰囲気で、とっても可愛らしい品です。また、隋の時代の見事な棺や、後漢のものとされる楼閣なども、その大きさや装飾の美しさなどには目を見張らせれます。その他にも、鮮やかな色が配された刺繍や、透き通るガラス製の器、それに艶やかな首飾りなど、ともかく見所の多い品物ばかりが並んでいました。

展示は、単純に時系列に沿っているのではなく、各文化や地域によったまとまりを見せる工夫がなされています。(全体的な展示も、照明や配置等などへの細かい配慮が感じられて、とても見やすく構成されています。)私としては特に、仏教の影響を受けたものや、シルクロード開通後による、ギリシャやペルシャ美術の技法を取り入れた作品、または、古代ソグト族(西方に居住していた民族のようです。)の美術品などが深く印象に残りました。

唐などの特定の時代や、初期仏教美術など、一定の時期や文化に限定された中国美術の展覧会は、さほど珍しくはないと思います。ただ、今回の試みのように、中国の美術品を、縦軸(時間の流れ)と横軸(東西交流など)に交錯させて見せる企画(まさに「美の十字路」です。)とは、見せ方の難しさがつきまとうにしろ、大変に意欲的な展覧会として評価出来るのではないでしょうか。「ハピネス展」などで見せた、森美術館ならではの「複眼的なアプローチ」が光る展覧会とも言えそうです。(ただ、同時開催の「フォロー・ミー!:新しい世紀の中国現代美術」展との関連付けには無理がありましたが…。)
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