「博物館に初もうで」(2007) 東京国立博物館

東京国立博物館台東区上野公園13-9
「新春特別展示 - 亥と一富士二鷹三茄子 - 」(本館特別1室・特別2室)
「新春特集陳列 - 吉祥 - 」(東洋館第8室)
1/2-28

毎年恒例、東博の通称「初もうで展」です。会期初日の2日に行ってきました。三が日から美術館や博物館へ出向くのは今年が初めてかもしれません。



獅子舞や和太鼓演奏など、東博全体が正月ムード満点の華やいだ雰囲気で賑わっていましたが、(想像以上に混雑していました。)いわゆる「初もうで展」は本館の二室(特別1室、2室)と東洋館の一室(第8室)などで開催されています。それぞれ、今年の干支である亥や羽子板にかるた、そして富士など、正月にちなんだおめでたい主題の作品が展示されていました。

日本人にとって亥はかなり身近な動物かと思いますが、不思議とそれをモチーフとした作品はあまりありません。「亥と一富士二鷹三茄子」(本館)では、上目遣いで睨んでいるような亥の描かれた岸連山の「亥図」(19世紀)と、何やら豚のようにも見える雄雌の亥が構えた森徹山の「和合図」(19世紀)が印象に残りました。そのニコニコしているような姿が微笑ましい作品です。(ちなみに殆どの作品ではイノシシの牙が前向きに描かれていますが、実際には後ろ向きに付いているのだそうです。)

「書き初め」ならぬ「描き初め」として鶴と亀が描かれた江戸坦庵の「元旦試筆」(19世紀)も、正月ならではの作品です。鶴はいたってごく普通に描かれていますが、亀の尾が水に消えていくかように表現されて、幾分抽象的な面白さを見せていました。水の中をスイスイと泳ぐ亀が想像されます。

鶴や米俵、それに海老や亀などの縁起物を、思いっきり欲張って舟へと載せた尾形光琳の「宝船図」(17世紀)も見所の一つです。即興的なタッチにて描かれていますが、このような宝船を描いた紙を枕の下に敷いて寝ると、良い初夢が見られるという言い伝えがあったのだそうです。思わず土産に一枚欲しくなってしまうような作品でした。

東洋館の「吉祥」展では、松の枝が網のように広がり、そして無造作に垂れている金ぜんの「老松図」(1458)が異彩を放っています。中国では不老長寿を象徴するというお目出たいはずの松が、黒ずんで、暗鬱な雰囲気を漂わせながら画面全体を支配しています。不気味です。



その他には、年末年始の主題を描いた浮世絵の展示(本館10室)や、昨年もこの時期に国宝室に展示されていた等伯の「松林図屏風」なども目玉になっています。恥ずかしながら私はまだ、この「松林図屏風」の魅力に気付くことが出来ていませんが、展示室の照明が去年よりも明るいせいか幾分見通しも良く、空間がうっすらとそびえる右後方の山へと収斂されていくような感覚を味わいました。何はともあれ、毎年このようにして見続けられるのは有難いことです。

「初もうで展」は常設展示のチケットで入場することが出来ます。今月28日までの開催です。*本館10室「浮世絵と衣装」は、浮世絵が今月14日、衣装が来月18日までの展示です。*(1/2鑑賞)
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