「平野薫『エアロゾル』」 資生堂ギャラリー

資生堂ギャラリー中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル地下1階)
「第1回 shiseido art egg 平野薫『エアロゾル』」
1/12-2/4

資生堂の公募展「shiseido art egg」より入選した、計3名の作家を順番に紹介する展覧会です。その第一弾として、糸を使ったインスタレーションを手がける平野薫の作品が展示されています。



上から眺めるだけではあまり良く分かりませんが、下から見上ると実に壮観です。天井からは、とある使い古しのワンピースの布地を一本一本の糸にまでに解して出来た、まるで巨大な人形のような網状のオブジェが悠然と吊るされています。そしてそのスカートの先には、まだ解されていない布地も残っていました。どうやら、展示と制作が同時に進み、また提示されている作品でもあるようです。

その過程を見るには、奥の展示室にあるタイムカードが有効です。ここには、平野が制作に費やした時間の経過が事細かに記録されています。その時間はまちまちですが、中には深夜3時や4時などの印字も見ることが出来ました。この銀座の真ん中の地下空間にて、深夜一人、黙々と糸を解していたのでしょうか。そう考えるだけでも、恐ろしいまでに根気のいる作業です。(一つだけお願い出来れば、その制作の様子を記した映像や写真などの展示があると尚良かったと思います。)

現在進行形ということで、作品はまだ完成していません。また、毎週土曜日には公開制作も行われているそうです。最終日にはさらに進化した姿になっているのでしょうか。出来ればもう一度拝見したいです。



「第1回 shiseido art egg」
平野薫(1/12-2/4)
水越香重子(2/9-3/4)
内海聖史(3/9-4/1)

4月下旬には、今回のアートエッグの大賞も選出されるそうです。毎回の展示を追っかけていきたいと思います。(1/17鑑賞)
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「杉本博司『本歌取り』」 ギャラリー小柳

ギャラリー小柳中央区銀座1-7-5 小柳ビル8階)
「杉本博司『本歌取り』」
2006/11/8-2007/1/27

ギャラリー小柳で開催中の杉本博司の個展です。ピューリッツァー財団にあるリチャード・セラの彫刻を撮影した「JOE」が、日本で初めて公開されています。

コンクリート床が剥き出しになった、半ば無機質とも言える小柳の展示空間には、杉本の「JOE」が良く似合っています。お馴染みの数式を立体化したオブジェ「観念の形」と合わせて、静謐かつ、非感傷的な美の空間が形成されていました。

 

それにしても、この被写体がセラの彫刻であることにはまず気がつきません。形は光と影との交錯に解体され、オブジェの存在感はうっすらと湿り気を帯びたようなモノクロの画面に溶け出しています。ここにセラのオリジナルを謎解き的に見出すことより、まさにそこから「本歌取り」された写真の美感に浸る方が楽しめるのではないかと感じました。その点この展示から受ける、不明瞭で、何やら良く分からないが美しいという感覚は、それこそ杉本の言う「写真が発明された時の『原初の驚き』が体験できるはず。」(asahi.comより。)のイメージに近いようです。確かに、オブジェの本来持っていた意味を微かに保存しながら、それを殆ど未知の新しい美意識にて提示してしまうところには驚きすら感じます。



今月27日までの開催です。(1/13鑑賞)

*本歌取り:すぐれた古歌や詩の語句、発想、趣向などを意識的に取り入れる表現技巧。転じて、現代でも絵画や音楽などの芸術作品で、オリジナル作品へのリスペクトから、意識的にそのモチーフを取り入れたものをこう呼ぶ。(Hatena:Keywordから。)
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