「山口晃『ラグランジュポイント』」 ミヅマアートギャラリー

ミヅマアートギャラリー目黒区上目黒1-3-9 藤屋ビル2階、5階)
「山口晃『ラグランジュポイント』」
2006/12/5-2007/1/20

会期末になってしまいましたが、先日拝見してきました。ミヅマアートギャラリーでは二年ぶりの開催という、山口晃の個展です。5階と2階の2つの展示室を使い、単なる絵画の展示だけにとどまらないインスタレーションが展開されています。画廊内の動線すら変えてしまいました。さすがの貫禄です。

展示は5階より始まっています。ここでは「四天王立像」と「六武人圖」が計10点ほど堂々と待ち構えていますが、キャンバスに油彩や水彩、それに墨まで用いて描いたという「四天王立像」、中でも「廣目天」が圧巻でした。舌を出しながら、何やら間抜けな姿にて振り向く犬(邪鬼とは思えません。)を踏み台にしながら、ペンを大きく横に振り上げて颯爽と立っています。その衣からは炎が舞い上がり、さらには波をも沸き立てて巻き上げる様子は、まさに妖艶という言葉がピッタリです。また不気味なほど白んだその顔の表情からは、幾分物憂げな心持ちも感じ取れました。即興的なタッチの線と丁寧な彩色の交錯によって生まれる、生々しいほどの色気もまた見事だと思います。

2階の展示はもはやインスタレーションと言って良いでしょう。トンネルのような通路を抜けて、白いカーテンを恐る恐る開いてみると、そこに待ち構えていたのは、数えることすら出来ないほど無限大に集う武将の群れでした。それこそ「六武人圖」に登場したかのような、モノクロ武将たちの大パノラマです。遠くを見渡すと、武将たちが蟻の大軍のようにひしめき合って地平線を描き、近くには大見得を切った彼らの立像が何体もこちらを見つめています。その迫力にたじたじとなってあっさり引き下がるのか、それとも彼らを指揮するために我が身を引き締めるのか。そんな選択が鑑賞する側に問いかけられているような作品でした。「さあどうする!」と言わんばかりの眼差しです。

さらに奥の展示室へ進むと、山口氏本人が「四季休息図」を制作していらっしゃいました。椅子に軽く腰をかけながら、作品をやや険しい表情で眺めつつ、大胆に色を付けていく姿がとても印象に残っています。ここはお邪魔しないよう、静かに退出させていただきました。

明日まで開催です。お帰りの際は非常階段にくれぐれもお気をつけ下さい。(?!)(1/17鑑賞)



*関連リンク
「会田誠/山口晃」展 上野の森美術館(5/20-6/19)
現代美術家・山口晃「あるべき出会い」模索(Sankei web)

*関連エントリ
「山口晃が描く東京風景 本郷東大界隈」刊行記念トークショー 丸善丸の内本店
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