都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「千住博展」 山種美術館
山種美術館(千代田区三番町2 三番町KSビル1階)
「千住博展 - フィラデルフィア『松風荘』襖絵を中心に - 」
2006/12/2-2007/3/4
山種美術館で開催中の「千住博」展を拝見してきました。来年5月にフィラデルフィアの「松風荘」へ寄贈される新作の襖絵、全20点を中心に構成されています。お馴染みの滝をモチーフとした大絵画の連作が、展示室を一周、ぐるりと取り囲んでいました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/22/fe/d73ff90ab09bb72ea13d8f6239b70ea4.jpg)
「松風荘」とは1954年、吉村順三の設計によってフィラデルフィア市内に建てられた、書院造りの日本建築です。かつてはその襖絵に東山魁夷の水墨画が飾られていましたが、何とその全てが損傷してしまい、この度千住が新たな襖絵を制作する運びとなりました。(いくら気候条件などが違うにせよ、展示されていた全ての襖絵をダメにしたというのには驚かされます。一体どのような管理をしていたのでしょうか。)ちなみに彼はこの新作の襖絵を無償で提供するそうです。強い意気込みも感じられるエピソードです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4a/8b/0cee48c050e06cb30559e4db6b212b62.png)
千住の滝は文字通り上から下へと流れています。キャンバスの上部から白い絵具を垂らして生み出された水の流れは、時にレースのカーテンのように絡み合い、また鍾乳洞の如く折重なり合い、さらにはオーロラのように瞬いて、下へと降りて行きました。そして滝壺の部分では、ブラシによって表現された真っ白い水しぶきが大きく舞っています。ベージュ色のシンプルな背景の上に流れ続ける、まるで細い糸のような水の筋。それが幾重にも重なって一つの滝が生み出され、さらには何枚も連なることで巨大な滝が形成されているのです。
少し作品から離れて見ると、滝壺部分に微妙な奥行き感があることが分かります。手前から順に一段ずつ奥へと繋がり、まるで左右にカーテンを開けた時のような光景も出現していました。私には、これらの作品に滝のダイナミックな情景を見ることよりも、むしろ記号化された、抽象的なミニマリズムの気配を感じますが、そこに滝の飛沫を見て、冷ややかな清涼感を味わった方が楽しめるのかもしれません。
フィラデルフィアの気候に耐え得る素材ということもあるようです。使われている絵具は全てアクリルでした。これが日本画の顔料を用いるとどう変わってくるのかが気になります。(有名な大徳寺聚光院別院の襖絵はどうなのでしょうか。)ちなみに新作はもう一点、カラフルな「フォーリングカラーズ」も展示されていましたが、その美しさは私には全く分かりませんでした。
いつもより照明も落とされ、襖絵の雰囲気に配慮した展示が行われています。ロングランの展覧会です。3月4日まで開催されています。(1/21鑑賞)
*千住博の「博」は、右肩の`(点)を取った字です。
「千住博展 - フィラデルフィア『松風荘』襖絵を中心に - 」
2006/12/2-2007/3/4
山種美術館で開催中の「千住博」展を拝見してきました。来年5月にフィラデルフィアの「松風荘」へ寄贈される新作の襖絵、全20点を中心に構成されています。お馴染みの滝をモチーフとした大絵画の連作が、展示室を一周、ぐるりと取り囲んでいました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/22/fe/d73ff90ab09bb72ea13d8f6239b70ea4.jpg)
「松風荘」とは1954年、吉村順三の設計によってフィラデルフィア市内に建てられた、書院造りの日本建築です。かつてはその襖絵に東山魁夷の水墨画が飾られていましたが、何とその全てが損傷してしまい、この度千住が新たな襖絵を制作する運びとなりました。(いくら気候条件などが違うにせよ、展示されていた全ての襖絵をダメにしたというのには驚かされます。一体どのような管理をしていたのでしょうか。)ちなみに彼はこの新作の襖絵を無償で提供するそうです。強い意気込みも感じられるエピソードです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4a/8b/0cee48c050e06cb30559e4db6b212b62.png)
千住の滝は文字通り上から下へと流れています。キャンバスの上部から白い絵具を垂らして生み出された水の流れは、時にレースのカーテンのように絡み合い、また鍾乳洞の如く折重なり合い、さらにはオーロラのように瞬いて、下へと降りて行きました。そして滝壺の部分では、ブラシによって表現された真っ白い水しぶきが大きく舞っています。ベージュ色のシンプルな背景の上に流れ続ける、まるで細い糸のような水の筋。それが幾重にも重なって一つの滝が生み出され、さらには何枚も連なることで巨大な滝が形成されているのです。
少し作品から離れて見ると、滝壺部分に微妙な奥行き感があることが分かります。手前から順に一段ずつ奥へと繋がり、まるで左右にカーテンを開けた時のような光景も出現していました。私には、これらの作品に滝のダイナミックな情景を見ることよりも、むしろ記号化された、抽象的なミニマリズムの気配を感じますが、そこに滝の飛沫を見て、冷ややかな清涼感を味わった方が楽しめるのかもしれません。
フィラデルフィアの気候に耐え得る素材ということもあるようです。使われている絵具は全てアクリルでした。これが日本画の顔料を用いるとどう変わってくるのかが気になります。(有名な大徳寺聚光院別院の襖絵はどうなのでしょうか。)ちなみに新作はもう一点、カラフルな「フォーリングカラーズ」も展示されていましたが、その美しさは私には全く分かりませんでした。
いつもより照明も落とされ、襖絵の雰囲気に配慮した展示が行われています。ロングランの展覧会です。3月4日まで開催されています。(1/21鑑賞)
*千住博の「博」は、右肩の`(点)を取った字です。
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