都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「新春の寿ぎ」 三井記念美術館
三井記念美術館(中央区日本橋室町2-1-1 三井本館7階)
「新春の寿ぎ - 国宝 雪松図・卯花墻を中心に - 」
1/4-31
早くも会期末を迎えました。三井記念美術館で開催中の「新春の寿(ことほ)ぎ」展です。円山応挙の「雪松図屏風」を初めとする江戸絵画から、当代樂吉左衛門を含む楽焼茶碗、それに昨年に重文指定を受けた「東福門院入内図屏風」などが展示されています。見応えは十分です。
「雪松図屏風」の美しさには思わず絶句してしまいました。応挙にしては驚くほど大胆なタッチが松の力強い生命力を表現し、右へ左へ、そして奥にも伸びゆく枝葉が抜群の空間構成を生み出しています。また雪原より舞い上がり、朧げな光に照らされて金色にも灯る粉雪のざわめきと、葉にしっとりと降り積もった白銀の輝きの対比も見事です。うっすらと顔をのぞかせたなだらかな大地や、無限の広がりを見せる空もまたこの松を引き立てていました。その場のひんやりとした空気と、凛とした松の気配を感じさせる名品です。あまり近づき過ぎることなく、少し離れて見ることを是非おすすめします。
浮世絵で有名な鳥居清長の珍しい肉筆画「駿河町越後屋正月風景図」は、まさにここ日本橋で見るに相応しい作品でした。今より遡ること200年、当時の越後屋(現三越、三井本館)界隈の賑わいが、富士を背にした鳥瞰的な構図にて表現されています。その行き交う人々の生き生きとした様子は、ハレの場の華やいだ雰囲気を良く伝えていました。また越後屋の暖簾で靡く、通称「丸に井筒三」(現、三井グループの社章。)のマークも目立っています。まるで日本橋は三井のものと言わんばかりの光景です。
どっしりとした重みを感じさせながらも、その大きく歪んだフォルムの大胆な「志野茶碗 銘卯花墻」も魅力的な作品でした。まるで粗目糖を振りかけたような外観は、まさに卯の花に見立てられた白い釉薬によるものです。その他の茶碗では、それこそ刃物のようにシャープな口縁が特徴的な本阿弥光悦の「黒楽茶碗 銘雨雲」や、形に遊び心も感じさせる樂吉左衛門の新作の楽茶碗が印象に残ります。その抽象的な紋様が、器の中に山水画の幽玄な世界を作り上げていました。
展示のハイライトは、まさしく豪華絢爛な「東福門院入内図屏風」かもしれません。これは、徳川秀忠の娘和子(後の東福門院)が、後水尾天皇のもとへ入内する行列を描いた作品で、当初は約30mにも及ぶ巻物だったものを屏風に改装したのだそうです。その華麗で雅やかな行列が、右下の二条城より左上の禁裏へと延々と連なっています。ちなみに和子は、左隻二段目の右手にある二頭立ての牛車に乗っていました。後ろには供の牛車をも控えさせ、一際目立つ姿が見て取れます。実際に行列を間近で眺めているような錯覚さえ受ける、臨場感にも溢れた作品です。
日本美術の名品に酔うことの出来る展覧会です。今月末まで開催されています。(1/21鑑賞)
「新春の寿ぎ - 国宝 雪松図・卯花墻を中心に - 」
1/4-31
早くも会期末を迎えました。三井記念美術館で開催中の「新春の寿(ことほ)ぎ」展です。円山応挙の「雪松図屏風」を初めとする江戸絵画から、当代樂吉左衛門を含む楽焼茶碗、それに昨年に重文指定を受けた「東福門院入内図屏風」などが展示されています。見応えは十分です。
「雪松図屏風」の美しさには思わず絶句してしまいました。応挙にしては驚くほど大胆なタッチが松の力強い生命力を表現し、右へ左へ、そして奥にも伸びゆく枝葉が抜群の空間構成を生み出しています。また雪原より舞い上がり、朧げな光に照らされて金色にも灯る粉雪のざわめきと、葉にしっとりと降り積もった白銀の輝きの対比も見事です。うっすらと顔をのぞかせたなだらかな大地や、無限の広がりを見せる空もまたこの松を引き立てていました。その場のひんやりとした空気と、凛とした松の気配を感じさせる名品です。あまり近づき過ぎることなく、少し離れて見ることを是非おすすめします。
浮世絵で有名な鳥居清長の珍しい肉筆画「駿河町越後屋正月風景図」は、まさにここ日本橋で見るに相応しい作品でした。今より遡ること200年、当時の越後屋(現三越、三井本館)界隈の賑わいが、富士を背にした鳥瞰的な構図にて表現されています。その行き交う人々の生き生きとした様子は、ハレの場の華やいだ雰囲気を良く伝えていました。また越後屋の暖簾で靡く、通称「丸に井筒三」(現、三井グループの社章。)のマークも目立っています。まるで日本橋は三井のものと言わんばかりの光景です。
どっしりとした重みを感じさせながらも、その大きく歪んだフォルムの大胆な「志野茶碗 銘卯花墻」も魅力的な作品でした。まるで粗目糖を振りかけたような外観は、まさに卯の花に見立てられた白い釉薬によるものです。その他の茶碗では、それこそ刃物のようにシャープな口縁が特徴的な本阿弥光悦の「黒楽茶碗 銘雨雲」や、形に遊び心も感じさせる樂吉左衛門の新作の楽茶碗が印象に残ります。その抽象的な紋様が、器の中に山水画の幽玄な世界を作り上げていました。
展示のハイライトは、まさしく豪華絢爛な「東福門院入内図屏風」かもしれません。これは、徳川秀忠の娘和子(後の東福門院)が、後水尾天皇のもとへ入内する行列を描いた作品で、当初は約30mにも及ぶ巻物だったものを屏風に改装したのだそうです。その華麗で雅やかな行列が、右下の二条城より左上の禁裏へと延々と連なっています。ちなみに和子は、左隻二段目の右手にある二頭立ての牛車に乗っていました。後ろには供の牛車をも控えさせ、一際目立つ姿が見て取れます。実際に行列を間近で眺めているような錯覚さえ受ける、臨場感にも溢れた作品です。
日本美術の名品に酔うことの出来る展覧会です。今月末まで開催されています。(1/21鑑賞)
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