「ガロン第二回展 日本背景」 旧田中家住宅

旧田中家住宅
「ガロン第二回展 日本背景」
2/14-3/18



旧田中家住宅で開催中の「ガロン第二回展 日本背景」へ行ってきました。

埼玉県は川口市、埼玉高速鉄道川口元郷駅付近の街道沿いに、大正末期から昭和初期にかけて建てられた国指定有形文化財の洋館があることをご存知でしょうか。


旧田中家住宅全景(正面)

江戸時代より川口にて醸造業と材木商を営み、戦後には市長も輩出した地元の名家、田中家ですが、その住居として用いられていた建物が現在、川口市立文化財センター分館「旧田中家住宅」として保存、また公開されています。

そしてそこで行われているのが「ガロン第二回展 日本背景」です。

ガロンは2007年に主に日本絵画、日本美術を出自とした若手作家、またキュレーターによって結成されたグループです。一昨年には白金「瑞聖寺」で第一回展を開催しました。ご記憶の方も多いかもしれません。

さて今回の出品の作家は以下の通りです。

ガロンメンバー:市川裕司、大浦雅臣、金子朋樹、佐藤裕一郎、松永龍太郎
ゲスト:金理有、後藤雅樹、前川多仁、山本麻璃絵


ガロンのメンバー5名とゲストの4名、あわせて9名の作家が参加していました。


山本麻璃絵「公衆電話とタウンページ」2010年

歴史的建造物での展示と言うことで、建物自体の趣きにも惹かれてしまいますが、冒頭のロビーにて、いきなりぐっと心を掴まれたのが、先だっての所沢ビエンナーレでも出品のあった山本麻璃絵の立体でした。


山本麻璃絵「扇風機」2011年

こうしたロビーによく有りがちな公衆電話が半ばフェイク的に木彫で示されているだけでも嬉しくなってしまいますが、続く和室には「扇風機」までが置かれ、いつもながらに場所へすっと溶け込むような演出で楽しませてくれます。

ちなみに山本の立体は会場内に計8点ありました。探して歩くのも面白いしれません。


左:大浦雅臣「百鬼道中図」2011年

またそもそもガロンは日本絵画の作家が主ですが、今回はこの木彫の山本のように、染織や陶、また鋳金を手がける作家をゲストとして迎えたことで、ようは絵画だけではない、幅広い表現の作品を見られるのも重要なポイントかもしれません。

さて旧田中家住宅は洋館の後に数寄屋造りの和館が増築されたこともあり、洋風建築という割りには和室が目立ちますが、そうした空間を器用に使っていたのが染織の前川多仁です。


前川多仁「合体変身!(アシュラロボ)」2010年 他

色鮮やかなろうけつ染めを基本に、プリントなどを組み合わせ、どこかメカチックでかつキッチュなモチーフの寝具を展開しています。

床の間には同じく前川の掛軸がかかっていますが、ともかくこの激しい赤の印象は目に焼き付きます。この寝具で眠ると一体どのような夢を見るのでしょうか。和室にはただならぬ気配が漂っていました。

さてこうした『和』の一方、『洋』を上手く利用したのが、ガロンメンバーの市川裕司です。


市川裕司「円環12-1」2012年

市川は建物の洋館部分の縦三層、ようは1、2、3階のスペースの全てに3つの作品を出品しています。


市川裕司「eschaton O」2012年

日本画の素材を取り入れながらも、インスタレーションとして完成された展示には思わず目を奪われるのではないでしょうか。

順に沿って階段をあがっていくと、全く同じ広さの3つの『洋』の空間が、市川の手によって見事に表情を変えています。何とも巧みな構成でした。


金理有「アルジャーノンの花瓶」

さて巧みな構成と言えば横トリでもお馴染みの金理有の陶芸が忘れられません。


庭園より茶室方向

実は今回の展示はこの洋館と和館が合わさった本館と、お庭を挟んで向き合う茶室の二つの建物で行われています。


茶室展示風景

金の作品は本館ではラスト、3階の階段の手すりの上に1点、何やら来場者の行く末でもじっと見守るかのように一点置かれているに過ぎませんが、続く茶室では、入口を含め、約10点超の作品が一堂に会しています。


茶室展示風景、奥:金子朋樹「空遊図」2012年

ようは本館の最後と茶室の最初が金理有で繋がっているわけです。それにこの茶室でも金の作品が空間にハマっていました。とりわけししおどしは思わず感嘆させられるほどです。

歴史的建造物に現代アートを持ち込んだ展示はさほど珍しくありませんが、作品を収めるところに収め、逆に時には意外な場所に展示するなど、全体の構成はとてもメリハリがあります。

ガロンの名付け親でもあり、企画の小金沢智のキュレーションには感心させられました。

*上記、キュレーション云々についての記述をしたところ、企画の小金沢氏のコメントが@galllllllonアカウントからありました。

@galllllllon基本的にはガロンの作家の展示希望場所があって、それに合わせてゲストに場所のお願いはしましたが、僕がしたのはその上での調整くらい。だからキュレーションとはちょっと違うのかもしれない(だから企画という言葉を使ってます)。みんなで考えたようなところがある。

@galllllllonだから、立場上僕が全部の構成までしていると思われがちだと思うけど、実際はそんなことはないのです。作家の色々な提案を聞きつつ、相談しながら、みんなで力を合わせて作ったという方が正しい。全体の責任は僕にあるけど、構成がよかった!と思った方は、いい作家のおかげと思ってください(笑)。



旧田中家住宅全景(庭園より。先に左の洋館が建てられ、次いで右の和館が増築されました。)

さて会場です。初めにも触れた通り、埼玉高速鉄道の川口元郷駅より岩槻街道沿いを北上、約6~7分のところにあります。なお川口元郷駅へは都心から南北線乗り入れで30分程度です。また帰りはJR川口駅まで歩きましたが、こちらは駅まで25分程度でした。


市川裕司「1923」2011年

観覧料は施設入場料の200円のみです。

3月18日まで開催されています。おすすめします。

「ガロン第二回展 日本背景」@galllllllon) 旧田中家住宅
会期:2月14日(火)~3月18日(日)
休館:月曜日(2/20、2/27、3/5、3/12)
時間:9:30~16:30
住所:埼玉県川口市末広1-7-2
交通:SR埼玉高速鉄道川口元郷駅2番出口より徒歩8分。
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