都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「インカ帝国展」 国立科学博物館
国立科学博物館
「インカ帝国展」
3/10-6/24
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/53/10/283ff625679dd20de7bdbf4715579008.jpg)
国立科学博物館で開催中の「インカ帝国展」のプレスプレビューに参加してきました。
最近では2007年にマヤ・インカ・アステカ、そして2009年のシカンと、立て続けにアンデス文明展を続けた国立科学博物館ですが、先日より空中都市マチュピチュでも有名なインカにスポットを当てた展覧会が始まりました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/32/bf/1058b0553457c6e6bdbdf6eea61fa9ee.jpg)
「玉座(ティアナ)」(フィールド自然史博物館)
言うまでもなくインカとは15世紀半ばごろに成立し、16世紀にスペインによって滅亡させられたアンデス最後の文明ですが、今回は最新の発掘調査はもとより、人類学、歴史学の視点を交え、その文化と歴史を多角的に紹介しています。
第一部 インカ 帝国の始まりとその本質
第二部 インカ 帝国の統治
第三部 滅びるインカ、よみがえるインカ
第四部 マチュピチュへの旅(3Dスカイビューシアター)
冒頭はインカの考古遺物です。2頭のジャガーに支えられた王の玉座をはじめ、トウモロコシ酒を入れていたというアリバロの堂々たる姿に胸を躍らせる方も多いかもしれません。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/75/70/8f7ab4d7574958319883433f825912b0.jpg)
「チャキタクリャ(踏み鋤)」の前で解説する監修のトーマス・カミンズ(ハーバード大学美術歴史・建築部長)氏。
またまるで武器のような形をしていて印象深いのは「チャキタクリャ」と呼ばれる農耕用の鋤です。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/40/ae/52e4dec4b20b554c8b872f350d72d091.jpg)
「小型女性人物像」(ペルー文化省・トゥクメ遺跡博物館)
その他にも日用的に用いられていた土器や、生贄の儀式での供物の一つであったというハンダ付けの小型人物像など、インカの暮らしを伝える文物が展示されていました。
さて今回のインカ展で注目すべきなのは、インカの支配した人々と、逆にスペインによって支配された以降のインカについての言及があることです。
そもそもインカはアンデスでは少数の部族でしたが、おおよそ100年程度で現在のペルーからチリにまで至る大帝国を築きあげました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/41/ad/82e6ca4d24abeb416752d3435d03194f.jpg)
「第二部 インカ 帝国の統治」展示室風景
そしてインカはその広大な領土を行き来するために「インカ道」と呼ばれる交通網を整備し、宿や食料を貯蔵するための倉庫をいくつも建造します。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6e/87/be31a46bb4bc73ea2987076826d83a88.jpg)
左:「モチェ文化の金合金製の頭飾り」(ラファエル・ラルコ考古博物館)、右:「金合金製の器」(ラファエル・ラルコ考古博物館)
また杯が多数出ていますが、これはインカが他の部族を支配する際の贈り物であり、また相互の乾杯の儀式を執り行うために用いられていたものだそうです。
そしてミイラにも秘密があります。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5a/f9/cc0ad3bd8c8b595339567384522a0bd3.jpg)
「チャチャポヤ族のミイラ」5体
ここで登場するのはインカによって支配されたチャチャポヤ族のミイラですが、実は元々彼らには埋葬でミイラになる習慣がありませんでした。(遺体が骨になってから埋葬していたそうです。)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/07/a2/01a3de21659ac81bb3e1809b4d90ea58.jpg)
「ミイラ」15~16世紀 レイメバンバ博物館 *撮影:義井豊
ミイラはインカの支配によって初めてつくられます。つまりインカの強大な力は他の部族の埋葬の文化にまで大きな影響を与えたというわけでした。
さらにスペイン支配後のインカについても重要です。展示室の雰囲気がガラッと変わたことにお気づきでしょうか。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0b/2f/257cf9030aa7b381174d60bcab5e271d.jpg)
「第三部 滅びるインカ、よみがえるインカ」展示室風景。手前は「銀製行列十字架」(オズマ博物館)。
インカ帝国は1533年、最後の王アタワルパが処刑されたことにより終焉を迎えますが、その後も抵抗を続けながらも、スペインの同化政策を受け、生活や文化の在り方を変化させていきます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/34/7d/34fd429b4dee3d65662247bb654f1151.jpg)
「ドン・アロンソ・チワン・インガ(インカ)の肖像画」(18世紀)の前で解説する監修の島田泉(南イリノイ大学人類学科教授)氏。
中でも興味深いのが肖像画です。インカはスペインによって貴族制に組み込まれましたが、インカ人の中には、自身こそが帝国の末裔と称し、こうした古いインカの服装を纏って絵を描かせたこともあったそうです。そしてそこにはほぼ間違いなく十字架など、キリスト教を受け入れた姿で登場します。
しかしながらスペインはこうした「インカの末裔」による反動を恐れ、インカの人々にインカ王を模した服装をすること自体も禁じてしまいます。
そもそも植民地後のインカを紹介する展示自体が極めて異例ですが、まさに知られざる植民地時代のインカを垣間見ることが出来ました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/36/f2/f8f883059ba881551595d8d9a6ac4fab.jpg)
「マチュピチュの旅 3Dスカイビューシアター」
ラストは科博ではお馴染みの3Dシアターです。実際に現地で映したものと、東博シアターでも定評のある凸版印刷によるVRを組み合わせた映像です。マチュピチュを空から堪能出来ます。シカンでも3Dを見ましたが、その時よりもさらにスケールアップしていました。
さてお得なチケットの情報です。 毎週金曜の夜間開館(20時まで)のペアチケットと、毎週水曜の「レディースデー」の割引チケットが販売されています。
また展覧会のテーマ曲「Inka」を手がけた瀬木貴将さんのCD、「マチュピチュの夜明け」が4月4日に発売されます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/75/68/a0b87d6879cc079bb7a21cae8f87c5e1.jpg)
瀬木貴将さん。楽器とともにポーズをとっていただきました。
瀬木さんはアンデスの民族楽器、サンポーニャ・ケーナの奏者です。実は内覧時に演奏をお聞きしましたが、軽やかなリズムに透き通る音色には思わずうっとりさせられました。
「SICAN~アンデスの風/瀬木貴将/日本クラウン」
発売後は一般のCD店でも取り扱いがあります。試聴出来る機会もあると思いますので、是非耳を傾けて下さい。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/20/6c/1fec0c7b825b5fa23b0fa7febd9a9bb2.jpg)
「第一部 インカ 帝国の始まりとその本質」展示室風景。
展覧会の公式Twitter(@TBS_inkaten)とFacebook(TBSインカ帝国展)でも情報が発信されています。ともに要チェックです。
ロングランの展覧会です。6月24日まで開催されています。
「マチュピチュ『発見』100年 インカ帝国展」 国立科学博物館
会期:3月10日(土)~6月24日(日)
休館:毎週月曜日。但し3月26日、4月2日、4月30日は開館。
時間:9:00~17:00。金曜は20時まで。*4月28日(土)~5月6日(日)は18時まで。但し5月4日(金)は20時まで。
住所:台東区上野公園7-20
交通:JR線上野駅公園口徒歩5分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成線京成上野駅徒歩10分。
注)写真は報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
「インカ帝国展」
3/10-6/24
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/53/10/283ff625679dd20de7bdbf4715579008.jpg)
国立科学博物館で開催中の「インカ帝国展」のプレスプレビューに参加してきました。
最近では2007年にマヤ・インカ・アステカ、そして2009年のシカンと、立て続けにアンデス文明展を続けた国立科学博物館ですが、先日より空中都市マチュピチュでも有名なインカにスポットを当てた展覧会が始まりました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/32/bf/1058b0553457c6e6bdbdf6eea61fa9ee.jpg)
「玉座(ティアナ)」(フィールド自然史博物館)
言うまでもなくインカとは15世紀半ばごろに成立し、16世紀にスペインによって滅亡させられたアンデス最後の文明ですが、今回は最新の発掘調査はもとより、人類学、歴史学の視点を交え、その文化と歴史を多角的に紹介しています。
第一部 インカ 帝国の始まりとその本質
第二部 インカ 帝国の統治
第三部 滅びるインカ、よみがえるインカ
第四部 マチュピチュへの旅(3Dスカイビューシアター)
冒頭はインカの考古遺物です。2頭のジャガーに支えられた王の玉座をはじめ、トウモロコシ酒を入れていたというアリバロの堂々たる姿に胸を躍らせる方も多いかもしれません。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/75/70/8f7ab4d7574958319883433f825912b0.jpg)
「チャキタクリャ(踏み鋤)」の前で解説する監修のトーマス・カミンズ(ハーバード大学美術歴史・建築部長)氏。
またまるで武器のような形をしていて印象深いのは「チャキタクリャ」と呼ばれる農耕用の鋤です。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/40/ae/52e4dec4b20b554c8b872f350d72d091.jpg)
「小型女性人物像」(ペルー文化省・トゥクメ遺跡博物館)
その他にも日用的に用いられていた土器や、生贄の儀式での供物の一つであったというハンダ付けの小型人物像など、インカの暮らしを伝える文物が展示されていました。
さて今回のインカ展で注目すべきなのは、インカの支配した人々と、逆にスペインによって支配された以降のインカについての言及があることです。
そもそもインカはアンデスでは少数の部族でしたが、おおよそ100年程度で現在のペルーからチリにまで至る大帝国を築きあげました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/41/ad/82e6ca4d24abeb416752d3435d03194f.jpg)
「第二部 インカ 帝国の統治」展示室風景
そしてインカはその広大な領土を行き来するために「インカ道」と呼ばれる交通網を整備し、宿や食料を貯蔵するための倉庫をいくつも建造します。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6e/87/be31a46bb4bc73ea2987076826d83a88.jpg)
左:「モチェ文化の金合金製の頭飾り」(ラファエル・ラルコ考古博物館)、右:「金合金製の器」(ラファエル・ラルコ考古博物館)
また杯が多数出ていますが、これはインカが他の部族を支配する際の贈り物であり、また相互の乾杯の儀式を執り行うために用いられていたものだそうです。
そしてミイラにも秘密があります。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5a/f9/cc0ad3bd8c8b595339567384522a0bd3.jpg)
「チャチャポヤ族のミイラ」5体
ここで登場するのはインカによって支配されたチャチャポヤ族のミイラですが、実は元々彼らには埋葬でミイラになる習慣がありませんでした。(遺体が骨になってから埋葬していたそうです。)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/07/a2/01a3de21659ac81bb3e1809b4d90ea58.jpg)
「ミイラ」15~16世紀 レイメバンバ博物館 *撮影:義井豊
ミイラはインカの支配によって初めてつくられます。つまりインカの強大な力は他の部族の埋葬の文化にまで大きな影響を与えたというわけでした。
さらにスペイン支配後のインカについても重要です。展示室の雰囲気がガラッと変わたことにお気づきでしょうか。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0b/2f/257cf9030aa7b381174d60bcab5e271d.jpg)
「第三部 滅びるインカ、よみがえるインカ」展示室風景。手前は「銀製行列十字架」(オズマ博物館)。
インカ帝国は1533年、最後の王アタワルパが処刑されたことにより終焉を迎えますが、その後も抵抗を続けながらも、スペインの同化政策を受け、生活や文化の在り方を変化させていきます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/34/7d/34fd429b4dee3d65662247bb654f1151.jpg)
「ドン・アロンソ・チワン・インガ(インカ)の肖像画」(18世紀)の前で解説する監修の島田泉(南イリノイ大学人類学科教授)氏。
中でも興味深いのが肖像画です。インカはスペインによって貴族制に組み込まれましたが、インカ人の中には、自身こそが帝国の末裔と称し、こうした古いインカの服装を纏って絵を描かせたこともあったそうです。そしてそこにはほぼ間違いなく十字架など、キリスト教を受け入れた姿で登場します。
しかしながらスペインはこうした「インカの末裔」による反動を恐れ、インカの人々にインカ王を模した服装をすること自体も禁じてしまいます。
そもそも植民地後のインカを紹介する展示自体が極めて異例ですが、まさに知られざる植民地時代のインカを垣間見ることが出来ました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/36/f2/f8f883059ba881551595d8d9a6ac4fab.jpg)
「マチュピチュの旅 3Dスカイビューシアター」
ラストは科博ではお馴染みの3Dシアターです。実際に現地で映したものと、東博シアターでも定評のある凸版印刷によるVRを組み合わせた映像です。マチュピチュを空から堪能出来ます。シカンでも3Dを見ましたが、その時よりもさらにスケールアップしていました。
さてお得なチケットの情報です。 毎週金曜の夜間開館(20時まで)のペアチケットと、毎週水曜の「レディースデー」の割引チケットが販売されています。
「金曜限定ペア得ナイト券」
(会場、チケBOO!限定販売) 2名様で2,000円
*17時から20時まで。最終入場は19時半。2名様同時入場、男女問わず。
「水曜限定レディース券」
(会場、チケBOO!限定販売) 1,000円
*水曜日の開館時間内有効、1名様、女性限定
(会場、チケBOO!限定販売) 2名様で2,000円
*17時から20時まで。最終入場は19時半。2名様同時入場、男女問わず。
「水曜限定レディース券」
(会場、チケBOO!限定販売) 1,000円
*水曜日の開館時間内有効、1名様、女性限定
また展覧会のテーマ曲「Inka」を手がけた瀬木貴将さんのCD、「マチュピチュの夜明け」が4月4日に発売されます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/75/68/a0b87d6879cc079bb7a21cae8f87c5e1.jpg)
瀬木貴将さん。楽器とともにポーズをとっていただきました。
瀬木さんはアンデスの民族楽器、サンポーニャ・ケーナの奏者です。実は内覧時に演奏をお聞きしましたが、軽やかなリズムに透き通る音色には思わずうっとりさせられました。
![](http://ecx.images-amazon.com/images/I/51oZxBX83TL._SL160_.jpg)
発売後は一般のCD店でも取り扱いがあります。試聴出来る機会もあると思いますので、是非耳を傾けて下さい。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/20/6c/1fec0c7b825b5fa23b0fa7febd9a9bb2.jpg)
「第一部 インカ 帝国の始まりとその本質」展示室風景。
展覧会の公式Twitter(@TBS_inkaten)とFacebook(TBSインカ帝国展)でも情報が発信されています。ともに要チェックです。
ロングランの展覧会です。6月24日まで開催されています。
「マチュピチュ『発見』100年 インカ帝国展」 国立科学博物館
会期:3月10日(土)~6月24日(日)
休館:毎週月曜日。但し3月26日、4月2日、4月30日は開館。
時間:9:00~17:00。金曜は20時まで。*4月28日(土)~5月6日(日)は18時まで。但し5月4日(金)は20時まで。
住所:台東区上野公園7-20
交通:JR線上野駅公園口徒歩5分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成線京成上野駅徒歩10分。
注)写真は報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )