「VOCA展2012」 上野の森美術館

上野の森美術館
「VOCA展2012 新しい平面の画家たち」
3/1-3/30



上野の森美術館で開催中の「VOCA2012展」へ行って来ました。

第19回目を迎えるVOCA展も、すっかり春の上野の展覧会として定着した感がありますが、今年も各推薦委員より推挙された計34名の作家の作品が一同に展示されています。


鈴木星亜「絵が見る世界11_03」

受賞作家は以下の通りでした。 (出品作家/推薦委員

VOCA賞 鈴木星亜
VOCA奨励賞 桑久保徹、武居功一郎
佳作賞 大成哲
佳作賞・大原美術館賞 柏原由佳


さていわゆる平面作のみと言うことで、その定まったフォーマットの中で、モチーフは当然のことながら、素材の面白さ、また技術をどのように作家が見せているのかにも注目した方も多いかもしれません。


柏原由佳「21’19」

その意味でまず印象に深いのが、冒頭、一面のモノクロームに雪山を臨む景色を描いた永岡大輔の「accumulating - 01」です。

一瞬、何か版画かと思うような質感を見せていますが、よく近づくと全て鉛筆で描かれていることが分かります。

全体を覆う白い点描にもよるのか、静けさに包まれた雪景色を前にしているよな気分にさせられました。

一面の闇にサムフランシスばりの光沢感のある色彩を散らしたのが、田中千智の「きょう、世界のどこか」です。

眩い黄色や白は帯状になって横切る平面はまるで抽象ですが、しばらく眺めていると港の景色が浮き上がってくるではありませんか。

まさに夜の港の夜景です。漁船、また立ち並ぶ家々は光に還元され、美しい光を放っていました。

さて日本画の素材を用い、絵画平面が前へ迫り出すかのような力強さを見せるのが、高橋芙美子の「はざま」です。

白とグレーの岩絵具の質感は重く、柱のように立ち並ぶモチーフから、不思議な粘り気を帯びた光が浸み出しています。シンプルなモチーフ、また色遣いではありますが、その特異な物質感には圧倒されました。

目黒の「線の迷宮」やMOTアニュアル2011でも印象深かった関根直子が2点の鉛筆画、「とめどない話」と「差異と連動」を出品しています。

霞かがったような平面に朧げに浮き上がる景色は森なのでしょうか。平面上には白い切れ込みのような線も散っています。静謐な中にもざわめく動き、また揺らぎが感じられました。


桑久保徹「Study of mom」

近藤智美の「のこそうヒトプラネスト」の大きな瞳に思わず足を止めてしまった方も多いかもしれません。

2面のパネルの右には瞳を見開く女性の顔が、また左には黄色の部屋で裸でキスしあう男女の姿が描かれています。

また画中に登場する銃やリンゴなど、さりげないモチーフはどこか暗喩的です。それに表面に散る飛沫状の絵の具など、なにかギラギラするまでの性と愛がシュールな感覚で示されています。その濃厚な空間には酔ってしまいました。

あざみ野コンテンポラリー、そして現在、丸ビル一階のH.P.FRANCEウィンドウでも出品中の椛田ちひろは、3枚の紙を横に並べた「影の声」を展示しています。

ボールペンによる赤褐色の光沢はあまり強くなく、どちらかといえば雲や水蒸気を連想させるように軽やかでした。

白い布に今にも消え入りそうな女性の姿を描いた山田郁予の「安心毛布とかそういうのください」の儚さもまた魅惑的ではないでしょうか。

だらんと壁に吊るされた布の上に横たわるパステルカラーの女性は悲しみに包まれていました。


武居功一郎「untitled(adaptation)」

他、ピンクやオレンジの細かなタッチから森などを思わせる景色を開いた武井功一郎、また面を複雑に組み合わせ、見る側の空間認識を揺さぶる五月女哲平の「彼、彼女、あなた、私」も心にとまりました。

公式WEBサイトに割引入場券があります。

また美術館内で「日経日本画大賞展」のチラシを見つけました。



かつてはニューオータニ美術館で開催されていましたが、ここしばらくは展示が行われていませんでした。

「第5回 東山魁夷記念 日経日本画大賞展」@上野の森美術館 5月19日(土)~6月3日(日)

今年は上野の森美術館でスケールアップする形で開催されるようです。楽しみにしたいと思います。

3月30日まで開催されています。

「VOCA展2012 新しい平面の画家たち」 上野の森美術館
会期:3月15日(木)~3月30日(金)
休館:会期中無休
時間:10:00~17:00(入場は閉館30分前まで)*木・金・土曜は18時閉館。
住所:台東区上野公園1-2
交通:JR線上野駅公園口より徒歩3分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅徒歩5分。京成線京成上野駅徒歩5分。
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